驚愕の月次ラッシュで評価急上昇、好実態「アパレル関連」6銘柄選抜 <株探トップ特集>
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―業績回復鮮明の老舗企業と高成長続く新興勢、規格外の株主還元に乗り出す企業も― ファーストリテイリング <9983> [東証P]は3日に国内ユニクロ事業の月次速報を発表し、5月の売上高は前年同月比13.1%増(既存店・EC合計)だった。ゴールデンウィーク商戦の盛況などが寄与した。同日にはアダストリア <2685> [東証P]、ユナイテッドアローズ <7606> [東証P]も5月売上高を発表。アダストリアは気温の上昇で夏物商品が伸び、既存店が同4.2%増と2カ月ぶりにプラス転換。Uアローズも既存店が同9.6%増(小売り・ネット通販合計)と伸長した。トランプ関税に加え、中東情勢の緊迫化などビジネス環境に先行き不透明感が漂うなか、業績の堅調さが目立つアパレル関連株に目を向けてみたい。 ●インバウンド効果も後押し 足もとだけでなく、ここ数年アパレル業界は比較的良好な収益環境が続いている。コロナ禍からの経済再開に伴う外出需要の増加が追い風なのはもちろん、「インバウンド」と「天候」の2つが後押し要因になっている。インバウンドについては既にその経済波及効果の大きさは周知のところであり、特に恩恵を享受している小売りセクターの一角としてアパレルにもプラスの効果が及んでいる格好だ。もう一つ、天候については近年のややメリハリのある季節変化が関係している。夏は暑く、冬は寒いという例年通りの気候を前提とした業態のため、例えば冷夏や暖冬ではマイナスの影響が出てしまうが、限度はあれど暑さ寒さが強まる分にはプラス方向に働くことが見込まれる。 昨年は訪日客数が3600万人を突破し過去最多になるとともに、昨シーズンの夏・冬は記録的な猛暑と寒波に見舞われた。こうしたなかでの各社の前期決算は、営業利益ベースでUアローズ(3月期決算)が前の期比19%増、パルグループホールディングス <2726> [東証P](2月期決算)が同27%増と高い伸びを示し、しまむら <8227> [東証P](2月期決算)は連続増益で過去最高を更新。ネット専業のZOZO <3092> [東証P](3月期決算)も連続最高益となった。8月期決算のファストリは上期時点で前年同期比18%増と好調だ。決算短信をみると、インバウンド効果や夏・冬物の好調に言及している企業が散見される。 もちろん季節変化への対応度合いや、その他原材料高などさまざまな要因で収益が振るわなかった企業もある。冒頭のアダストリア(2月期決算)は前期に営業14%減益で着地している。ただ、今期は一転V字回復の見通しだ。季節対応をはじめ諸課題に着実に対応することで前期比2割強の伸びを達成し、2期ぶりの最高益を狙う。Uアローズが同13%増、パルHDが同12%増と前段の各社も押しなべて今期増益を予想している。このほかにも好業績を見込む関連銘柄は数多くあり、今回その中から有望株を6銘柄ピックアップした。 ●連続最高益や増配、新高値更新銘柄など オンワードホールディングス <8016> [東証P]は老舗の総合アパレル最大手。婦人服の「23区」、オーダースーツの「KASHIYAMA」といった主力ブランドを持つ。これまでの百貨店やショッピングセンターを軸とした商品展開に加え、実店舗とオンラインを組み合わせたサービスへの取り組みで新たな成長軌道に乗りつつある。昨年にはカジュアル衣料品店を運営するウィゴーを持ち分法適用会社から連結子会社化するなど経営基盤を強化。26年2月期は2ケタ増収・営業増益を予想し、配当は3期連続の増配を計画。利回りは5%強と高水準ながらPBRは1倍を割れている。 ワールド <3612> [東証P]も総合アパレル大手の一角。婦人服「UNTITLED(アンタイトル)」など多数のブランドを持ち、同社も百貨店を中心とした展開とともにECを含むデジタル戦略にまい進。三菱商事 <8058> [東証P]の衣料品事業買収、ライトオン <7445> [東証S]の子会社化といったM&A戦略も着々と実行している。これまでの構造改革の成果が表れ始め、26年2月期営業利益は前期比16%増の195億円を予想。コロナ禍からの回復が鮮明で、決算期変更前のピーク値(19年3月期、約148億円)を前期に続き上回り実質過去最高の見通しだ。株主還元に手厚く、今期は4期連続の増配を見込む。 TOKYO BASE <3415> [東証P]は日本製に特化したブランド「UNITED TOKYO(ユナイテッドトウキョウ)」、東京発の商品を取り扱うセレクトショップ「STUDIOUS(ステュディオス)」を運営。2008年の創業以来成長を続け、現在国内と中国、香港などで合計70店舗以上を展開する。今月3日発表の5月売上高(実店舗・EC合計)は既存店が前年同月比19.2%増と、前月(同5.1%増)から急拡大。インバウンド効果や夏物アイテムの充実が寄与した。これを受け株価は年初来高値圏に浮上。直近12日には韓国事業の拡大を発表した。16日発表予定の四半期決算に注目だ。 yutori <5892> [東証G]はZ世代を含む若年層をターゲットに近年急成長を遂げている新進気鋭のアパレルベンチャー。18年に創業し、23年に上場した。グロース企業として配当は無配だが、毎年2ケタ増益の業績には目を見張るものがある。「9090(ナインティナインティ)」など主要ブランドの成長に加え、昨年買収した有名芸能人プロデュースの同業が貢献し、26年3月期は営業3割増益で連続最高益へ。これが好感され、株価は先月前半から上げ足を速め新高値を更新した。直近、5月の全社売上高は前年同月比3倍と急増。前月(同2.7倍)に続き絶好調だ。 ダイドーリミテッド <3205> [東証S]は「ニューヨーカー」を主力とするアパレル中堅。昨年表面化したアクティビストとの経営方針を巡る対立が記憶に新しいところだが、こうした経緯もあり、同社は25年3月期~27年3月期に毎年100円の配当を実施する方針を表明。更に、最大50億円程度の自社株買いを行う方針も示している。株価は今年3月末の権利落ちを境に1100円台から一時600円台まで急落したが、足もと900円台に復調。配当利回りは10%超えと超高水準だ。業績面では損失を出していた中国小売部門を譲渡し、26年3月期は最終黒字転換を見込む。 グンゼ <3002> [東証P]は肌着メーカー大手。男性向け下着「BODY WILD(ボディワイルド)」などが主力。食品包装用フィルムやOA機器の部品といった非繊維分野へ多角化している。先月、通期決算の発表とあわせ配当方針の変更を発表。DOE(株主資本配当率)目標の目安を2.2%以上から4.0%以上に引き上げたほか、連結ROEが8%以上となるまで還元性向100%超の株主還元を実施する方針を新たに掲げた。これを受け、株価は発表直前の2600円前後から3600円近辺まで上昇。一気に水準を切り上げたが、それでも足もとの配当利回りは6%台と依然高い。 株探ニュース