始まった「半導体関連」大相場復活の序奏、爆速上昇期待7銘柄リスト <株探トップ特集>
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―オイルマネーが流れを変える、宝石箱と化す半導体セクターの中小型株― 週末23日の東京株式市場では日経平均株価が3日ぶりに反発。前週半ばを境に調整色を強めていたが、3万7000円近辺は押し目買いニーズの強さも確認された。依然として上値は重いものの、半導体セクターの一角が底堅さを発揮し全体を支えた。 半導体関連は一時期の“AIバブル崩壊説”を背景とした悲観的な見方が、今回の日米の関連企業の決算発表を通過して雰囲気が変わってきた。現状はなお強弱観が対立しているが、“上昇相場は懐疑の中で育つ”という。ここは半導体株へ物色の矛先を向ける機が熟していると判断したい。 ●エヌビディア決算を過度に恐れる必要はない 半導体セクターの主力銘柄は4月下旬から急速に水準を切り上げ、底値圏から離脱する動きが相次いだ。空売り筋の買い戻しが原動力とはいえ、これまでには見られなかった上昇パフォーマンスで、大局的な地合いの変化を示唆するという見方が出始めている。AI用半導体関連の代表株であるアドバンテスト <6857> [東証P]やディスコ <6146> [東証P]は5月中旬に直近の戻り高値を形成し、その後は75日移動平均線に頭を押さえられ勢いが止まったが、ここでの押し目形成場面は大勢2段上げに向けた踊り場となっている可能性があり注目しておく必要がある。 半導体セクターにおいては、来週5月28日に予定される米エヌビディアの決算発表が、ビッグイベントとして世界中の投資マネーの視線を釘付けにしている。同社の決算内容自体はおそらく良好で、ガイダンスについてもジェンスン・ファンCEOの強気コメントが聞けそうだが、それだけでは安心できない。事前コンセンサスが高いハードルとなり、株価的には上下どちらに振れるのかは予想がつかないというのが現実だ。また、米国の対中半導体規制の影響は無視できず、これについてもファンCEOの発言を前に、株式市場がどの程度事前に織り込めるのか不明である。 しかし、少し長い目でみれば半導体セクターの復権は遅かれ早かれやって来る。市場関係者からは、「対中規制については当初ほど厳しいものとはならないという見方が強まっている。事実、トランプ米大統領はバイデン政権下で1月に発表されたAI用半導体の輸出規制案の撤回を表明した。また、今回のエヌビディアの決算に関して仮に短期的にはネガティブ方向に影響が出たとしても、半導体セクター全般に対する投資マネーの回帰を妨げるものとはならないであろう」(東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏)という意見が聞かれる。大塚氏が述べたように今回のエヌビディアの決算が半導体株にとって天下分け目というのではなく、「影響は出てもそれはノイズに過ぎない」という認識が静かに浸透しているとすれば、半導体株をターゲットにここは強気に攻めに転じて良い場面である。 ●行き過ぎた楽観論にディープシークの衝撃 周知の通り半導体関連は製造装置メーカーを中心に2023年から24年にかけて大相場を形成した。半導体はテーマ買いの対象としてまさに相場の華であり、実際、日経平均など全体指数を押し上げる原動力として存分に威力を発揮した。これは彗星のごとく現れた「生成AI」が大方の予想を上回るスピードで市場規模を拡大させ、それに伴う半導体特需が関連企業を潤すというシナリオが始動したことによるもの。シンボルストックとなったのは紛れもなくAI用半導体GPUを独占供給するエヌビディアであった。 ところが データセンター建設ラッシュが進むなかで、爆発的なAIサーバー向けの需要に陰りが見え始め、行き過ぎた楽観論の修正が始まった。追い打ちをかけたのが中国の新興AI企業ディープシークだ。同社が開発した低価格・高性能のAIモデルの台頭によって、最先端半導体などハイスペックで高コストのAI用半導体の需要が大幅に減退するとの見方が広がった。半導体関連企業にとっては、本格的なAI時代の到来とともに収益環境は「無双の書き入れ時が続く」というイメージが投資家の間でも強かっただけに、このカウンターパンチは効いた。 ●オイルマネーの登場で新たなステージ広がる だがここにきて、そのネガティブシナリオもやや行き過ぎて喧伝されていたという見方が広がっている。米ハイテク大手の1~3月期決算を総括して、データセンター向けの需要は減速が感じられず、各企業による今後のガイダンスについても同関連の設備投資意欲がシュリンクするという観測を否定するような内容が目立った。半導体セクターにとって、もう一つの懸念材料であった米国の対中輸出規制については、米中間で歩み寄りの姿勢が見え始めるなか、想定していたほど強硬的なものではないという認識が強まっている。 また、オイルマネーの存在が半導体需要を喚起する設備投資の担い手として大きな影響をもたらす可能性が出てきた。これは“トランプ・エフェクト”と言ってもよいが、サウジアラビアなどがエヌビディアの最先端半導体を大量購入するという。更に直近では、アラブ首長国連邦(UAE)が米国のスターゲート計画に出資を行い、両国のAIインフラ構築に乗り出すというビッグニュースも飛び込んできた。「スターゲートUAE」と呼ばれるプロジェクトで、UAEにデータセンターを建設し来年までに稼働を目指す。これによって、最大で世界人口の半数にAIサービスを提供することが可能になるという。 ●半導体関連の中小型株に照準を合わせる場面 半導体市場を取り巻く環境はグローバルに変わりつつあるが、そのなか東京マーケットにおいても今の潮流変化は関連株に恩恵をもたらしそうだ。株式需給の観点では、半導体関連株の下落は空売り筋の暗躍も観測されていたが、売り仕掛けによって実需筋のポジション調整の売りや信用枠で買っていた個人投資家の投げ売りを誘発し、ファンダメンタルズと比較して売られ過ぎという銘柄も多くなっている。また、中小型株の中には既に売り玉を凌駕して高値圏に浮上している銘柄も散見される。今のタイミングであれば、全体指数に連動しにくい中小型株への投資が有効であろう。 ここは半導体関連復権のプロローグを捉えたいところだ。今回のトップ特集では、足の速い好実態株に照準を合わせ、業績面や成長力を吟味してここからの上値余地が大きいと思われる7銘柄を厳選エントリーした。 ●ここから中期で狙える7銘柄はこれだ ◎オキサイド <6521> [東証G] オキサイドは酸化物単結晶の製造を手掛けるほか、レーザー光源、光計測機器、光デバイス開発などで独自技術を有し、海外売上高比率が8割以上を占めるグローバルニッチトップ企業として存在感を示す。M&A戦略を駆使して宇宙・防衛分野などへも活躍領域を広げている。半導体検査装置用の紫外レーザーなどで受注実績が豊富なほか、次世代半導体材料と目されるβ型酸化ガリウムでは昨年のセミコン展で同基板のサンプルを展示している。量子コンピューター分野でも中継器向け光関連デバイスなどで実績を示し、量子通信や量子センサー分野での技術革新に向けて鋭意研究を進めている点は見逃せない。業績は利益急回復トレンドに突入しており、26年2月期の営業利益は前期比3.2倍の4億900万円を予想している。なお、売上高については今期で8期連続の過去最高更新が見込まれている。株価は週足でみればまだ底離れの初動。年初来高値1673円クリアは時間の問題か。 ◎A&Dホロンホールディングス <7745> [東証P] A&Dホロンは産業用計測機器を手掛け、高精度の技術を強みに幅広い業界へ多彩な商品を提供する。また、半導体装置メーカーのホロンを完全子会社化したことで展開力が大幅に強化されている。特に電子ビーム技術を生かした半導体測定などで実力を発揮し、走査型電子顕微鏡の応用装置で主力製品となっているCD-SEMでは大手半導体メーカーを中心に顧客ニーズを捉えている。25年3月期営業利益は前の期比11%増の88億1300万円と2ケタ成長で過去最高更新基調を継続。また、26年3月期も前期比8%増の95億円を見込む。PER7倍台は成長力を考慮して評価不足が歴然だ。28年3月期を最終年度とする中期経営計画では営業利益段階で117億円、配当性向30%を数値目標に掲げる。5月14日の2008円の戻り高値形成後に調整しているが、2000円手前のもみ合い局面は仕込み場と判断され、早晩2000円台を地相場に上値指向が見込めそうだ。 ◎アドテック プラズマ テクノロジー <6668> [東証S] ADプラズマは半導体製造装置向けを主力に高周波プラズマ用電源装置に特化したメーカーである。ニッチ性の高い分野で業界トップクラスの商品シェアを有するが、とりわけGPUと並びAI用半導体として高水準の需要があるHBM(高帯域メモリー)向けで受注を伸ばし、中期的な成長期待も大きい。25年8月期は営業利益段階で前期比27%増の18億9000万円を見込むなど回復色が鮮明だ。8倍前後のPERに加え、PBRも0.8倍近辺で株価指標面からも水準訂正余地の大きさが意識される。株価は今年2月に1528円の年初来高値形成後に高値圏でのもみ合いを経て、下放れる格好を余儀なくされた。しかし、時価は売り物がこなれ再浮上に向けた動きを明示している。テクニカル的には1300円近辺に位置する75日移動平均線をブレークすれば戻り足に弾みがつきそうだ。22年に3335円の高値をつけた実績があり、時価は長期波動でみて底値買い好機に。 ◎ニレコ <6863> [東証S] ニレコは製造プロセスで必須となる産業用制御装置や計測・検査装置などの研究開発及び製造を手掛ける。高度な技術力を武器に 半導体製造装置向けを主力としたレーザー装置や光学部品などのオプティクス事業でも需要獲得が進んでいる。25年3月期は営業利益が前の期比38%増の19億700万円と急拡大を果たした。その反動もあって26年3月期は前期比3%減の18億5000万円を同社は予想するが保守的。前期も会社側見通しから大きく上振れて着地しており、今期も同様の結果となる可能性がある。また、株主還元に前向きで配当利回りは5%近くに達し、自社株買いにも積極的な姿勢を示す。10倍を切るPERや0.8倍のPBRなど割安さが際立ち株価の上昇余地は大きい。時価は1700円近辺を横に走る75日移動平均線とのマイナスカイ離を解消した後、更に強含みで推移。大勢2段上げで、まずは2月7日の年初来高値1929円奪回が有望視される。 ◎マルマエ <6264> [東証P] マルマエは半導体製造装置向けを中心に精密部品の製造を行っている。真空パーツなどの一貫生産体制を強みとしており、主力商品である真空チャンバーや電極などをはじめ商品競争力が非常に高く、半導体受託生産世界最大手のTSMC や、国内では半導体製造装置で世界屈指の東京エレクトロン <8035> [東証P]を主要顧客としていることからもその実力が証明されている。受注残高が急増傾向にあるなか、25年8月期の業績は目を見張る急回復が見込まれており、営業利益段階で前期比10.3倍の16億円を予想している。26年8月期も高水準の利益成長が期待され、22年8月期のピーク利益に肉薄する可能性もある。株価は4月上旬を大底にリバウンドに転じているがまだ初動。5月15日に1321円の戻り高値形成後は押し目を形成しているが、25日移動平均線との上方カイ離を解消し再浮上の機が近い。累積売買代金が厚い1600円近辺までの戻りは早そうだ。 ◎ダイトロン <7609> [東証P] ダイトロンはエレクトロニクス商社で半導体をはじめとする製造装置で優位性を持つ。高いマーケティング能力に加えメーカー機能も併せ持ち、技術立社を標榜するだけあって、半導体製造装置のほかスイッチング電源、ワイヤーハーネス、コネクター、光部品など数多くの自社開発品で実力を発揮する。25年12月期の営業利益は前期比2%増の63億5000万円予想と最高益更新が続く見通しだが、更なる上振れ余地がある。なお、今第1四半期(25年1~3月)はAI・IoT関連の設備投資ニーズを取り込み、営業利益が前年同期比4割を超える伸びを達成した。PER8倍台と割安なほか、配当性向を引き上げるなど株主還元に前向きに取り組んでおり、配当利回りも4.5%前後と高い。株価は24年4月につけた上場来高値3665円奪回をにらむ位置で頑強な値動きを続けているが、早晩ここをクリアして青空圏に浮上し、4000円台替えに向けた強調展開が期待できる。 ◎萩原電気ホールディングス <7467> [東証P] 萩原電気HDは名古屋を営業地盤とするエレクトロニクス商社で、主に自動車関連企業を対象に半導体などを取り扱う。近年は自動車のエレクトロニクス武装が一段と加速しており、自動運転をはじめとする評価環境構築や受託開発分野で同社のビジネスチャンスは増勢一途となることが予想される。そうしたなか、同社は米スタートアップなどと連携して車載決済分野への取り組みに注力している。昨年12月には既存のEV充電機器に対し、位置情報に基づく車載決済システムを国内で初めて開発に成功したことを発表している。業績もトップラインを筆頭に堅調で、26年3月期は前期比4%増収となる2700億円を見込み、これは5期連続で過去最高更新となる。営業利益も前期比6%増の75億円と24年3月期のピーク利益に迫る見通しだが、増額修正余地も内包。株価は3200円近辺で踊り場を形成しているが、早晩上放れ3000円台後半を指向する動きが想定される。 株探ニュース