明日の株式相場に向けて=「Web空間」の銘柄群に大相場の気配

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 週明け12日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比140円高の3万7644円と続伸。TOPIXは2017年10月以来となる12連騰を記録。相場は理屈ではなく需給で動くというが、今の戻り足の強さは理屈では説明がつかない。ファンダメンタルズを考慮すれば、流れに追随して買いを入れることに躊躇するのが人情で、「押し目待ちに押し目なし」という相場格言が示す通りの動きに。AIアルゴリズム売買の影響も多分にあるが、乗れていない人が多いほど相場は上昇するという逆説的な真理を目の当たりにしている。

 市場では「日経平均3万9000円コールの売買がにわかに増えており、(SQ通過前は3万6500円のコールの厚さが話題となっていただけに)今の現実に驚くよりない」(ネット証券アナリスト)という声も聞かれる。しかし、これはある意味フラグが立っている印象も拭えず、3万9000円という高峰を前に踵(きびす)を返す可能性もそれなりに高い。

 米中ともに100%を超える関税をお互い続けることの不毛さは、人間なら誰でも分かることで、早晩修正が入ることは見えてはいたが、今回の協議で115%ずつ引き下げるという。前にも触れた話だが、市場関係者からは「関税が30%を超える水準になると中国は米国に製品を輸出することに意味をなさなくなる」という指摘がなされていた。今回これにピッタリと合わせた水準まで引き下げたのは、あまりにベタな合意だったが、その前の145%や125%という関税率は、まさに子供の罵り合いに等しかったことが証明された。劇場型のトランプ流ディールも、その過激さと同居する陳腐さに世界が気づいた場合、ヤレヤレムードで世界株市場の時価総額消失は免れても米国の信用失墜は加速しそうだ。

 今後の相場のカギを握るのは半導体関連株だ。「ここにきて信用買い残の整理が進んだアドバンテスト<6857.T>の戻りパフォーマンスをみると、これまでとは異質の強さがある。7600円どころを横に走る200日移動平均線がポイントで、ここをブレークするようであれば本物」(中堅証券ストラテジスト)という見方も示されていた。他方、きょうはトランプ米大統領が予告していた「重大発表」が思わぬ方向に展開され、流れ弾が飛んできた医薬品セクターは波乱安に見舞われた。トランプ氏は例によって、自身のSNSで医薬品の価格を大幅に引き下げるための大統領令に署名すると明らかにした。これにより、医薬品価格の薬価について即時に30~80%下がると表明している。アメリカ国民にとっては有難い話に聞こえるとはいえ、氏の傍若無人ぶりは今に始まったことではないものの、こういう業界全体を揺るがすような話をいきなり開示するというやり方は、さすがに度を超えている印象もある。今後も世界の憂鬱が続くことを暗示させる「重大発表」であった。

 きょうは内需セクターが弱いようにも見えたが、中身をみると好業績株を中心に投資資金の流入は続いている。投資対象はトランプ関税政策に振り回されず、地政学リスクや為替相場の影響などを受けない内需株で、なおかつストック的要素の強い安定したビジネスモデルで業績好調なものが理想だ。この条件に見合う銘柄を決算発表通過組の中からピックアップしていくと、ネット系(Web系)の勝ち組銘柄が多いことに気付く。

 カード決済システムのトップで情報セキュリティー技術にも長じるインテリジェント ウェイブ<4847.T>の1000円トビ台は魅力的。陽線が多く年初来高値を早晩視野に置く可能性もある。また、AI活用の独自プラットフォームを駆使して企業のデジタライゼーションを支援するABEJA<5574.T>は、今8月期にトップラインが過去最高を更新し営業利益もV字回復を果たす見込み。75日移動平均線をメドに目先の押し目はマークしたい。また、量子コンピューター関連も米株市場でテーマ買いの動きが復活している。日本でも同関連に位置付けられるテラスカイ<3915.T>の戻り足に着目。顧客のDX投資需要を捉え、抜群の業績変化率を誇る。このほか、AI関連で飛躍的な収益成長を続けるユーザーローカル<3984.T>や、映像と音声に特化したミドルウェア許諾事業を手掛けるCRI・ミドルウェア<3698.T>なども上値期待が大きい。更にVチューバー関連で業績躍進中のANYCOLOR<5032.T>の上昇トレンドからも目が離せない。

 あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の「主な意見」(4月30日~5月1日開催分)、4月のマネーストックが朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に30年物国債の入札が行われる。主要企業の決算発表では日本製鋼所<5631.T>、フジクラ<5803.T>、ローム<6963.T>、サンリオ<8136.T>、ニトリホールディングス<9843.T>、ソフトバンクグループ<9984.T>などがある。海外では、4月の英失業率、5月の欧州経済研究センター(ZEW)の独景気予測調査のほか、4月の全米自営業者連盟(NFIB)中小企業楽観指数、4月の米消費者物価指数(CPI)などに耳目が集まる。なお、インドネシア市場は休場となる。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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