裏に繚乱の道あり、「株価3ケタ台」の好業績材料株スペシャル5銘柄 <株探トップ特集>

投稿:

コラム

―主力株の上値は限定的、潮流変化の7月相場に備え1000円未満の変身期待株を厳選―

 大型主力株に満を持して投資マネーが流れ込んだことで、日経平均株価は急激な上昇波動を描いた。防衛関連株がテーマ性を存分に発揮する一方で、 AIや半導体関連の復権が強気相場を強力に後押ししている。ただ、全体指数の上昇は先物を絡めたインデックス買いによって下駄を履いている感も否めず、指数と連動性の高い大型株は遅かれ早かれ利益確定の時間帯に移行する可能性もありそうだ。ここで個人投資家の投資戦略としては、出遅れている中小型株に改めて目を向けるのが有効といえる。特にここ最近は、株価面で値ごろ感のある3ケタ台(1000円未満)の銘柄に波状的な投資資金の流入が観測されており、この流れにうまく乗ってみたいところだ。

●トランプ劇場で日経平均は想定外の急騰演じる

 週末27日の東京株式市場は日経平均が一時700円近い上昇でフシ目の4万円大台を一気に回復した。相場は常に行き過ぎるとはいうが、それにしても驚くべき上げ足の強さであり、日経平均はこの日の高値まで直近4営業日で2000円近く水準を切り上げたことになる。そしてこれは、まさに“トランプ劇場”の中で繰り広げられているといっても過言ではない。トランプ米大統領が打ちだす政策やコメント、いわゆるトランプ・エフェクトによって米国株市場は強力無比なブル相場の様相を呈しており、これに東京市場が追随する構図である。

 直近の出来事を振り返ればトランプ氏のゴリ押し的な要素が強いとはいえ、中東におけるイスラエルとイランの電撃的な停戦合意によって、マーケットで不安視されていた地政学リスクが後退した。パウエルFRB議長が議会証言でタカ派的な姿勢をみせれば、これもすかさずトランプ氏が次期FRB議長人事に言及し、マーケットに利下げ期待を刷り込んでいく。傍若無人ともいえるトランプ氏の大立ち回りに世界は首をかしげながらも、株式市場はその都度ポジティブな反応を示し、気がつけばNYダウは4万3000ドル台を回復、ナスダック総合株価指数については2万大台に乗せ、何と昨年12月の史上最高値を上回る水準まで駆け上がる状況となった。

●ネガティブ予測の一人歩きが投資家を振り回す

 古代ギリシャ後期ストア派の哲人であるエピクテトスが残した言葉に「人を不安にするのは物事ではなく、物事についての意見である」というものがある。中東情勢についても、あるいはトランプ関税に関しても、マーケットが嫌気しているのはこれらから派生する近未来の極めて不都合な世界である。まだ現実化していない段階で人々を不安の極致に落とし込む最悪シナリオが闊歩することで、経済の近未来を映す鏡である株式市場にもそれに相当する下落圧力が働くことになる。

 ところが、その後は高い確率でアンワインド局面が訪れることが多い。これまでに何回も繰り返されてきたパターンである。4月初旬の急落では投資家心理を絶望の深淵に引きずり込んだが、個人投資家や機関投資家の投げ売りが利いて、その反動も思いのほか強くなった。特に5~6月は中東情勢や関税交渉に先行き不透明感が募るなか買いが手控えられており、株式需給は買いポジションが再び枯れた状態となっていたことで、火がつきやすい環境となっていた。

●主力株最後の噴き上げに買い向かうべからず

 しかし、「ではここから主力株に資金を振り向けて間に合うのか」ということを考えなければならない。仮に日経平均が余勢を駆って4万1000円台まで上値を伸ばしたとして、率にして2.5%程度である。他方、今はCTA(商品投資顧問)による先物へのロング戦略が全体指数に押し上げ効果をもたらしているが、この歯車は常に順回転を続けるわけではない。トレンドが変われば、今度は売りの方向に歯車は回転し、下げを助長することになる。また、半導体主力株への資金流入にみられる大口の実需買いも一服感が出るタイミングが徐々に近づいている。27日のアドバンテスト <6857> [東証P]の値動きなどにその前兆がある。

 そして外部環境に目を向けると、7月9日に相互関税の上乗せ分の交渉期限が迫るが、関税問題もそう容易には落としどころが見つかるとも思えない。欧州は態度を硬化させているし、日米間の貿易交渉についても自動車関税問題で米国側が折れるとは考えにくい部分がある。自動車関税問題は完成車メーカーだけの売り材料ではないだけに注意が必要だ。

●内需系成長株で3ケタ銘柄の上値余地に着目

 こう見ると投資マネーもその矛先を変えてくる可能性がある。出来高流動性の問題で実際に機関投資家の大口資金が時価総額の小さい銘柄にシフトするケースは限定的といえるが、それでも流れの変化が、物色の方向性に大きな影響を及ぼすのが株式市場のメカニズムである。そうしたなか、株価が1000円未満の「3ケタ株」については、全体指数の動向にも連動しづらく個人投資家が参戦しやすい価格帯でもあることから、日経平均が4万円台を回復したタイミングで、あえて注目してみたい。

 現在、プライム・スタンダード・グロース3市場合計で株価が3ケタ台の銘柄は1360社程度あり、これは3市場全体の約3分の1強を占める。しかし、そのうち今期営業利益が増益予想にある銘柄はその半分の700社あまりにとどまる。ここから、関税デメリットなどで利益圧縮圧力が働く可能性のある外需系企業を除き、なおかつ20%以上の増益が見込まれる企業という条件でスクリーニングをするとその数は更に大きく減少することになる。今回のトップ特集では、株価が3ケタ台で今期20%を超える大幅増益見通しにある銘柄のなかから、関税や海外市場の動向に左右されない内需系の高成長銘柄を5銘柄厳選し紹介する。

●大相場の初動につく3ケタ銘柄をロックオン!

【アトラエはIT人材需要急増し収益拡大本番へ】

 アトラエ <6194> [東証P]は成功報酬型のIT・エンジニア向け求人メディア「Green」を運営しているが、AI・ IoT分野でIT人材に対する需要が急増するなか、時流を捉え業績に反映させている。このほか、エンゲージメント解析ツール「Wevox」や、ビジネス版マッチングアプリ「Yenta」なども提供している。株主還元を重視した経営姿勢も評価のポイントだ。25年9月期は前期実績から10円増配となる31円を計画しており配当利回りは4.5%前後と高水準だ。また、自社株買いにも積極的に取り組んでいる。業績は今期から単独決算に移行することで単純比較はできないが、24年9月期に連結ベースで過去最高更新となった営業利益15億2800万円に対し、今期は21億円予想と更に大幅な伸びが見込まれている。

 株価は75日移動平均線が上値抵抗ラインとなっていたが、ここをブレークしたことで大勢トレンド転換に向かう可能性が高い。業績変化率を考慮すると12倍台のPERは水準訂正余地が大きく、まずは5月中旬の戻り高値769円クリアから2月17日につけた年初来高値831円を目指す。

【勤次郎はクラウド好調、株価4ケタ突入秒読み】

 勤次郎 <4013> [東証G]は就業・人事・給与管理などの勤怠管理パッケージを主力とし、健康管理システムなどにも展開している。クラウドサービス事業と、顧客企業が情報システムをインストールして自社設備で運用するオンプレミス事業の二刀流で需要開拓を進めている。クラウドはサブスクリプション方式で提供し、企業側にすればサーバーの初期コストやシステム担当部門の人的コストがかからないことで、オンプレミスからの移行が進行中だ。クラウド事業で契約ライセンス数の獲得が想定を上回って好調で、足もとの業績も会社側の期初見込みを上回って推移しており、25年12月期の業績については売上高・利益ともに期初予想を増額、営業利益段階で前期比55%増の11億2800万円を見込んでいる。また、26年12月期も大幅な増収増益が濃厚とみられている。

 株価は今年に入って動兆著しく、特に5月中旬以降は大口の実需買いが観測。既に年初から株価の居どころを大きく変えているが、上値を出し切った感触は全くない。1000円大台ラインを単なる通過点とする強調相場が今後も見込まれる。1000円から上は累積売買代金が枯れた真空地帯に入ることで上げ足が強まる可能性がある。

【ランドコンピは富士通向け主力にピーク利益へ】

 ランドコンピュータ <3924> [東証P]は企画立案などのコンサルティングから運用・保守まで一気通貫でサービスを提供するシステムインテグレーター。独立系ながら富士通 <6702> [東証P]を主要顧客とし、売り上げのおよそ3割を富士通向けで占めている。セクター別では銀行など金融向けが好調で足もとの収益回復を先導している。26年3月期までの中期経営計画(3カ年)では最終年度の数値目標として、売上高150億円、営業利益18億円、年平均成長率は営業利益ベースで13.8%を掲げていたが、今期の売上高は145億円(前期比6%増)と若干届かない見通しながら、営業利益は18億6000万円(同30%増)と計画を上回る見通しで成長力の強さを浮き彫りとしている。年間配当は前期比2円増配の38円を計画し、配当利回りに換算して5%前後と非常に高い。

 今期は売上高・営業利益ともに過去最高を更新する見通しだが、株価の方は24年1月15日につけた上場来高値959円から2割程度ディスカウントされた水準にあり株高修正に向けた動きが期待できる。中期的にも上値指向は強いと判断され、4ケタ台を地相場とする強調展開がイメージできる。

【スペースマはニッチ分野で高成長路線まい進へ】

 スペースマーケット <4487> [東証G]は空きスペースの時間貸し仲介サイト(貸し手と借り手のマッチングを行うサイト)運営というユニークな経営形態でニーズを捉え、業績も急成長局面に入っている。会社側は「スペースシェアをあたりまえに」というミッションを掲げており、遊休不動産のあらゆるスペースを対象に、スマートフォンなどを使って簡単・迅速に貸し借りを可能としていることが最大の特長。安心安全への取り組みなど環境管理にも抜かりがない。会議室など少人数向け案件を中心に利用手数料の伸びが顕著で、業績も絶好調といってよい。営業利益は24年12月期の74%増益に続き、25年12月期も前期比28%増の2億2600万円を予想している。なお、今期の売上高については同31%増の25億7000万円と伸び率で利益を上回る見通し。

 株価は300円台で値ごろ感があり出来高流動性にも富んでおり、人気化素地は十分といえる。4月上旬を底値に上値指向が強く、6月に入り再び上げ足に弾みがついている。6月24日に415円の年初来高値をつけた後いったん調整を入れているが、早晩切り返し新値街道に復帰しそうだ。

【テクミラはAIボットとウェルネス分野で活躍】

 テクミラホールディングス <3627> [東証S]はAI・IoT分野のソフト開発やソリューションサービスを提供している。同社が展開するビジネス領域はエンタメやヘルステックなどのサービスを行うライフデザイン事業、AIチャットボット やSaaSなどを活用したAI&クラウド事業、通信デバイスやプラットフォームなどを開発するIoT&デバイス事業の3部門に大別される。同社の子会社ネオスが提供するAIチャットボットサービスなどAI関連の案件が急増傾向にあり、収益押し上げに貢献している。また、ヘルステック子会社Wellmira(ウェルミラ)を通じて展開するウェルネス事業も回収期に突入しつつある。26年2月期業績については小幅ながら増収を確保し、経常利益段階で前期比ほぼ倍増となる2億円を見込んでいる。

 同社も株価が300円前後と低位株ならではの魅力があるが、有配企業にして会社解散価値を4割も下回る0.6倍前後のPBRは見直し余地が大きい。昨年は3月に628円、一昨年には739円の高値を形成した実績があり、長期波動でも大底圏に位置する時価近辺は強気に対処して報われそうだ。

株探ニュース

オンラインで簡単。
まずは無料で口座開設

松井証券ならオンラインで申し込みが完結します。
署名・捺印・書類の郵送は不要です。