「高校無償化」が一大契機、教育業界の地殻変動で「学習塾」関連株が急浮上 <株探トップ特集>
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―教育関連のゆとり資金は塾や習い事に向かう、個別指導や学習支援などに追い風― 少子化が進む日本だが、子どもの 教育にかける熱意は依然として高い。高校授業料を実質的になくす「高校無償化」に対する賛否の声が飛び交うものの、それによって家計に生まれたゆとり資金が、 学習塾や習い事へ投資されるとの見方が有力となっている。教育業界が大きな構造転換の局面を迎えるとともに学習塾などの関連株には投資チャンスが生まれている。 ●今春の公立高校に続き来年4月から私立高校が実質無償化に 総務省が4日に発表した2025年4月1日時点の15歳未満の子どもの数は、44年連続で減少し1950年以降での過去最少を更新した。国家的課題としての少子化は認識されながらも、有効打が見いだせないまま、長い時間が過ぎてしまったのが日本の現状といえるだろう。 しかし、政府もこの状況に歯止めをかけるべく対策を打ち出しており、結婚支援に加え、子育て世代への負担軽減を目的とした施策に力を入れている。足もとで大きなトピックになっているのが「教育費の軽減」である。4月からは公立高校の授業料を実質無償化し、26年4月からは私立高校も含まれる予定だ。従来の世帯の所得制限が撤廃され、全国の私立の平均の授業料である約45万7000円を上限とする。授業料が政策支援によって大きく軽減されることによる浮いた教育費の行き先が関心を集めている。 その受け皿として熱視線を浴びているのが、学習塾や習い事業界だ。情報技術の進化とともに、社会全体が過去とは明らかに異なるスピードで進化するなか、「子どもにより多くの経験を」「将来の進路の選択肢を広げてあげたい」という親の意欲が高まっている。基礎的・汎用的な学力を身に付けるための学習塾はもちろん、音楽・言語・スポーツ・プログラミング・伝統文化といった多種多様な習い事ができる環境になっていることも追い風だ。加えて、共働き世帯が当たり前となっており、放課後や親が疲れて動けない休日に有意義な時間を過ごさせたいというニーズもあり、家庭での教育がサービスに置き換わる傾向は強まる一方だろう。 ●少子化のなか1人の子どもにかかる期待と投資は拡大傾向に ただし、制度面では課題も少なくない。全国知事会は「公立離れ」の進行に伴う地域全体の弱体化に警鐘を鳴らしている。そこで知事会は公立高校に対しても、施設整備や教育のデジタル化の推進、教員体制の拡充といった抜本的支援を求めている。また、私立高校側にも課題が指摘されている。実質無償化に便乗して授業料を値上げする事例や、本質的には既に破綻しているにもかかわらず、外国人留学生を収益源として過度に受け入れて延命しているようなケースも見られ、一律の無償化に対して見直しを求める声もある。しかし、少子化社会の中で、1人の子どもにかかる期待と投資が大きくなっていくのは必然であり不可避だ。塾・習い事業界への資金流入という足もとの現象は、子どもたちの未来を大人たちがどこに導くのかという、日本社会が抱える大きな問題と直結しているのではないだろうか。以下では、「学習塾」関連の銘柄に焦点を当てた。中小型株を中心に、個別指導塾や学校への学習支援、講師派遣などの教育事業を行う企業を中心に紹介する。 ●サクシードや学研HD、リソー教育、POPERなど注目 サクシード <9256> [東証G]~教育、保育、福祉に関する人材の紹介・派遣・業務委託など、人材に関する事業を展開。個別指導教室事業では、「個別指導学院サクシード」を神奈川県中心に関東圏で運営し、教育人材支援事業では、学校法人や大手進学塾に対する人材派遣・紹介を行う。 学研ホールディングス <9470> [東証P]~学研教室や進学塾の運営、書籍の出版などを展開する。学研教室では、短時間集中学習方式を採用。学力の確実な定着を図り、定期テストや大学入試に備える。教育支援では、関東を中心に展開する自治体や公的機関から委託を受けての、学力向上・学習支援事業のほか、講師BANKでは求職者と教育事業をつなぐ、高精度なマッチングサービスとして、学習塾・教育事業者向けの人材ソリューションを展開している。 リソー教育 <4714> [東証P]~ハイレベルな進学指導を行い、難関校への高い合格実績を出している完全個別指導の進学塾「TOMAS」を運営する。「生徒1人に講師1人」という環境にこだわっており、内部進学対策から中・高・大学受験対策まで、学力レベルに合わせて最適な教材を選定。「スクールTOMAS」では、TOMASのノウハウをもとに公・私立中高に対して、学校内完結型の放課後学習サポートを行う。 ウィザス <9696> [東証S]~グループで高校大学事業、学習塾事業、キャリア支援事業を運営。小・中・高校生を対象とした受験指導の学習塾を運営する「佑学社」や地域密着型の学習塾を運営する「京大ゼミナール久保塾」、学校教育に関する支援、指導、情報提供及びコンサルティング業務を行う「カルぺ・ディエム」などを傘下に有する。更に、「MANABI」では学習塾の運営及び経営、学習塾への講師派遣事業などを行っている。 リンクアンドモチベーション <2170> [東証P]~経営学・社会システム論・行動経済学・心理学などの学術的成果を取り入れた経営コンサル会社。社会人教育のノウハウを教育、受験業界に応用した学習塾「モチベーションアカデミア」を運営。社会人の目標達成プロセスとして用いられる「PDCAサイクル」を成績アップ・志望校合格への学習プランニング・習慣づくりに活用。 POPER <5134> [東証G]~教育機関向けに業務管理プラットフォームを提供。保護者との関係を構築する「コミュニケーション機能」と、塾の運営を効率的にする「業務改善機能」を備えた、塾・スクール専用のコミュニケーション&業務管理システム「Comiru」を運営する。塾・スクール専用口座振替サービス「ComiruPay」は、リリース3カ月で導入教室は140校を突破している。 株探ニュース