【植木靖男の相場展望】 ─内需主役・ハイテク脇役の構図は変わるか?
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「内需主役・ハイテク脇役の構図は変わるか?」 ●米国市場連動の日本株に変化の兆し 5月29日の日経平均株価は多くの弱気論者をあざ笑うかのように急上昇をみせ、3月26日高値の3万8220円を上抜き、5月13日高値の3万8494円に迫った。75日移動平均線まで突っ込んだ下げの様子をみて、さらに下落すると当て込んだ向きの思惑は大外れとなった。 一方、海の向こうのNYダウは3月、5月の高値にまだ届かない状況にある。つまり、米国株価に連動して上下していた日本株に変化がみられるようになった、ということだ。 米国で通貨安、債券安、株安の“トリプル安”の再燃リスクが高まり、同国市場から資金の流出が起き出したとみられるのだ。もっとも、この変化がさらに明確となるかどうか、まだ判然としない。それに資金が流出するとしても、わが国に流れてくるかも定かではない。欧州への移動も考えられるからだ。 ただ、ここ10年間で日銀から流出した膨大な資金が米国市場へ移ったことは事実だ。この資金が米国から日本に環流してくる可能性は十分にある。 その条件はただ一つ。米国の高関税に対応する日本政府の政策が打ち出されることだ。「国難」であるのだから通常の景気対策は通用しない。まったく異次元の政策が期待される。 振り返れば、平成バブルの時は輸出が好調で過剰資金が国内を潤した。今回、膨大な資金が米国からわが国に移動してくるのだとしたら、日本の景気、企業収益は自ずと拡大する。もちろん、株式市場は大相場をみせることになろう。マネーの流れが市場を左右するのだ。 では、目先的な株価はどうみればよいのか。3月、5月の高値に届いた以上、そろそろ一服とみるのが定石だ。もっとも、底入れ感が強まっているだけに、押し目は買いである。ここへきて個人投資家が押し目を拾っているのは正解であろう。また、海外短期筋の買いや自社株買いも健在である。 ●動き始めたトップバッター、追随あれば不動産活躍は本物に 当面の物色動向だが、日米の関税問題が決着をみせていない状況では、これまでの物色対象に大きな変化はないと考えられる。すなわち、内需株を主役にハイテク株が脇役として進行するのではないだろうか。 ただし、関税問題に対して打たれる政策如何によっては、物色の流れが大きく変化する可能性が出てくる。 内需では定石通り、金融、小売り、不動産、建設、防衛など。市況商品もよくなっている。一方、ハイテク株はその成長力を買う動きが強まりをみせる展開となろう。 個別にみると、植田日銀総裁の発言からも遅かれ早かれ利上げは必至とみられる。金融では大手銀行、保険は折に触れ物色対象となろう。業績もよい。やはり、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や東京海上ホールディングス <8766> [東証P]などだろう。小売りでは三越伊勢丹ホールディングス <3099> [東証P]だ。 このほか、直近では浮体式の原油生産貯蔵設備(FPSO)を手掛ける三井海洋開発 <6269> [東証P]、船舶用エンジン首位の三井E&S <7003> [東証P]に注目したい。 また、サンリオ <8136> [東証P]やキユーピー <2809> [東証P]なども面白そうだ。気になるのはNTT <9432> [東証P]だ。いよいよ目覚めるか。 さらに先を見据えれば 不動産。トップバッターの住友不動産 <8830> [東証P]が満を持して動き出した。三井不動産 <8801> [東証P]、三菱地所 <8802> [東証P]が追随すれば本物だ。 2025年5月30日 記 株探ニュース