「自動運転」新時代へ、外資も虎視眈々の有力テーマで注目の銘柄群 <株探トップ特集>

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コラム

―直近IPOやトヨタ・アルファベットの連携など、刺激材料相次ぎ新局面突入へ―

 人間が運転手のポジションを譲る時代が近づいている。超高齢社会を迎え、少子化の解決にも有効策を打てない日本において、社会の効率性や持続性、ひいては安全性を確保するうえで、システムや人工知能(AI)に判断を委ねる場面が急増していくことは論をまたない。足もとで開発された世界初とされる鉄道運行の自動判断システム、そして重要プレイヤーのIPO、日米の巨大企業連携など、「自動運転」のテーマ投資が盛り上がる空気が再び醸成されつつある。株式市場でも関連株に改めて脚光が当たる場面が近づいている。

●「人間に判断を委ねない時代」が近づく

 突発的な事象への対応、つまり状況の高度な認知判断は、長らく人間の専売特許だった。しかし、鉄道の運行に関して、事故や異常などが発生した際、各列車が自動で「運行を停止する」「運行を再開する」といった判断を下す「自律型列車運行制御システム」と呼ばれる画期的なシステムが先日開発された。全体の状況を把握し、最適な判断を下すためのセンサーやシステム、そして言うまでもなくAIの精度が日々高まる中で、こうした「判断と行動の自動化」は、いよいよ現実のものとして我々の眼前に姿を現してきた。

 鉄道領域に限らず、社会のいたるところで「人間が判断する」という前提が、少しずつではあるが、確実に消えつつある。機械が意思決定の主体となる未来、その過渡期に立っていると言える。この不可避の潮流の中でも、最も期待され、かつ技術的・倫理的な挑戦が集中している領域の一つが自動車の「運転」であろう。煽り運転などは言わずもがなだが、昨今は高齢者の認知判断の低下に起因する危険運転なども社会的に取り沙汰されることも増えてきた。ふとしたヒューマンエラーが結果的に多くの命を奪う危険性も持っている。これを機械ないしシステムに委ねることができれば、理論上、事故の大半は防げる可能性が高い。

●ダイナマップの上場は新たな時代を示唆

 株式市場でもひとつの象徴的な出来事といえば、今年3月27日、ダイナミックマッププラットフォーム <336A> [東証G]がグロース市場に上場したことだ。自動運転やADAS(先進運転支援システム)を支える高精度3次元地図データ(HDマップ)を提供する企業で、業界内では極めて重要なプレイヤーだ。日本政府によるバックアップのもと、国内自動車メーカー10社などの出資により設立された経緯がある。同社の新規上場を契機に、再び自動運転への関心が高まりつつある。

 更に注目すべきは、4月30日、トヨタ自動車 <7203> [東証P]と米アルファベット傘下のWaymo(ウェイモ)が自動運転の開発と普及における戦略的パートナーシップに関して基本合意したと発表したことだ。日米の巨大資本が交差する構図は、自動運転車が走り回る未来社会の到来を予見させる象徴的な出来事と言っても過言ではない。実際、Waymoは現在、サンフランシスコ・ベイエリア、ロサンゼルス、フェニックス、オースティンで毎週25万回以上の運行を行い、走行距離は数千万マイルに達し、人間が運転する場合と比べ、負傷を伴う衝突を81%削減するなど、Waymoが運行する場所において道路の安全性を大いに高めていることをデータが示したとしている。

●ウーバーも日本での展開を視野に置く

 また、これに触発されたかのように、ウーバー・テクノロジーズの幹部も、将来的に日本で自動運転車両を活用した配車サービスを展開することを視野に入れているもようで、これについては5月開催の年次イベントで明らかにしたことを各メディアが報じている。詳細には言及しなかったものの、構想が着実に進んでいることは間違いない。既に米国では、一部地域で完全自動運転車による配車サービスが現実のものとなっている。もちろん、すべてが順風満帆というわけではない。自動運転にまつわる安全性の議論は根強く、事故時の責任所在、倫理的判断場面への対処、通信の安全・安定性など、技術的には実現可能でも実装にはハードルがあるのだが、それでもいよいよ目が離せない段階となってきていることは確かだ。今回は「自動運転」関連の有望銘柄に焦点を当てた。

●ここから要注目となる自動運転関連の7銘柄

◆ダイナミックマッププラットフォーム <336A> [東証G]~内閣府の「研究開発成果とsociety 5.0との橋渡しプログラム」の施策の一つである、経済産業省による「公共エリア向けダイナミックマップの開発」の研究開発事業を2023年度から受託している。自動運転の社会実装を加速するための中核インフラとして、高精度3次元地図と、リアルタイムに変化する状況に対応するダイナミックマップを構築する。

◆GMOインターネット <4784> [東証P]~完全自動運転の研究開発に取り組んでいるチューリング(東京都品川区)は、自動運転AI開発基盤として同社が提供する高性能GPUクラウドサービス「GMO GPUクラウド」を採用した。高帯域インターコネクト、高速分散ストレージ、HPCジョブ管理という分散学習スタックを備えた高性能GPUクラウドサービスであり、AI開発基盤としてサポートする。

◆HPCシステムズ <6597> [東証G]~自動運転に不可欠な高性能コンピューターを開発する。画像処理/広範囲温度帯対応の産業用コンピューターやタブレットで確立した豊富な実績と知見を生かし、ハードウェア・ソリューションを提供している。

◆モルフォ <3653> [東証G]~高度な画像処理技術を、組み込みソフトウェアとしてグローバルに展開。カメラで捉えた画像情報をエッジデバイスやクラウドで解析する、AIを駆使した画像認識技術を提供。画像のみで高精度な3次元再構成を実現することや、RGBカメラで撮影された1枚の画像から対象物までの距離を推定することができる技術を持つ。

◆アイサンテクノロジー <4667> [東証S]~自動運転実証及びサービス運用を16年より重ねており、自動運転を支える高精度3次元地図データの作製や自動運転システム開発支援を積極的に進めている。自動運転車両のサービス基盤開発、各種センサー搭載車による走行環境のデータ収集といった車両構築・システム開発などを幅広く提供。

◆ディジタルメディアプロフェッショナル <3652> [東証G]~カメラ画像とAI画像認識技術を組み合わせて先進安全支援の解析を実現するモビリティ・スマートインフラ向けサービスを提供する。24年5月には自動運転や先進安全支援、ロボティクスのシステム開発で普及が進むモデルベース開発(MBD)に向けた製品・サービスの拡充を目指し、ドイツに本社があるdSPACEグループの日本法人との協業を開始したことを発表した。

◆タムロン <7740> [東証P]~カメラ向けレンズが主力。自動運転の分野においては、多様な車載用レンズの開発に取り組んでいる。高度な検知能力が各センサーに求められており、そのセンサーの「眼」を担うハイスペックなレンズの開発を手掛ける。センシングカメラ用レンズは、前方・側方衝突回避、ドライバー監視、搭乗者検知、車間距離制御、夜間歩行車感知などに使われる。

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