桂畑誠治氏【緊迫化する中東情勢、ずばり夏相場の展望を探る】(1) <相場観特集>

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コラム

―米国のイラン攻撃でリスクオフも日経平均は底堅さを発揮―

 23日の東京株式市場は、中東情勢をにらんだリスク回避ムードのなかで売りが優勢だった。米国がイランの核施設への空爆を行ったことはネガティブサプライズと言ってもよく、足もと買い手控え感は避けられない展開となったが、下値では押し目買いが観測されるなど底堅さを発揮した。ここから日経平均株価はどういう動きをみせるのか。そして米国株市場はどう動くのか。夏相場に向けた展望について、今回は第一生命経済研究所の桂畑誠治氏とフィリップ証券の笹木和弘氏の2人に意見を聞いた。

●「足もと底堅さ発揮も中東情勢次第で予断許さず」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 週明けの日経平均は下値を試す動きを強いられたものの、3万8000円大台ラインは取引時間中も含めて割り込むことはなかった。想定以上に底堅い動きともいえたが、実際のところ株式市場は中東有事に対する現状がまだ把握しきれず、売りも買いも動きにくいというのが本当のところであろう。イランはトランプ米大統領の呼びかけに対し交渉に応じる姿勢がなかったわけではないが、最高指導者のハメネイ師と連絡が取れなかったという理由で時間稼ぎともみられる姿勢を示したことから、米国が空爆に踏み切る背景となったもようだ。

 今週中にも中東有事の方向性は見えてくると思われるが、現時点ではまだ不透明感が強く、売りも買いも見切り発車はしにくい。今後は攻撃を受けたイラン側の対応が焦点となるが、今のところマーケット側では紛争が長引く可能性は低いとの見方が優勢のようで、売り急ぐ動きは限定的となっている。ただ、中東情勢は予断を許さず、ニュースヘッドライン一つで相場は不安定な値動きを余儀なくされることも念頭に置いておく必要がある。そのなか、ホルムズ海峡の封鎖などで原油価格が高騰するようなリスクも取り沙汰されるが、これについては世界的に孤立する恐れがあるためイラン側も覚悟が必要であり、実際はなかなか現実化しにくい面もある。

 中東情勢に絡む地政学リスク以外では、トランプ関税による世界経済への影響が警戒されている。7月9日に相互関税の上乗せ分についての交渉期限を迎えるが今のところ米国側が譲歩する姿勢は見えず、各国が妥協する形でまとまる可能性が高いとみている。日経平均の向こう1ヵ月のレンジについては、中東情勢や関税交渉が重荷となった場合は3万6000円台半ばまで下押す場面も想定される。一方、関税交渉などが実効関税率の引き下げにつながる形でまとまれば買い戻しが活発化し、3万9000円台まで水準を切り上げるとみている。

 物色の方向性としては引き続き小売りや外食など内需の個人消費関連の一角が有利な地合いとみている。また、半導体関連なども需要自体は旺盛であり、押し目買いを前提に半導体製造装置の主力株などをマークしておきたい。一方、自動車セクターについては現在米国側から賦課されている27.5%の関税が大幅に引き下げられるような可能性は乏しいとみており、値ごろ感から買い向かうのはリスクも大きそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。


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