笹木和弘氏【緊迫化する中東情勢、ずばり夏相場の展望を探る】(2) <相場観特集>

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コラム

―米国のイラン攻撃でリスクオフも日経平均は底堅さを発揮―

 23日の東京株式市場は、中東情勢をにらんだリスク回避ムードのなかで売りが優勢だった。米国がイランの核施設への空爆を行ったことはネガティブサプライズと言ってもよく、足もと買い手控え感は避けられない展開となったが、下値では押し目買いが観測されるなど底堅さを発揮した。ここから日経平均株価はどういう動きをみせるのか。そして米国株市場はどう動くのか。夏相場に向けた展望について、今回は第一生命経済研究所の桂畑誠治氏とフィリップ証券の笹木和弘氏の2人に意見を聞いた。

●「米国市場は『中東情勢』含め3つのリスク要因に直面」

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

 米国がイランの核施設を攻撃したことから、中東情勢に対する警戒感は高まっている。ただ、米国は軍事力からみてイランに対して圧倒的に優勢な状況にある。イラン国会がホルムズ海峡の閉鎖を決議したと報道されているが、同海峡の封鎖にはイランの最高安全保障委員会の決定が必要とみられている。イランにとっては、本格的な反攻に打って出ることは、体制転覆のリスクを抱えることにもなることから、基本的には、イランの反攻があっても長続きはしないと市場はみている様子だ。米国側も現時点で議会による宣戦布告の手続きを経ていないため、攻撃は限定的にならざるを得ないだろう。とはいえ、ホルムズ海峡を巡る情勢を含め今後の動向を確かめたいという姿勢は当面は続きそうだ。

 中東情勢に加え7月上旬にかけては、米相互関税の上乗せ分の猶予期限を迎えるほか、米連邦政府債務の法定上限の引き上げが盛り込まれた税制・歳出法案の成立が目指されている。「中東情勢」に加え「関税」「米政府債務問題」という3つのリスク要因が水面上に顔をあらわし、7月はこれらリスク要因に直面することになる。こうしたなか、今後1ヵ月程度の米株式市場は全体的には軟調な局面も予想される。NYダウのレンジは3万8000~4万3000ドル前後。ナスダック指数は1万6000~2万前後を想定している。

 個別銘柄では、人工知能(AI)が自律的に作業する「AIエージェント」をソフトウエアに組み合わせることで、作業の自動化やDX化が一段と推進されることになりIBMやセールスフォースに注目している。AIインフラ整備計画「スターゲート」にも絡むオラクルも活躍が見込める。「究極のヒト型ロボット」ともいえる手術支援ロボットの「ダヴィンチ」を手掛けディフェンシブ株の側面を持つインテュイティブ・サージカルにも注目している。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。


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