佐藤正和氏【日経平均3万8000円台回復、夏相場の勝算は?】(2) <相場観特集>
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―米中貿易交渉に進展はあるか、為替市場の動向などにも注目― 9日の東京株式市場は、リスク選好の地合いが継続し、日経平均株価はフシ目の3万8000円台を回復した。米国経済の先行きに不透明感が募るなかも、前週末に発表された5月の米雇用統計は事前コンセンサスを上回る内容で過度な不安心理が後退している。米中貿易交渉進展への期待も背景に、足もとでは強気が優勢だ。また、目先ドル高・円安傾向にある外国為替市場の動向も注目され、これから訪れる株式市場の夏相場の見通しと合わせて、為替の展望についても専門家の意見を聞きたいところ。今回は株式市場について東証証券の大塚竜太氏に、為替市場について外為オンラインの佐藤正和氏にそれぞれ話を聞いた。 ●「米経済指標や日米関税交渉の行方が相場左右」 佐藤正和氏(外為オンライン シニアアナリスト) 先週末6日に発表された米5月雇用統計は市場予想を上回ったが、3月と4月の雇用者数の増加幅はかなり下方修正された。5日発表の週間の米新規失業保険申請件数も労働市場の軟化を示唆する内容だっただけに、米国経済の減速の可能性は払拭し切れていない。今週は11日に米5月消費者物価指数(CPI)が発表される。その内容が悪ければ米国の利下げ観測への追い風となるだろう。 17~18日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。今月は米政策金利の据え置きが見込まれるが、7月か9月に利下げが行われる可能性はあるとみている。トランプ関税の影響が出てくるのは夏場以降であり、今週のCPIや米6月雇用統計などの結果次第では米景気減速懸念がくすぶる展開は続きそうだ。 日本を巡る環境では、日米関税交渉の行方が注視される。15~17日に開かれる主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)に合わせた日米首脳会談などで関税交渉の着地点を見つけられるかがポイントだ。もし、日米間の合意ができずにトランプ関税が発動されれば、金融市場は日本株売り・円高で反応することも予想される。 こうしたなか、今後1ヵ月程度のドル円相場は140円00~147円00銭前後を見込んでいる。トレンドとしては、レンジの下値である140円を意識する展開を予想する。日米交渉の妥結ができないなど悪いシナリオなら140円割れもあり得るだろう。 ユーロは対ドルでは、1ユーロ=1.12~1.19ドル前後のレンジでのユーロ高・ドル安を想定する。欧州中央銀行(ECB)による利下げは6月で打ち止めが想定され、ドイツ金利も上昇傾向となっている。対円では1ユーロ=161円00~168円00銭前後を見込む。トレンドはやはりユーロ高だろう。 (聞き手・岡里英幸) <プロフィール>(さとう・まさかず) 邦銀を経て、仏系パリバ銀行(現BNPパリバ銀行)入行。インターバンクチーフディーラー、資金部長、シニアマネージャー等を歴任。通算20年以上、為替の世界に携わっている。 株探ニュース