明日の株式相場に向けて=「三菱重が大株主」の銘柄に思惑

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 きょう(5日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比192円安の3万7554円と反落。前日は終始高値圏で売り物をこなし3万7700円台で着地したが、きょうはあえなく戻り売りに押し返される格好となった。引き続き売りなのか買いなのか方向感が見えにくい玉虫色の地合いが続いている。トランプ関税に関するニュースは良くも悪くも、それまでテーブルの上にあった株価材料を押し流し、新たなカード(課題)を眼前に突き出してくるようなイメージがある。しかし、実際に相場を左右するのは金利動向であり、トランプ政策はそのファクターに過ぎないとみておくのが妥当である。

 トランプ米大統領は前日に「『遅すぎる』パウエルは今こそ金利を引き下げるべき」と自身のSNSに投稿し、パウエル氏を再び揺さぶっている。折しも直近発表された5月のADP全米雇用リポートがコンセンサスから大幅に下振れたほか、5月の米ISM非製造業景況感指数も市場予想に反し好不況の分水嶺である50を下回った。注目は週末の雇用統計がどうなるかだが、これで米景気の減速が明らかとなった場合はトランプ氏の主張に重みが加わってくる。市場では「今月17~18日に開催予定のFOMCでの利下げはないが、パウエル氏の記者会見では条件付きながら次回以降のFOMCで利下げを匂わす発言が出るかもしれない」(ネット証券アナリスト)という声も聞かれる。こうなると米国株市場には追い風だが、外国為替市場では仕掛け的なドル安・円高も想定され、東京市場は難しい相場環境に晒される可能性がある。なお、日本時間今晩のECB理事会の結果発表で7会合連続の利下げが確実視されているが、7月については米国との関税交渉の期限が絡んでおり、交渉がうまくいかずインフレ圧力が意識されるようなケースとなれば、利下げを休止するという見方もある。 

 財務省が朝方に発表した対外・対内証券売買契約では、海外投資家は5月第5週(25~31日)に日本株を3361億円買い越しており、これで9週連続の買い越しとなった。「セル・イン・メイ」という格言で有名な5月だが、海外筋は同月のすべての週にわたって躊躇なく日本株に資金を投下し続けたことになる。もっともこの外国人による現物買いは4月から延々と続いている。トランプ関税に対する警戒感は未だにというか、今後も含め拭い去ることはなかなか困難となっているが、実際は距離感をつかんでいることを窺わせる。着地点の見えないネガティブ材料であっても「ディール外交」という正体は見えているという事実、これが見切りの背景となっているようだ。

 個別では防衛関連をテーマとする買いが波状的に続いている。きょうは三菱重工業<7011.T>を筆頭とする“防衛三羽ガラス”は揃って軟調であったが、物色の裾野が徐々に広がっている。トランプ米大統領が今月24、25日に行われるNATO首脳会議に出席することを表明し、各国に防衛費拡大を強く求める姿勢を前面に押し出してきた。この会議には石破首相も出席する方向にあり、こうなると今後2週間あまりにわたり、防衛や安全保障に関するニュースヘッドラインに東京市場でも敏感に反応する地合いが想定される。

 前日の相場でにわかに話題となったのが、三菱重が大株主となっている銘柄群だ。以前取り上げた総合情報サービス会社である菱友システムズ<4685.T>は三菱重が31%強の株式を保有する筆頭株主で5月下旬以降に上げ足を強めた経緯があるが、前日は船舶用低速エンジンを製造するジャパンエンジンコーポレーション<6016.T>がストップ高を演じ、市場関係者の耳目を驚かせた。同社も三菱重が15%弱の株式を保有する筆頭株主となっている。このほか、きょうは上ヒゲ形成となったが三菱重が34%の筆頭株主となっている放電精密加工研究所<6469.T>も思惑の対象。これ以外では特殊鋼大手の三菱製鋼<5632.T>、機械商社の東京産業<8070.T>が同関連株としてマークしておきたい銘柄となる。

 他方、“令和の米騒動”を契機に安倍政権時代以来の農業改革に向けた思惑も底流している。きょうは一時急騰を演じた農業総合研究所<3541.T>は長い上ヒゲをつけて終わったが、井関農機<6310.T>の値動きなどは5月末を境に商いを急増させながら大勢3段上げの様相でマーケットの視線を集めている。また、井関農機に追随する動きが期待できそうな銘柄として、現状はまだノーマークに近いものの出来高に変化がみられるタカキタ<6325.T>などに目を配っておきたい。

 あすのスケジュールでは、4月の家計調査が総務省から、5月中旬の貿易統計が財務省からいずれも朝方取引開始前に発表される。また、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。午後取引時間中に開示される4月の景気動向指数速報値にも関心が高い。海外ではインド準備銀行(中央銀行)が政策金利を発表するほか、ロシア中銀の金融政策決定会合も行われる。欧州では4月のユーロ圏小売売上高や4月の独鉱工業生産指数などが開示され、米国では5月の雇用統計に投資家の耳目が集まる。また、4月の米消費者信用残高も発表される。なお、韓国市場、フィリピン市場、インドネシア市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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