普及加速局面へ突入、「AIエージェント元年」躍動する有望株に照準 <株探トップ特集>

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コラム

―バックオフィスで導入広がる、世界市場規模は6年で9倍との試算も―

 2022年の「ChatGPT」のリリースをきっかけにして、国内外でAI(人工知能)の活用が本格化している。24年3月に総務省が発表した「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」によると、各国の企業を対象に業務における生成AIの活用状況を尋ねたところ、調査時点(24年1~2月)で「活用する方針を定めている」(「積極的に活用する方針である」「活用する領域を限定して利用する方針である」)と回答した日本企業の割合は42.7%だった。8~9割で「活用する方針を定めている」と回答した米国やドイツ、中国と比較するとその割合は半分ほどだが、当時で4割以上の企業が活用する方針を固めており、その後のAIの普及を考慮すると、その割合は更に増えているとみられる。

 生成AI の普及拡大を受けて、次の大きなムーブメントとして注目されているのが「AIエージェント」だ。25年は「AIエージェント元年」とも言われており、日本でも関連企業の裾野が広がりつつある。

●AIエージェントとは? 生成AIとの違い

 AIエージェントとは、目標達成のために最適な手段を自律的に判断・行動して遂行するAIのこと。従来は人間がAIに具体的な指示を入力し、それを繰り返すことでアウトプットの精度を徐々に上げていったのに対して、AIエージェントは目標こそ人間が設定するが、設定された目標を達成するために必要とされる最適な行動をAIが自律的に考え、タスクの実行や結果の評価までを行う技術だ。

 現在、広く普及しつつある生成AIは、ユーザーから与えられた指示内容に沿ってコンテンツを生成するAIの技術のことだが、AIエージェントは目標達成のために自律的にタスクを遂行するのが異なる。生成AIより広範な業務に活用できることから、さまざまな領域での活用が見込まれている。

●世界市場規模は急拡大の見込み

 現在のところ、AIエージェントは主に企業のバックオフィス(事務管理業務)で導入が進んでおり、近い将来、多くの業務がAIエージェントに取って代わられる可能性も高まっている。今月半ばには、アマゾン・ドット・コムのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)が、AIによる効率化で、今後数年間で管理部門の従業員数が減少するとの見通しを示したことが伝わったが、IT企業トップがAIの活用により自社の雇用が減ると明言したのは初めてとされることから、大きな関心を集めている。

 それでも、生産性を上げて利益を高めるためにはAIの導入は不可欠であり、AIエージェントの社会実装は加速することが予想されている。市場も急速な拡大が見込まれており、登場してからまだ間もない分野だけに、将来性などに対する見方はさまざまだが、世界市場規模は24年から30年までに約9倍に拡大すると予測する大手調査会社もある。

●国内大手IT企業がAIエージェントに注力

 既に国内大手IT企業はAIエージェントサービスの提供を開始しており、富士通 <6702> [東証P]は昨年10月、「Fujitsu Kozuchi AI Agent」を開発。損益や商談に関する打ち合わせに、AIが自ら参加して適切な情報の共有や施策を提案する会議AIエージェントの提供を皮切りにさまざまな業務へ展開を図る。NEC <6701> [東証P]は昨年11月に「NEC AI Agent」を発表。高度な専門業務の自動化による生産性向上を実現するために設計されたAIエージェントで、経営計画や人材管理、マーケティング戦略などの分野への展開を進めている。NTTデータグループ <9613> [東証P]は利用者の指示に応じて、AIエージェントが自律的に対象業務のタスクを抽出・整理・実行する生成AI活用コンセプト「SmartAgent」を開発。この技術に基づいた営業領域のサービスなどを提供している。

 このほか、業務系 SaaS企業が自社のプラットフォーム上でAIエージェント機能を提供しているケースも多く、関連銘柄の裾野は広がりつつある。そのなかから注目銘柄をピックアップしてみた。

●AIエージェントの注目銘柄

 Sapeet <269A> [東証G]は、AIソリューション事業の一環として、専門家のナレッジをAIで再現・活用する「Expert AI」事業を展開しているが、その取り組みの一つとして企業独自の戦略やノウハウを学習しながら進化するExpert AIエージェントの構築を推進。今年2月には第1弾となる「営業AIエージェント構築サービス」を開始した。6月にはそのアプリ版としてWebアプリ「営業AIエージェント」α版の提供を開始。AIとチャット形式で対話しながら、スケジュール確認や情報収集、商談準備、記録、フォローまでさまざまな業務を効率的に進められるようサポートする。

 ヘッドウォータース <4011> [東証G]は、AIソリューション事業を手掛けており、これまでにコンタクトセンター、駅員業務、マイグレーション、車載エッジ、文章校正、翻訳などさまざまな業界特化型のAIエージェントの開発支援を行っている。また、6月25日にはAIエージェントがプログラムを書く「AI駆動開発/バイブコーディング」内製化支援サービスの開始を発表。AIエージェントを用いて企業の開発効率と生産性向上を支援する。

 エクサウィザーズ <4259> [東証G]は今年5月、AI開発環境「exaBase Studio」のアプリケーションを構築するテンプレートを利用して、自律型を含めたAIエージェント対応のサービスを内製できるようにした。同社ではAIプラットフォーム「exaBase」のサービスやテクノロジーをAIエージェントに全面的に対応させることに取り組んでおり、その第1弾となる。また、6月19日にはNTTコミュニケーションズ(東京都千代田区)と連携し、業務に特化した20種のAIエージェントを活用した業界別ソリューションを発表した。

 サークレイス <5029> [東証G]は今年3月、パソナグループ <2168> [東証P]と共同で、AIエージェントとBPOサービスを組み合わせた新サービス「AIO」の提供を開始した。パソナGのBPOによるオフィス業務全般の業務効率化支援にAIエージェントを組み合わせることで、初期投資を抑えながらDXを推進し、生産性向上及びサービスの付加価値向上を実現するという。セールスフォースのAIエージェント「Agentforce」を活用し、具体的なソリューションの提供を目指すという。

 ジーニー <6562> [東証G]は、広告プラットフォーム事業やマーケティングSaaS事業などを行っているが、AIを活用したプロダクトの開発・販売を行う子会社JAPAN AIがAIエージェント「JAPAN AI AGENT」を展開。営業・マーケティング・バックオフィスなど、日本企業で頻発する業務に最適化したAIエージェントを標準搭載しており、6月19日にはリスティング広告運用を効率化させるAIエージェント「リスティング広告最適化エージェント」の提供を開始したと発表。また、自社に合わせた独自エージェントを簡単に作成する機能もあり、業務プロセスの効率化に貢献している。

 ライトアップ <6580> [東証G]は、昨年12月にAIエージェント領域に本格進出すると発表して以降、30種類以上のパッケージを提供するなどし、AIエージェントサービスを中核とした事業展開を強化している。今年6月には、業務全体をAIで支援する“パーツ型AIエージェント”「Birdモジュール」の提供を開始。経理処理、情報検索、顧客対応、データ処理、帳票出力など定型的な作業から複雑な業務フローに至るまで、部品(パーツ)単位で柔軟に導入可能な点が特徴で、顧客の段階的かつ着実なAI導入を可能としている。

 TDSE <7046> [東証G]は、オープンソースのLLM(大規模言語モデル)「Dify」を活用したAIエージェントサービスを展開しており、次世代ビジネスの軸となるよう成長加速に注力している。5月には同技術の導入と実用化を推進する新組織「AIエージェント本部」を設立し、企業向けサービスの提供を開始。既に複数企業でのパイロットプロジェクトが遂行しているとして、同本部では25年度に売上高1億5000万円以上を目指している。

 このほか、主力プロダクトであるAI-OCRサービス「DX Suite」にAIエージェントを標準搭載したAI inside <4488> [東証G]、4月18日に独自開発の次世代AI「AEI」を活用したコールセンター向けAIエージェント「miraio(ミライオ)」の販売を開始したpluszero <5132> [東証G]、昨年12月に社内のデータを活用し、ESG業務の効率化をサポートするAIエージェントの構築支援を開始したと発表したアイデミー <5577> [東証G]、5月30日に株式市場分析・投資判断レポート作成AIエージェント「Metareal エクイティ」の提供を開始したメタリアル <6182> [東証G]、セールスAIエージェントを成約支援業務の各プロセスに展開させる取り組みを行っているポート <7047> [東証G]などにも注目したい。

株探ニュース

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