骨太の方針明記で活躍本番へ、国策追い風に大跳躍「医療DX」関連株 <株探トップ特集>
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―電子カルテや電子処方箋に成長余地、デジタル化でサービス向上と効率化図る― 物価や人件費の上昇、人工知能(AI)をはじめとしたテクノロジーの進化など、医療をとりまく環境が大きく変化している。医療機関の負担を軽減しながら経営状況を改善するためには、デジタル化を促進することで患者サービスの向上と業務効率化を図っていくことが必要不可欠。また、医療情報システム業界についても従来のビジネスモデルから脱却し、国内だけでなく海外展開も見据えて活性化することが求められている。政府が13日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2025」では医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することが言及されており、関連銘柄を改めてマークしておきたい。 ●政府は工程表見直しへ 政府は医療・介護DXの技術革新の迅速な実装により、全国で質の高い効率的な医療・介護サービスが提供できる体制を目指している。具体的には、全国医療情報プラットフォームを構築し、電子カルテ情報共有サービスの普及や電子処方箋の利用拡大、PHR(Personal Health Record:生涯にわたる個人の健康・医療に関わる情報)の利活用などを進める構え。骨太の方針では「必要に応じて医療DX工程表の見直しを検討する」ことが明記されており、医療システムの一段の効率化に向けた新たな目標が盛り込まれる見通しだ。 日本医師会が昨年12月に公表した「診療所における医療DXに係る緊急調査」によると、 電子カルテの使用割合は62.6%で、院長の年齢階層が高いほど使用率が下がる傾向にある。また、電子処方箋を導入済みで運用中は4.6%、導入済みだが未運用が9.9%で、導入率は計14.5%と低迷している。ただ、東京都が今年4月に電子カルテシステム導入を検討している医療機関を対象にした相談窓口を開設するなど、デジタル技術を活用した医療情報などの共有を推進する動きが広がっている。 ●ITで医療革新する銘柄群 直近ではGMOフィナンシャルホールディングス <7177> [東証S]子会社のGMOヘルステックが24日、クリニック向けITシステム「AIチャート byGMO」の「Web問診機能」を拡張すると発表。これまで「Web問診機能」を利用できるのはクリニック検索・予約サイト「GMOクリニック・マップ」に会員登録し診療予約した患者に限られていたが、今回の機能拡張で会員でない患者も来院時に院内に掲示されたQRコードを読み取るだけで利用できるという。 Sapeet <269A> [東証G]は18日、ユカリア <286A> [東証G]が提供を開始した病院と患者のコミュニケーション支援プロダクト「ユカリアメルジュ」で、AI機能の設計・開発・実装を担当したことを明らかにした。このプロダクトでは、検診やワクチン接種の案内、手術や入院に関する説明、術後のリハビリやセルフケア方法など、患者に必要な情報をタイムリーかつわかりやすく提供。医療従事者による繰り返しの説明を減らし、業務の効率化と患者の理解促進を同時に実現する。 PHCホールディングス <6523> [東証P]は5日、傘下のウィーメックスとウィーメックス ヘルスケアシステムズが手掛ける電子処方箋と連携した医療機関・薬局向け電子処方箋管理ソフトウェアの導入数が2万件を突破したと発表。これは厚生労働省発表の「医療機関・薬局における電子処方箋の導入状況(5月25日時点)」から算出すると、運用を開始した施設数6万8705施設の約31%に相当するという。 ZenmuTech <338A> [東証G]は4日、医療AIプラットフォーム技術研究組合(東京都江東区)に組合員として加入したことを明らかにした。同社は情報を暗号化したうえで分散管理する「秘密分散技術」を医療AIプラットフォームのサービス事業基盤や開発基盤に適用することで、安全なネットワークソリューション及びAI開発環境のサービス展開の検討・検証を行う。 FIXER <5129> [東証G]は5月27日、生成AIを用いた「退院時サマリー作成支援システム」を藤田学園(愛知県豊明市)と共同開発したと発表。4月には話せるメディカル(東京都渋谷区)に出資しており、話せるメディカルが提供しているオンライン薬剤師相談サービスやオンライン服薬指導に加え、オンライン調剤分野の市場開拓にも取り組む構えだ。 eWeLL <5038> [東証G]は5月15日、介護業界大手のツクイ(横浜市港南区)に訪問看護専用電子カルテ「iBow(アイボウ)」の提供を開始したと発表。同社は「iBow」の提供を通じて理想的な訪問看護の実現を支え、ツクイが目指す「未来の訪問看護モデル」の実現をDXパートナーとして支援し、日本の在宅医療・介護のより良い未来をともに創造するとしている。 ディー・エヌ・エー <2432> [東証P]グループでヘルスケア事業を展開するDeSCヘルスケアは5月15日、医療データサイエンスを得意とするMeDiCU(大阪市東成区)と業務提携したと発表。両社の知見を掛け合わせ、アカデミア(大学や公的研究機関における研究職のこと)や製薬企業とのデータベース研究の加速につなげたい考えだ。 ●MDV、MRTなどにも注目 このほかの関連銘柄としては、医薬DX事業が収益基盤のケアネット <2150> [東証P]、オンライン診療・服薬指導サービス「SOKUYAKU(ソクヤク)」を展開するジェイフロンティア <2934> [東証G]、電子カルテシステム「e-カルテ」を扱うソフトウェア・サービス <3733> [東証S]、病院経営改善アプリケーション「MDV Act」などを提供するメディカル・データ・ビジョン <3902> [東証P]、子会社を通じて7月1日付で医療機関向けソフトウェア受託開発会社をグループ化するUbicomホールディングス <3937> [東証P]、グループ会社が電子カルテシステム「MI・RA・Is V(ミライズ ファイブ)」を手掛けるCEホールディングス <4320> [東証S]など。 また、医療情報のプラットフォームを提供するMRT <6034> [東証G]にも注目したい。5月にはベトナムで医師の診察業務を効率化するWebシステムサービスを提供するLea Bio(神奈川県茅ケ崎市)と資本・業務提携したと発表。MRTから日本の医師や医療機関、日本の行政機関とのネットワークを、Lea Bioからはベトナムの医師、医療機関、ベトナム保健省のネットワークを相互につなげ、販路開拓支援及び各プラットフォームへの誘導・利用を促進するとしている。 株探ニュース