桂畑誠治氏【日経平均3万8000円台視野、更なる上昇はあるか】 <相場観特集>

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コラム

―米関税政策による世界経済への影響と株高基調の持続性は―

 12日の東京株式市場は、根強い買いが続き日経平均株価は利益確定売りをこなし続伸した。トランプ米政権が打ち出す高関税政策に世界は揺れているが、目先は米中間の交渉においてお互いに関税率を90日間、115%引き下げるという共同声明が発表された。今の株価水準は戻りいっぱいかそれとも一段の上昇が見込めるのか、ここからの相場展望について、第一生命経済研究所の桂畑誠治氏に話を聞いた。

●「3万9000円台への戻りはあっても上値限定的」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 週明けの東京市場ははっきりしない値動きとなったが、日経平均は3万7000円台後半まで上値を伸ばすなど、利益確定売り圧力をこなす展開を示した。市場を取り巻く環境は依然不透明感が強いものの、過度な懸念後退を背景にひと頃のように一方的に売り込まれるような地合いとはなりにくい状況にある。

 目先は米中協議で現地時間12日に共同声明が発表され、両国がいずれも90日間、関税率を115%ずつ引き下げることが決まった。90日間の延期期間中に交渉がどうなるかは予断を許さないが、米中間に歩み寄りの動きが見られることは確かである。また、グローバルでみても相互関税の上乗せ分について90日間延期の期限が7月9日に訪れるが、それまでに米国と他国との間で何かしらポジティブな話が出てくる公算は小さくなく、中期的な観点で相場にプラスに働きやすい。

 今週発表が予定される4月の米消費者物価指数(CPI)や4月の米小売売上高などについては、前者は伸び率が加速することが予想され、後者は前月比で鈍化することが見込まれる。だが、いずれも米国株市場には織り込み済みで、コンセンサスから大きなズレが生じない限り全体指数が波乱に見舞われる可能性は低い。もっとも、来月には米国への関税引き上げのデメリットがハードデータとして顕在化してくる5月の数字が開示されるため、その内容次第では投資家のセンチメントが冷やされるケースが考えられる。

 日経平均の向こう1ヵ月のレンジとしては、上値は目先3万8000円大台ラインを突破する場面が予想されるものの、3万9000円台が上限になるのではないかとみている。他方、下値に関しては3万7000円を下回り、3万6000円台まで深押しする可能性がありそうだ。

 物色対象としては自動車や半導体関連は目先戻り歩調をみせているが、今後米国から関税交渉などで日本側に妥協を求めてくる場合を想定すると、ここから上値を買い進むのはリスクも大きいであろう。内需の好業績株に目を向けておくところで、小売りや外食など消費関連セクターが投資対象としてはやはり安心感がある。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

株探ニュース

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