政府主導で普及へ前進、脱炭素を旗印に快走する「FC商用車」関連株 <株探トップ特集>

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コラム

―東京など6都県で国が燃料費を補助、ディーゼル車からFCVへの置き換え図る―

 経済産業省は5月19日、走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しない燃料電池(FC)を搭載したトラックやバスといった商用車向けの燃料費について、6都県で補助を始めると発表した。燃料電池車(FCV)向けの水素価格については、国や地方公共団体が 水素ステーション事業者の整備費用などを補助することで価格が低下してきているが、燃料費そのものはディーゼルに比べて水素の調達コストが高く、その差額を民間事業者が負担しているのが現状だ。燃料費の補助は環境性能に優れたFCVの導入を促進する狙いがあり、関連銘柄に改めて注目してみたい。

●導入促進の重点地域を選定

 FCVとは、車体に搭載されたFCで発電を行い、得られた電力で電気モーターを駆動して走行する自動車のこと。水素と酸素の反応によって電気をつくるため排出されるのは有害物質を含まない水だけで、究極のエコカーとされる。

 政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を全体で実質ゼロにすることを目標に掲げているが、課題のひとつが国内のCO2排出量の約2割を占める運輸部門における地球温暖化対策だ。運輸部門の脱炭素化に向けて、電気自動車(EV)をはじめ多様な選択肢があるなか、FCVは充てん時間が短く、航続距離が長いという特長があることから更なる普及が期待されており、それに伴って商用車を中心とした運輸部門での水素市場の拡大も予測されている。

 一方で、FCVの導入については需給両面で予見することが難しく、運輸部門における水素の利活用拡大には官民が一体となって先行的なFC商用車の需要創出及び周辺需要の喚起を図っていくことが重要となる。そうした観点から経産省は燃料費補助について、FC商用車の需要が相当程度見込まれ、地方公共団体の意欲的な活動がみられる地域を「重点地域」とし、東京都・神奈川県・福島県・愛知県・兵庫県・福岡県を選定。ディーゼルと水素の燃料費の差額に対して1キロ当たり約700円(差額の4分の3程度に相当)を追加的に支援することで民間事業者の負担を大幅に軽減するとしている。

●トヨタ、ホンダなど注力姿勢

 FCVといえば、まず思い浮かぶのがトヨタ自動車 <7203> [東証P]が14年に発売した世界初の量産型FCV「ミライ」だ。今年2月に開催された「H2&FC EXPO」では新型FCシステム(第3世代FCシステム)を披露しており、このシステムは乗用車向けとは別に商用車に特化した製品を用意。大型商用車向けではディーゼルエンジン並みの耐久性や高出力を実現し、小型化することで、より容易にさまざまな商用車に搭載することができ、26年以降に日本や欧州、北米、中国などの市場に投入する予定だという。

 ホンダ <7267> [東証P]も「H2&FC EXPO」で、27年度に量産開始予定の次世代FCモジュール、及び26年に生産開始予定のFC定置電源を初公開した。この次世代FCモジュールは現行モデルに比べて製造コストを半減し、耐久性を2倍以上に向上。また、容積出力密度(単位容積当たりから出力できる電気エネルギー)を3倍以上に高めて小型化を実現したことで搭載レイアウトの自由度が高く、こうした特長を武器に搭載・適用範囲や販売地域を拡大する構えだ。

 また、いすゞ自動車 <7202> [東証P]は4月に富士通 <6702> [東証P]とFCVも含めた商用車のソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)開発強化に関するパートナーシップ契約を締結したと発表したほか、日野自動車 <7205> [東証P]は7月に開催される「人とくるまのテクノロジー展 2025 NAGOYA」にFC大型トラックを出展予定。三菱ふそうトラック・バス(川崎市中原区)は5月に岩谷産業 <8088> [東証P]と液化水素を利用したFC商用車向けの水素充てん技術の研究開発に関する基本合意書を締結したことを明らかにしている。

 このほかの関連銘柄としては、岡山大学と高感度水素センサーを開発済みのテクニスコ <2962> [東証S]、FCV向け水素配管などを手掛ける住友理工 <5191> [東証P]、水素漏れを検知する部品である水素ディテクタを製造している新コスモス電機 <6824> [東証S]、車載用水素ポンプ環境性能評価装置を展開するチノー <6850> [東証P]、FCV評価のための分析・計測技術を持つ堀場製作所 <6856> [東証P]、FC用シールを扱うNOK <7240> [東証P]、FC主要部品の検査精度を向上させる検査ユニットでトヨタから技術開発賞を受賞した実績がある安永 <7271> [東証S]、水素供給ユニットを提供する愛三工業 <7283> [東証P]などが挙げられる。

●水素ステーションにも注目

 FCV普及に欠かせないのが、燃料を供給する水素ステーションだ。直近では明治電機工業 <3388> [東証P]が設備工事を行ったエア・ウォーター <4088> [東証P]の「水素ステーション札幌大通東」が4月から本格運用を開始したほか、3月にはコスモエネルギーホールディングス <5021> [東証P]傘下のコスモ石油マーケティングと岩谷産の共同出資会社である岩谷コスモ水素ステーションが「有明自動車営業所」(東京都江東区)の開所式を開いた。

 水素ステーションに不可欠な製品も注目で、パラジウム合金でできた水素透過膜に関する特許を持つ山王 <3441> [東証S]、水素分離膜モジュールの日本精線 <5659> [東証P]、高圧水素ガスを供給・充てんする「HHVカプラ」の日東工器 <6151> [東証P]、水素製造装置の三菱化工機 <6331> [東証P]、水素圧縮機の加地テック <6391> [東証S]、液体水素用極低温バルブ類の宮入バルブ製作所 <6495> [東証S]、水素充てんディスペンサー用ノズルのハマイ <6497> [東証S]、圧縮機などパッケージユニットのキッツ <6498> [東証P]、水素ステーション用ステンレス鋼のUEX <9888> [東証S]などの動向から目が離せない。

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