逆風のなかでも成長続く、最高益路線まい進の内需系バリュー株5銘柄精選 <株探トップ特集>

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コラム

―トランプ関税もなんのその、今期最高益&増配予想の割安成長株にロックオン―

 3月期決算企業の本決算発表が先週までに一巡した。上場企業の25年3月期業績は、AI(人工知能)関連市場やインバウンド需要の拡大、円安による収益押し上げ効果などに支えられ、経常利益段階で前の期比12%増と2ケタ成長で過去最高益を更新した。世界的なAIへの積極投資が追い風となった半導体やデータセンター関連、インバウンドの増加が収益拡大につながったレジャー・観光関連、国内金利の上昇で資金利益が膨らんだ銀行などに好決算が多くみられた。一方、26年3月期はトランプ米政権による関税政策や為替の円高進行などが警戒されるなか、減益に転じる見通しだ。

 今回は収益環境に向かい風が吹きつけるなかでも成長を堅持する見通しを示す企業に注目。26年3月期に連続で過去最高利益の更新を見込む企業のなかから、増配基調かつ株価指標面に割安感のある妙味株を探った。

●トランプ関税で成長路線に暗雲

 23日までに26年3月期の業績予想を開示した東証上場企業2036社(変則決算を除く)を集計したところ、経常利益(米国会計基準と国際会計基準は税引き前利益)の合計額は前期に比べ6.5%減少する見通しとなった。トランプ関税と円高のマイナス影響が直撃する自動車や海運、鉄鋼に加え、原子力利用率の低下やコスト増加が重荷となる電力会社などに大幅減益を見込む銘柄が目立つ。一方、企業や官公庁の旺盛なIT投資ニーズを取り込む情報通信業や金利上昇の恩恵を受ける銀行セクターには増益予想を掲げる企業が多くみられる。

 例年、国内上場企業の期初予想は保守的に算出される傾向が強いが、今期はとりわけ関税をはじめとするトランプ政権の政策による業績への影響が読み切れず、製造業を中心に慎重姿勢が一段と強まった格好だ。米中間の関税引き下げ合意などの材料は業績予想に織り込まれておらず、上振れを期待する向きもあるが、予測不能なトランプ政権だけに今後も予断を許さない状況が続く。

 こうしたなか、今回は外部環境の影響を受けにくく、業績が好調な内需系セクターに着目。26年3月期に経常利益が連続で過去最高を見込み、更に利益成長とともに株主還元を強化する傾向にある企業に照準を合わせた。以下では、決算内容が評価され株価が戻り基調にある最高益企業のうち、増配計画かつ株価指標の水準が低位で、一段の上値が期待できそうな5銘柄を紹介していく。

◎オカムラ <7994> [東証P]

 オフィス家具で国内トップクラス。旺盛なオフィスのリニューアル需要やスーパーマーケットなどの店舗改装ニーズを捉え、業績は拡大トレンドを突き進んでいる。26年3月期は経常利益295億円(前期比11.5%増)と7期連続で過去最高益を更新する見通しだ。政策保有株式の縮減を進める一方、株主還元を強化しており、配当は前期比10円増の104円(創立80周年記念配当7円を含む)を予定している。また、3月に買収を発表した英オフィス家具メーカーのボスデザインを通じて海外展開を加速させる構えにあるほか、需要が高まる冷蔵・冷凍ショーケースの新工場を建設するなど、成長投資にも積極姿勢をみせる。株価は年初来高値圏で推移しているが、配当利回り4.8%近辺、予想PER9倍前後と依然として割安感が強く見直し余地は大きい。

◎トーエネック <1946> [東証P]

 中部電力 <9502> [東証P]グループの電気設備工事大手。配電設備の建設や配電線の地中化工事を手掛けるほか、工場、オフィスビル、病院、学校、商業施設などの屋内電気設備を企画から保守まで一貫して請け負う。前期は民間の設備投資意欲が高水準に推移するなか、配電線工事や屋内線工事に加え、大型太陽光発電関連案件が順調に進捗し、4期ぶりに経常利益の過去最高益を塗り替えた。26年3月期は主力の屋内線工事を中心に潤沢な手持ち工事の完成が見込まれ、同利益は170億円(前期比10.7%増)と2期連続の最高益更新を計画する。指標面では予想PER8倍台、PBR0.8倍近辺で、配当利回りも4.6%前後と高く、三拍子揃った最高益バリュー株として注目したい。

◎フォーカスシステムズ <4662> [東証P]

 NTTデータグループ <9613> [東証P]を主要顧客とし、官公庁・自治体向けシステム開発で多くの実績を誇る独立系システムインテグレーター。セキュリティー分野にも強みを持つ。前期は法人向けERP(統合基幹業務システム)事業で高収益な中小型追加開発案件を獲得したほか、不採算案件の一巡や品質向上に伴う単価上昇で広域ソリューション事業の利益が大きく改善し、経常利益段階で7期連続となる最高益更新を果たした。26年3月期は利益率の高い案件へのシフトや業務効率化を進め、経常利益26億6000万円(前期比22.9%増)と最高益が続く見込みで、配当は前期比8円増の50円に増配を計画する。配当利回り3.8%近辺、予想PERは10倍台で同業他社と比べて指標面の割安さが際立つ。

◎NCS&A <9709> [東証S]

 社会インフラから金融、製造、流通まで幅広い領域で事業展開するITサービスの老舗。「2025年の崖」問題を背景に古い基幹業務システムを刷新する動きが活性化するなか、前期は利益率の高い自社ソリューションで外資系保険会社向け大型案件などが増加し、経常利益21億900万円(前の期比19.9%増)と実に34期ぶりの最高益と大復活を遂げた。26年3月期はIT投資需要の拡大や自主ビジネスの強化を背景に2ケタ増益を見込み、配当も前期比4円増の44円に増配する計画だ。同社は業績予想、配当計画ともに前期まで7期連続で期中に増額修正した経緯があり、今期も期初予想は保守的とみられる。また、配当利回り3.7%近辺、予想PER12倍台と指標面からも投資妙味は大きい。

◎燦ホールディングス <9628> [東証P]

 業界最大手の「公益社」を中核とする葬儀社グループ。高齢化で死亡者数が増加する一方、葬儀の縮小化で単価が下落傾向にあるなど、追い風と向かい風が交錯する葬儀業界で、積極的なM&Aと直営会館の出店拡大を通じて成長を続けている。26年3月期は昨年9月に買収したきずなホールディングスの通期寄与もあり、経常利益は47億5000万円(前期比8.9%増)と2期連続で最高益を更新する見通しだ。配当政策では累進配当を導入し、前期配当を従来予想から13円増額して37円としたうえで、今期は40円と10期連続の増配を計画する。好決算を受けて関税影響を受けない内需系グロース株として脚光を浴び、株価は1995年1月以来となる高値圏を舞う展開にある。なお、決算期を3月末から8月末へ変更する予定で、26年8月期は17ヵ月の変則決算(業績予想は精査中)となる見込みだ。

株探ニュース

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