中小型株に再評価機運浮上、東証グロース改革と6月IPOの行方を探る <株探トップ特集>

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コラム

―時価総額100億円が新ボーダー基準に、新規上場企業の成長性問われるー

 トランプ関税の動向に関心が高まり全体相場は上値の重い展開が続いている。そんななか、気を吐いているのが中小型株だ。長く低迷局面が続いたうえに米国情勢など海外動向の影響を受けにくいことから物色の矛先が向かっている。更に中小型株の上昇には「東証グロース改革」による影響も出ている様子だ。中小型株市場改革と 6月IPOの行方を探った。

●相場は東証グロース改革を意識する局面に

 足もとで中小型株の強調展開が続いている。東証グロース市場250指数は、年初から約17%の上昇と全体相場からの逆行高を演じている。この中小型株の健闘の背景には、第1には昨年まで低迷が続いたことで戻り売り懸念が小さいこと、第2には中小型株には内需系企業が多く、トランプ関税による影響は小さいとみられること、第3には東証グロース市場改革による期待が膨らんでいること――の3点が指摘されている。

 特に、市場の関心を集めているのは東証が4月にまとめた東証グロース市場の改革案だ。同改革では、新たな上場維持基準を現行の「上場から10年経過後に時価総額40億円以上」から「上場5年経過後に100億円以上」へ引き上げることが示された。2030年以降から新基準を適用する方針だ。時価総額の小さな東証グロース市場の銘柄は「機関投資家の投資対象からは外れてしまい、上場後に株価が鳴かず飛ばずとなる銘柄が少なくない」(市場関係者)ことが問題視されてきた。機関投資家には投資対象を時価総額100億円以上にしているところもある。今後はグロース市場を機関投資家が参入しやすいマーケットとし、上場から5年後に100億円に達しない企業は、成長性が低く上場維持基準を満たさないと判断されることになる。

●成長性問われ新規上場のハードル高まる可能性も

 一方、新規上場時の上場基準は見直さない。新規上場時の時価総額は30億円程度だったが、上場後に急成長し4000億円規模のプライム企業となったSHIFT <3697> [東証P]のような例もあるからだ。現在、東証グロース市場には600社を超える企業が上場している。このうち時価総額が100億円を超えているのは200社程度だが、30年以降には新基準の達成が求められる。今後、「グロース上場企業の生き残りをかけた取り組みが本格化する」(アナリスト)とみられている。

 東証グロース改革がIPOに与える影響も小さくないとみられる。先行き時価総額100億円が難しそうな成長性の乏しい企業は、証券会社の上場審査などではねられIPOを断念する企業も出てきそうだ。東証グロース企業は、成長性が本格的に問われる局面に突入することになる。

●伊澤タオル、プリモGHDなどスタンダード市場への上場増える

 そんななか、6月IPOがスタートする。上場企業数は7社と昨年に比べ4社減少する。内訳はグロース市場が3社、スタンダード市場が3社、プライム市場が1社。上場企業数が減少したほか、今年に入り4月までに2社だったスタンダード市場への上場企業が増えており、この流れが続くか注目される。

 第1号となるのは20日にスタンダード市場に上場する伊澤タオル <365A> [東証S]だ。同社はタオル製品などの企画・製造販売を行っている。小売り店やキャラクターIP事業者へのタオル製品の企画販売、ECサイト・アマゾン内における自社ブランド「タオル研究所」を軸に事業展開している。のれん償却前当期純利益に対する50%の配当性向を目安とする予定で、仮条件から弾いた今期予想配当利回りは4%台後半。資金吸収額は40億円台、時価総額は70億円強の見込みだ。

 23日には東証グロース市場にウェルネス・コミュニケーションズ <366A> [東証G]が登場する。同社は健康管理SaaSなどを用いたヘルスデータプラットフォームなどを展開。健康診断を起点としたプラットフォーム事業を行っている。22年6月にIPOを延期しており、3年ぶりの再挑戦となる。資金吸収額は40億円台、時価総額は140億円強の見込み。24日にはスタンダード市場にプリモグローバルホールディングス <367A> [東証S]が上場する。同社はブライダルジュエリーの企画・販売を行っている。日本で培ったブランドを生かして台湾・香港・中国など海外展開を進めている。資金吸収額は170億円強、時価総額は200億円前後の見込み。

●北里コーポはプライム市場に上場し6月最大のIPOに

 25日にはプライム市場に北里コーポレーション <368A> [東証P]が上場する。同社は不妊治療に関する医療機器などの製造販売を手掛ける。海外では世界約110カ国・地域で製品を販売しており、前3月期時点での海外売上比率は66%と高い。米国・中国を中心に顧客拡大に注力している。資金吸収額は約200億円、時価総額は480億円強の見込みと大きく6月では最大規模のIPOとなる見通しだ。

 26日にはグロース市場にエータイ <369A> [東証G]が上場する。同社は永代供養墓を中心とした寺院コンサルティングを展開。墓地の利用者に後継者がいなくても寺院が永代にわたり供養・管理を行う永代供養墓の募集代行業務などを行っている。資金吸収額は20億円台、時価総額は60億円強の見込み。30日にはグロース市場にリップス <373A> [東証G]、スタンダード市場にレント <372A> [東証S]の2社が上場する。リップスは、メンズコスメの企画・販売を行う商品事業及びヘアサロンのフランチャイズ運営を行っている。資金吸収額は約40億円、時価総額は約80億円の見込み。レントは産業機械や建設機械のレンタル事業などを展開。国内とアジア3カ国に拠点を持ちレンタル総合サービスを行っている。資金吸収額は40億円台、時価総額は160億円前後の見込みだ。


■6月IPO一覧
      コード・
上場日   上場市場   企業名              主幹事
6月20日  365A・東S  伊澤タオル            三菱UFJ、SBI
  23日  366A・東G  ウェルネス・コミュニケーションズ 野村
  24日  367A・東S  プリモグローバルホールディングス みずほ、SMBC日興
  25日  368A・東P  北里コーポレーション       野村、SMBC日興
  26日  369A・東G  エータイ             大和
  30日  372A・東S  レント              みずほ
  30日  373A・東G  リップス             野村
(注)東Pは東証プライム、東Sは東証スタンダード、東Gは東証グロース

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