株主還元で魅力度急上昇、配当利回り4%超「連続増配」6銘柄リスト <株探トップ特集>
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―配当方針転換に着目、積極還元と利益成長が期待できる高配当バリュー株を追う― 上場企業は積み上がった利益を株主へ還元する姿勢を強めている。「株探」集計によると、東証に上場する3月期決算企業およそ2230社のうち、25年3月期に配当を増やした企業は1372社と全体の6割超に達した。銀行や電気機器を中心に幅広い業種で業績が拡大するなか、配当を増額する企業が相次いだ格好だ。26年3月期についても期初段階で4割を超える企業が増配を予定している。今回の株探トップ特集では、株主還元に積極的な姿勢をみせる高配当利回り株にスポットライトを当てた。 ●26年3月期も増配ラッシュ続く 26年3月期の配当予想を開示している約2050社を調べたところ、増配を計画する企業はおよそ900社に上った。一方、減配する予定を示したのは190社程度と全体の1割にとどまる。今期はトランプ関税や為替の円高進行など収益環境に逆風が吹くなか、全体の利益は6期ぶりに減益へ転じる見通しだ。こうした状況にもかかわらず、手元資金を配当に振り向ける企業が多いのは、企業が東京証券取引所から資本効率の改善を求められていることが背景にある。また、新しい少額投資非課税制度(NISA)のスタートによって高配当株への人気が高まっており、それを意識する動きの影響も大きいとみられる。 企業が株主還元を手厚くする流れに乗って、配当を重視する個人投資家は増えているが、利回りの高さだけで銘柄を選ぶのは大きなリスクをはらむ。とりわけ、今期は外部環境の先行き不透明感が強く、業績悪化によって減配や株価が急落する可能性があることには留意が必要だ。 今回は、資本コストや株価を意識した施策として配当方針の強化を打ち出し、かつ足もとの業績が好調で増配を続けている高配当利回り株に注目した。以下では、26年3月期に連続増配を計画する配当利回り4%以上の高配当株のなかから、株価指標面に割安感が強く、上値も期待できる6銘柄をピックアップした。 ※配当利回りは6月16日終値ベースで算出。 ◎タカラスタンダード <7981> [東証P] 配当利回り4.15% 湿気に強く耐久性に優れた独自素材「高品位ホーロー」を武器に、システムキッチンで国内シェアトップを走る住宅設備機器メーカー。前期は主力とする新築向けの販売好調や値上げ効果などで、営業利益が前の期比で25%を超える大きな伸びを示した。26年3月期は高付加価値製品の構成比が高いリフォーム領域の拡大や生産合理化に注力し、12期ぶりの最高益更新を狙う。あわせて、27年3月期に配当性向50%、220億円規模の自社株取得を軸とする新株主還元方針を発表。前期の配当を従来計画の56円から78円に増額修正し、今期は100円に増配する計画だ。加えて、600万株(発行済み株式数の8.92%)または110億円を上限とする自社株買いの実施を打ち出した。ROE8%達成と早期のPBR1倍クリアを目指す。 ◎トーモク <3946> [東証P] 配当利回り4.74% 段ボール加工専業のトップメーカーで、住宅事業と運輸倉庫業も展開するユニークな業態。PBRが会社解散価値を大幅に下回っており、価格適正化による利益率改善や株主還元の強化などを通じて資本効率の改善に取り組んでいる。配当性向を段階的に引き上げるなか、26年3月期は目標の30%まで上昇する見込みで、年130円配(前期比30円増)を計画する。業績は安定的な成長を続けており、今期は段ボールと運輸倉庫の値上げ効果によって営業利益110億円(前期比17.5%増)と2期連続で過去最高益を更新する見通しだ。決算発表を受けて、株価は昨年7月以来の高値圏に浮上しているが、予想PER6倍台、PBR0.5倍前後、配当利回り4.7%近辺と指標面からの水準訂正余地は極めて大きい。円高メリット株としても注目される。 ◎スターティアホールディングス <3393> [東証P] 配当利回り4.61% 安定成長するITインフラ関連事業を基盤に、足もとでデジタルマーケティング関連事業の拡大と利益成長を加速させている。25年3月期はクラウド型マーケティングツール「Cloud CIRCUS」のライセンス数増加や値上げ効果で2ケタ増収増益を遂げた。26年3月期の営業利益は前期比9.6%増の30億円と4期連続の最高益更新を見込み、配当は前期比11円増の125円(創立30周年記念配当8円を含む)に増配する計画だ。前期から累進配当と配当性向55%をメドとした株主還元を実施するほか、5月に15万株の自社株買いを実施するなど、株主還元姿勢を強めている。また、中期経営計画ではM&A戦略を一段と強化する方針を示し、28年3月期に営業利益50億円(M&A・シナジー領域の8億円を含む)の目標を掲げる。指標面は予想PER12倍台と割安感が強く見直し余地は大きい。 ◎アジアパイルホールディングス <5288> [東証P] 配当利回り5.19% 建設物の土台を支える建設基礎工事の国内最大手で、コンクリート製基礎杭の設計・製造・施工すべてを一貫体制で請け負う唯一の総合基礎建設会社。すべての杭打ち工法を網羅し、高い技術力を強みに高層ビルやテーマパークなどで多くの実績を有する。26年3月期は建設需要が底堅く推移するなか、前期からずれ込んだ超大型工事の着工が見込まれるほか、豊富な受注残を背景に営業利益73億円(前期比68.4%増)と2期ぶりの最高益更新を見込む。あわせて株主還元に関して、29年3月期まで累進配当を基本とし、株主資本配当率(DOE)3.75%以上をメドとする方針を示した。今期配当は前期比3円増の48円と4期連続の増配を計画し、配当利回りは5%を超えている。 ◎フェイスネットワーク <3489> [東証S] 配当利回り5.96% 世田谷区、目黒区、渋谷区を中心に投資家向け新築一棟マンションの企画・開発・販売をワンストップで展開。入居需要が高く長期的に安定した収益が得られる東京の人気エリアへの旺盛な投資ニーズを取り込んでいる。前期は開発物件の大型化や物件価値の向上、高級賃貸レジデンスの開発に注力するなか、金融機関との連携強化を通じた紹介顧客を中心に販売が好調に推移。利益率が大きく向上し、営業利益45億1900万円(前の期比2.2倍)と過去最高を大幅に更新した。26年3月期は2ケタ増収増益を見込み、配当も120円(前期比21円50銭増)に増配する計画だ。株価は5月30日に上場来高値2150円をつけた後は一服商状にあるが、予想PER6倍前後、配当利回り6%近くと再評価余地は大きく一段の上昇に期待がかかる。 ◎明治電機工業 <3388> [東証P] 配当利回り4.84% 制御機器や産業ロボットを取り扱うFA機器の専門商社。自社工場を保有し、生産設備や機械の設計・開発から製造まで手掛けるエンジニアリング機能を併せ持つ。主力は自動車業界向けで、売上高の5割弱をトヨタ自動車 <7203> [東証P]グループが占める。足もとの業績は次世代モビリティ開発が高水準を維持するなか、自動化や省力化に向けた自動車関連の需要を捉えており、26年3月期は営業利益37億3000万円(前期比13.2%増)と5期連続の増益を見込む。株主還元については配当方針を変更し、来期まで配当の下限値を年間88円に設定。今期配当は前期比28円増の88円と4期連続増配を予定している。無借金経営で財務面の健全性が高いことも注目ポイントだ。 株探ニュース