馬渕治好氏【日経平均3万7000円台の攻防、6月は買いか】 <相場観特集>
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―トランプ関税に振り回される世界、企業業績への影響は― 2日の東京株式市場はリスクオフの流れが継続した。前週末に日経平均株価は先物を絡め大きく売り込まれ3万8000円台を再び割り込んだが、週明けとなったこの日も利益確定を急ぐ動きとリバウンド狙いの押し目買いが錯綜するなか、結果的に売りの勢いが大幅に上回る地合いとなった。6月相場は出だし荒れた値動きだが、3万7000円台は強気に買い向かってよいのかどうか、投資家も大いに迷う場面だ。6月相場の見通しについて、マクロ面からマーケットを的確に予測することで定評のあるブーケ・ド・フルーレットの馬渕治好氏に意見を聞いた。 ●「7月のEU関税延期期限を控えボックス圏推移が続く」 馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表) 週明けの東京市場は日経平均が大きく下値を探る展開となったが、6月相場は売りも買いも方向性の見えにくい地合いとなりそうだ。結論を先に言えば、日経平均は3万6500円から3万8500円を中心とする比較的狭いゾーンでのもみ合いを予想している。 前週から日経平均は上下に荒れた値動きとなっているが、日経平均が水準を切り上げた理由については、欧州連合(EU)に50%関税を6月1日から課すとした件で、トランプ米大統領が7月9日までの延期を表明したこと。加えて米国が課す関税の一部について米国際貿易裁判所が違法であると判断し、差し止め命令を出したことなどが買いに拍車をかけた。しかし、いずれも先行き不透明感が払拭されたわけではなく、現時点ではポジティブに評価できる材料とは言い切れない。また、その後にトランプ氏は鉄鋼・アルミニウムにかける関税を従来の25%から50%に引き上げると表明するなど、関税を巡る話では、トランプ発言によって今後もマーケットは振り回される展開が続きそうだ。 6月が難しい月というのは7月に国内では参院選、海外ではトランプ関税絡みで7月に改めてEUに対する50%関税の延長期限を迎えることから、これらの結果を見極めたいというニーズが市場にあるためだ。もっとも、参院選については自民党がかなり苦戦することは見えており、株価としては相応に織り込みが進んでいるため、この結果によって全体相場が大きく崩れるような展開は想定しにくい。心配なのはやはり米国発の悪材料で、ひとまず小康状態にある米国からの資金逃避懸念、いわゆるトリプル安への警戒ムードが再燃すると、マーケット心理が改めて冷やされそうだ。中長期的には米国から流出した資金の一部が日本に向かうことも考えられるため、プラス材料の面もあるが、短兵急な動きが顕在化した場合は、どうしても東京市場にもネガティブに働きやすくなる。 今期の企業業績についてはトランプ関税を考慮してもアナリストコンセンサスは増益(TOPIXベース)ながら、企業側の集計では減益とカイ離がある。ただ、当方は数%の増益で着地するとみている。物色対象としては、やはり内需株が中心で、半導体関連の押し目買いはまだ少し時期的に尚早とみている。輸出セクターは機械株などが深押ししたところでは逆張り対象に挙げられるが、今はまだ打診買いの域を出ていない。一方、当面内需系は狙いやすく、コンテンツ関連やゲーム関連株などを中心に、あくまで個別に好業績銘柄をピックアップしていく姿勢で臨めば報われそうだ。 (聞き手・中村潤一) <プロフィール>(まぶち・はるよし) 1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。個人投資家などに向けてセミナー講演を活発に行っている。セミナーのスケジュールは「ブーケ・ド・フルーレット」のホームページ参照。 株探ニュース