酷暑列島ニッポン、「ヒートアイランド化対策」この勇躍株に熱視線 <株探トップ特集>

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コラム

―西日本は最速梅雨明け、熱中症リスク高まり対策待ったなしの夏本番―

 6月27日、西日本各地で梅雨明けが発表された。この地域での「6月中の梅雨明けは気象庁の観測史上最も早い」という。26日には、気象庁が全国に「早期天候情報」を発表しており、10年に1度程度(10%)しか起きないような著しい高温になる可能性があるとして注意を呼び掛けている。こうした状況を受けて、冷感商品などの 熱中症対策製品や、氷菓をはじめとする猛暑関連に投資家の関心が高まっている。日本列島はまさにヒートアイランド(熱の島)と化しているが、本格的な夏を迎えるなか、その対策関連株にも今後投資家の熱い視線が向けられそうだ。「ヒートアイランド対策」関連株にスポットライトを当てた。

●梅雨はどこに行った?

 それにしても暑い。日経平均株価がおよそ半年ぶりに4万円を奪回するなど、株式市場に立ち上る熱気は大歓迎だが、熱風吹く異例の暑さは、体が気温の急激な上昇に慣れていないだけにたまったものではない。夜になっても蒸し暑く寝苦しい日が続くようになった。熱中症のリスクも高まるなか、ヒートアイランド対策は急務となっているものの、世界的な気候変動が背景にあるだけに、解決への道筋はそうたやすくはない。まさに、ヒートアイランドの名にふさわしいともいえる日本列島に、暑い夏がやって来た。

 気象庁によると、ヒートアイランド現象とは「都市の気温が周囲よりも高くなる」ことを指す。「気温の分布図を描くと、高温域が都市を中心に島のような形状に分布する」ことから、こうした呼び名になったという。急速な都市化が、同現象を招くことになったわけだが、熱中症などの重大な健康被害も増加しているだけに、経済にとっては猛暑が特需につながるなどと涼しい顔でいるわけにもいられない。亜熱帯化する日本列島だが、災害級の暑さに見舞われるのはこれからだ。

●「遮熱性舗装」で大林組、三井住建道など

 都市の気温上昇を抑制する対策として、近年注目されているのが日本で開発され路面の温度上昇を抑える効果があるとされる「遮熱性舗装」や「保水性舗装」だ。東京都ではヒートアイランド対策として、両舗装を路面補修工事に併せて実施し、2024年度末には累計で約200キロメートルを整備。30年度までに、計245キロメートルに及ぶ整備を目指すことが伝わっている。今後、全国各地への需要拡大期待もあり、活躍場面が増えることになりそうだ。

 こうしたなか、大林組 <1802> [東証P]が5月に豪雨と猛暑による影響を軽減する多機能舗装「ハイドロペイブ」を開発し、同舗装の導入効果を評価するため神戸市と共同で公道実証試験を実施したと発表。実証試験結果は良好で、路面温度上昇の抑制効果では晴天日における歩道部(湿潤舗装)の路面温度は対照区に比べて約6度低いことを確認し、雨水流出抑制効果も発揮した。ハイドロペイブは、22年に大林組とグループの大林道路が開発した「ハイドロペイブライト」を改良したもの。いままで大型車の進入がない軽交通道路に限定されていたが、改良により大型車が進入できる普通道路にも適用できるようになった。同社では、ハイドロペイブを人通りの多い都市部などに積極的に提案していく方針だ。5月13日に発表した26年3月期の連結営業利益見通しは、前期比14.9%減の1220億円を計画。12日に2340円まで買われ上場来高値をつけた株価は調整しているが、2200円近辺では業績面を織り込みつつ、売り物をこなしながら反転攻勢の機会を待つ。

 多くの道路会社が手掛ける遮熱性舗装だが、三井住建道路 <1776> [東証S]も同分野で実績を持つだけに注目される。同社の「サンクールR、R―U」は路面温度の低減効果に加え、排水機能や騒音低減効果との両立が可能となる多機能型の舗装で、車道をはじめ施設広場、駐車場などさまざまな場所で活用されている。利用シーンも幅広いだけに、多くの場面で更なるニーズを捉えることになりそうだ。5月14日に発表した25年3月期の連結営業利益は前年同期比77.4%減の2億2400万円に大きく落ち込んだが、26年3月期の同利益は前期比3.2倍となる7億1000万円を計画している。株価は、25日移動平均線をサポートラインに、上下動を繰り返しつつじっくりと新値街道を行く。

 東亜道路工業 <1882> [東証P]も遮熱性舗装「ヒートシールド」、保水性舗装「モイスチャロード」で需要を捉えている。ヒートシールドはアスファルト舗装の路面上に遮熱性塗料を散布する工法で、アスファルト舗装の熱吸収を抑えて、路面温度の上昇を抑制する働きがある。26年3月期の連結営業利益は前期比29.6%増の65億円を予想。株価は5月9日に上ヒゲで1606円をつけ年初来高値を更新したあとは、1500円を挟みもみ合っており、煮詰まり感も漂うなか目を配っておきたいところだ。

●キングジム、エアコン室外機への遮熱塗装サービス

 「遮熱塗装」もヒートアイランド対策として有効性が高い製品のひとつだ。この分野は塗料メーカーが牽引しており、関西ペイント <4613> [東証P]や日本ペイントホールディングス <4612> [東証P]、大日本塗料 <4611> [東証P]など大手メーカーがしのぎを削っている。こうしたなか、異業種からも同分野に参入しており、群雄割拠の様相を呈している。

 事務用品大手のキングジム <7962> [東証P]は、昨年6月に「エアコン室外機への遮熱塗料塗装サービス」事業をスタート。コバヤシ(東京都小平市)との共同拡販で、オフィスビルや商業施設のエアコン室外機へ遮熱塗料を塗装することで、CO2排出量・電気代削減につなげるという。夏場の室外機の温度上昇をしっかり抑えるだけでなく、専用ルーバーの設置により冬にも効果を発揮する。また、今年3月には、持ち運びに便利なコンパクトサイズの「排気が熱くないポータブルスポットクーラー」を発売。省スペースで場所を選ばず、工事・建設現場、スポーツやイベント会場、学校での部活動など幅広いシーンで利用できる。急速に亜熱帯化の様相を帯びる日本列島を背景に、文具メーカーの枠を超え活躍領域を広げている点は見逃せない。25年6月期の連結営業損益は5億3000万円の黒字(前期2億4100万円の赤字)を予想している。

●石原産は遮熱塗料のキーカンパニー

 石原産業 <4028> [東証P]は酸化チタン大手で、遮熱塗料のキーパーツとなる遮熱顔料を手掛けている。遮熱性能はもちろんのこと、耐性や環境性能、塗料の発色を左右する調色性能においても優位なスペックを有している。まさに、遮熱塗料のキーカンパニーだ。また、可視光の透過率を80%以上とした窓ガラス用の遮熱コーティング剤も展開しており、これまでのビル用途に加え農業ハウス用途にも販路拡大を図る。26年3月期連結営業利益は前期比43.1%増の150億円を見込む。株価は上昇気流に乗り高値圏を快走している。

●マクニカHD、消費電力20%削減を観測

 独立系半導体商社のマクニカホールディングス <3132> [東証P]だが、傘下のマクニカが昨年4月に遮熱断熱塗料「マクニカット」の販売開始を発表。同製品は、屋根や壁面はもちろんのこと、エアコン室外機にも塗装可能な遮熱断熱塗料。今年3月には、同製品をオリエンタルモーター(東京都台東区)の鶴岡中央事業所・鶴岡西事業所・土浦事業所に提供したと公表しており、施工前と比較し消費電力の20%削減を観測したという。26年3月期の連結営業利益は前期比5.9%増の420億円を計画している。株価は1900円を挟みもみ合っていたが、ここ動意含みの様相も。

●ロンシール、サカタタネ、能美防災にも活躍期待

 屋上緑化・壁面緑化は、都市におけるヒートアイランド現象の緩和で一役買うが、緑に囲まれた景観の創出、脱炭素化などにも貢献。全国的に取り組みが進展しており成長期待が高まる分野だ。防水シート、床・壁装建材が主力のロンシール工業 <4224> [東証S]は、環境にやさしい屋上緑化を実現する防水システムを提案。まさに、屋上緑化に欠かせない縁の下の力持ちといえる。同社の防水シートは部分接着工法で、緑化工事も軽量で済むことから工期が短く、建築コストを含めた経済性にも優れている点が魅力だ。株価は上値指向を強めており、きょうは3月25日につけた年初来高値1602円に急接近する場面もあった。流動性に乏しい点には留意したいが、年初来高値奪回から一段高の可能性もある。屋上緑化で必須となる植栽関連では、種苗大手のサカタのタネ <1377> [東証P]にも注視したい。

 夏場になると、よく見かけるようになったのがミスト発生装置だ。ミストにより涼がとれ、熱中症対策としても活用されている。ここ、需要が増加しているミストだが、馴染みの深い「ドライミスト」という名称は、実は総合防災機器大手の能美防災 <6744> [東証P]の登録商標なのだ。極めて微細な粒子のドライミストは、人に触れてもほとんど濡れるという感触がない。また、上水道を直接使用し、ステンレス配管を採用するなど、衛生面に十分配慮している点もポイントだ。同社の26年3月期の連結営業利益は、前期比5.2%増の165億円を計画し、連続の最高益更新を見込んでいる。株価は上昇一服しているが、ここにきての急速な防災意識の高まりを受け、更なる成長期待が膨らむ可能性も。

株探ニュース

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