「AIバブル崩壊説」を吹っ飛ばす、先端技術で輝く生成AI関連 <株探トップ特集>
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―「幻滅期」突入も、強気相場は悲観のなかに生まれ懐疑のなかで育つ― 昨年辺りから流布されている「AIバブルの崩壊」説だが、果たして本当に凋落の道程を歩んでいるのだろうか。そもそも日本人は、「バブル崩壊」という言葉に非常に敏感だ。1990年代に起きたバブル経済の崩壊、そして2000年辺りのITバブル崩壊も深い爪痕となって投資家の記憶に残る。近年は“生成AI狂騒曲”が鳴り響くなか、関連株が上昇波に乗って相場を牽引してきた。それが、過剰ともいえる期待からの「幻滅期」に入ったとの見方が広がると「生成AI バブルの崩壊か」と危ぶむ声につながった。しかし、AIの進化は人智をはるかに超え膨大な需要を喚起、さまざまな先端技術と合わせ社会実装されることで未来を確実に引き寄せている。強気相場は悲観のなかに生まれ、懐疑のなかで育つ……生成AIで技術力を発揮する関連株のいまを点検した。 ●ディープシーク・ショックも懸念を助長 米国の新興企業オープンAIが、22年11月にリリースした「チャットGPT」は、世界に鮮烈な衝撃を与え、スターダムにのし上がる銘柄を相次ぎ輩出した。生成AIを活用することで、実生活でも幅広い用途で効率化や最適化が急速に進んでいるが、AIの進化は想定以上に速い。チャットGPTのリリースから約2年半が経ち、AIの活躍の舞台には「生成AI」に続き「AIエージェント」が主役の座を目指し登場している。AIエージェントは、自律的なAIシステムとされ、従来のAIや生成AIと比較して高度な効率化や自動化が可能となることで、生産性向上につながると期待されている。 こうしたなか、株式市場は今年1月に“ディープシーク・ショック”に見舞われることになった。低コストなうえ高性能といわれる中国企業の「ディープシーク」が開発した生成AIが彗星のごとく登場したことにより米国市場では半導体株などが大きく売られた。幻滅期説に加え、これが崩壊懸念を更に助長することにつながった。 ●手当たり次第に買える時代は終わった 群雄割拠のAI市場で崩壊論がまことしやかに広がるが、市場関係者はどうみているのだろうか。東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「生成AIバブルの崩壊という見方は妥当ではないが、株式市場でAI関連の範疇にあれば手当たり次第に買えるような時代は終わった。基本的には時価総額がそれなりに大きく既に利益を上げていて、PERなどバリュエーション論議の対象となる銘柄が投資ターゲットとなる。グロース市場に上場している銘柄がダメということでは決してないが、仮に一つ条件を挙げるなら、プライム市場に上場する銘柄で既にマーケットで広く認知されているものが望ましい。例えば時価総額900億円台のPKSHA Technology <3993> [東証P]のような銘柄であれば買い安心感もある」という。また「AI関連とひと口に言っても、AI用半導体メーカーのようなハード分野に展開する企業にとっては、ディープシークのような高性能低価格AIモデルの開発が相次ぐなか、設備投資や開発コストが商機と見合わないケースも今後は多く出てくる。やはり、AIソリューションを展開するソフト系の企業の方が、テーマ買いの対象として優位性があるだろう」と指摘する。 ある証券ジャーナリストにも意見を求めたが、「暴落、崩壊……マスメディアは大好物だから」とにべもない。彼曰く「崩壊は、してみなければ分からない」。 決算シーズンが一巡したが、株式市場では生成AI分野で稼ぐ企業も目立った。前述のパークシャは、生成AIの登場により同社の強みである自然言語処理技術の適応範囲が拡張し、パートナー企業からのニーズに対応したアルゴリズムソフトウエアの研究開発やソリューション案件が継続して増えていることが業績に寄与している。14日に発表した25年9月期第2四半期累計(24年10月~25年3月)連結決算は、最終利益で前年同期比51.8%増の21億3100万円に拡大し、通期計画の26億円に対する進捗率は82%に達した。 ●商機捉えるユーザーロカ、アヴィレン、ラボロAI 生成AI技術が急速に発展するなか、ユーザーローカル <3984> [東証P]のビッグデータ・AIを活用したクラウドサービスへのニーズが一層高まっている。8日には、25年6月期の単独業績予想について、営業利益を18億4400万円から19億3400万円(前期比12.0%増)へ上方修正している。4月には、INPEX <1605> [東証P]に自社内で簡単かつ安全にチャットGPTなど生成AIを利用できる「ユーザーローカル ChatAI」を提供開始したことを発表。3000人の社員が利用可能な環境を実現している。 AIソリューションを手掛けるAVILEN <5591> [東証G]は、生成AI需要の急速な拡大を追い風に収益機会を高めている。株価も急速人気化しており投資家の熱い視線を集めている。13日取引終了後に発表した25年12月期第1四半期(25年1~3月)連結決算は、営業利益が1億1900万円で着地。前年同期は単独決算のため単純比較はできないものの、実質2.8倍化した。高速で高精度なボイスボットの展開や業務プロセスの完全自動化を目指す帳票処理AIエージェント「帳ラク」など最先端のソリューションの開発をはじめとして、生成AIビジネスに注力している。 オーダーメイド型AIソリューション「カスタムAI」の開発を手掛けるLaboro.AI <5586> [東証G]も業績好調だ。12日取引終了後に発表した25年9月期中間期(24年10月~25年3月)単独決算は、生成AIやエージェントAIへ注目が集まるなか企業の積極的なAI投資案件を取り込み、営業利益が前年同期比3.1倍となる2億500万円と急拡大した。 ●エクサWiz、リッジアイは顧客ニーズ捉える 良好な事業環境を背景に、関連企業は新たな戦略とソリューションで顧客ニーズを捉えようと懸命だ。こうしたなか、エクサウィザーズ <4259> [東証G]のチャットGPTサービス「exaBase 生成AI」は、導入社数が827社(25年3月時点)を突破するなど好調に推移。ここにきては、相次ぎ提携を発表しており、さまざまな企業との協力体制を強めている。昨年8月には東北電力 <9506> [東証P]と業務提携し、今年4月にはその第1弾として、東北・新潟における生成AIサービスの本格提供を開始すると発表。5月に入っても、1日にふくおかフィナンシャルグループ <8354> [東証P]との業務提携、14日にはNTTコミュニケーションズ(東京都千代田区)とAIサービスやプロダクトの販売加速を目指し販売店契約を締結したと発表。幅広い業務や業態で活用できるエクサWizの生成AI製品を、NTTコミュニケーションズが持つ営業力・販売網を活用して拡販していく予定だ。 Ridge-i <5572> [東証G]は、AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を行うが、生成AIテーマの案件が増加するなか、高付加価値化と専門性強化の両面で先進的なポジションを構築している。3月に発表した25年7月期第2四半期累計(24年8月~25年1月)の連結決算は、営業利益段階で2億円(従来予想1億1500万円)と計画を上回って着地。生成AIの大型コンサル・開発案件を数多く受注したほか、人工衛星データAI解析サービスでは国土地理院や宇宙航空研究開発機構(JAXA)など官公庁からの新規案件の受注が業績に寄与した。なお、25年7月期通期は営業利益段階で2億3000万円を計画している。 世界185の国と地域でつながる IoTプラットフォームを提供するソラコム <147A> [東証G]だが、生成AI分野にも活躍領域を大きく広げている。9日には、大塚ホールディングス <4578> [東証P]グループで医薬品・食品・飲料・日用品などの物流を担う大塚倉庫と、カメラと生成AIを活用した倉庫の侵入検知システムを共同開発したと発表し注目を集めている。ソラコムのIoTアプリケーションをローコードで開発できるサービス「SORACOM Flux(ソラコムフラックス)」を活用したことで、短期間で生成AIを使った侵入検知の仕組みの高度化を実現した。生成AI×IoT(AI of Things)の推進を目指す。 ●超高齢化社会が到来で活躍期待高まるeWeLL eWeLL <5038> [東証G]の、訪問看護用の電子カルテシステム「iBow(アイボウ)」がニーズを捉え好調だ。今月15日には、全国770超の拠点を展開する介護大手のツクイ(横浜市港南区)に、iBowが導入されたことを発表している。昨年4月には、生成AIで計画書を自動作成する「AI訪問看護計画」をリリース、10月には国内初の生成AIを活用した訪問看護報告書の自動作成機能を提供開始するなど、超高齢化社会が到来するなか更なる需要の拡大が見込まれる。25年12月期は、単体営業利益で前期比31.6%増の14億9400万円を計画し過去最高益更新を予想する。 そのほかでは、日本初となる日本市場に特化したAIアバター動画生成サービス「AvaMo」の提供を開始したベクトル <6058> [東証P]にも注目。プロ品質の広告動画を瞬時に作成できるだけでなく、制作期間・制作費ともに最大98%削減を実現するといい、今後の動向から目が離せない。また、業種特化の専門AI開発・運営を行うメタリアル <6182> [東証G]にも目を配っておきたい。大手顧客を中心に生成系AIやAIエージェントを活用した専門分野でのソリューションを続々提供しており、大型受注にもつながっている。 株探ニュース