株高トレンド進行中! 展開材料満載の「民放株」を総ざらい <株探トップ特集>
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―株式配当が凄い赤坂の「不動産屋」と本業まい進の「ジブリ保有企業」、PBR1倍達成は「アニメ強者」のみ― 今年、ここまでの4ヵ月ほどの間に注目された銘柄といえば、AIや防衛、仮想通貨などトランプ米政権の誕生で政策期待が高まった分野から、日銀の金融政策に絡み銀行株、「スイッチ2」「ポケポケ」が話題のゲーム株までさまざま思い浮かぶ。足もとでは米政権への期待が警戒感に様変わりし、内需株に光が当たっている。こうしたなか、注目セクターとしてもう一つ外せないものがある。連日メディアで報じられ社会的な関心を集めたことが記憶に新しい、フジ・メディア・ホールディングス <4676> [東証P]をはじめとする民放株だ。 ●実は鴨川シーワールド運営 まずは民放株を巡る基本的な事柄を押さえておきたい。現在、大手5社を含む民放株はすべて「認定放送持株会社」という形で上場している。これは複数のテレビ局を傘下に置くことができる持ち株会社のこと。かつてはメディアの寡占化防止のため、単一の企業が複数局へ出資してグループ化することは規制されていたが、インターネットの台頭で環境が変化するなか2008年に規制が緩和され、制度として導入された。 これにより、大手を中心に系列局をグループ化する形で次々と持ち株会社体制に移行。第1号はフジHDで制度開始のその年に移行した。この制度では業界内の出資規制は緩和されたが、持ち株会社に対する外部からの出資には厳しい制限が2つ設けられた。一つは外国人の議決権割合を20%未満とすること、もう一つは一株主が保有できる議決権を原則3分の1以下とすることだ。制度開始の数年前に「ライブドア騒動」や楽天のTBS株大量取得があったが、こうしたテレビ局買収の動きを起こすことは事実上不可能となった。 さて、各局それぞれの事業内容や業績をみていこう。まずはフジHDから。同社は不動産 が稼ぎ頭であることで知られる。事業内容は大まかに「メディア・コンテンツ事業」、不動産部門にあたる「都市開発・観光事業」の2つに分けられる。メディア部門はフジテレビジョンを軸にニッポン放送、ビーエスフジ、映像・音楽会社のポニーキャニオンらで構成され、動画配信 サービス「FOD」などを手掛ける。一方、不動産部門はサンケイビルと、15年に買収したグランビスタホテル&リゾート(旧三井観光開発)が柱。グランビスタでは水族館の運営も行っており、「鴨川シーワールド」は有名だ。利益構造は全体(24年3月期営業利益約335億円)の中でメディア部門(約157億円)より不動産部門(約195億円)のほうが多く、過半を占める。 同社を巡っては周知のとおり、元タレントの性暴力に端を発する一連の問題に揺れている。取締役刷新を含む経営改革の動きからは目が離せない。6月開催予定の株主総会に対する思惑が入り乱れ、株価は4月半ばに約23年ぶりの高値圏に浮上する場面があった。 ●あの半導体関連企業の大株主に 不動産を稼ぎ頭とする民放株はもう一つある。TBSホールディングス <9401> [東証P]だ。旧本社跡地を再開発した複合施設「赤坂サカス」を運営する。利益構造は全体(24年3月期営業利益約152億円)のうち、サカスを含む不動産部門(約71億円)が半分近くに及ぶ。現在、28年竣工を目指しサカス近辺で新たなプロジェクト「赤坂二・六丁目地区開発計画」を進めている。同社の場合メディア、不動産の2部門に加え、ライフスタイル部門を有する。雑貨店「PLAZA(プラザ)」や通販事業を手掛けるほか、23年に買収したやる気スイッチグループホールディングスを通じて学習塾を展開する。 また、同社において特筆されるのが政策保有株から得られる潤沢な配当収入だろう。設立に携わった経緯がある東京エレクトロン <8035> [東証P]の大株主であることで知られる。営業外収益の受取配当金(24年3月期は約120億円)はなんと営業利益の約8割に匹敵する。会社側は政策保有株を縮減して株主還元を強化する構えにあり、増配や自社株買いを推進。株価はここ数年で1000円台から5000円近辺まで急上昇した。 ●グループ傘下に「鷹の爪」、大手以外も注目 業界の雄、日本テレビ放送網を傘下に持つ日本テレビホールディングス <9404> [東証P]は本業のメディア部門の拡大にまい進する。アニメ 制作会社タツノコプロ、スタジオジブリの子会社化(14年、23年)によってIP強化を図り、米フールー日本法人の買収(14年)で動画配信に参入、更にウォルト・ディズニー・ジャパンとの戦略的協業(22年)で海外展開にも余念がない。利益構造は前述の2社と異なり、全体(24年3月期営業利益約419億円)の大半がメディア部門(約385億円)で、不動産部門(約43億円)の割合はわずかだ。今年4月には読売テレビ放送など主要系列4社を経営統合し、グループ体制の強化を図った。同社も政策保有株の売却を進め株主還元重視の姿勢に。株価もここ数年で1000円台から3000円台へ急上昇中だ。 テレビ朝日ホールディングス <9409> [東証P]も本業(放送部門)が業績に占める割合の多いテレビ局の一つだが、注目はそれに次ぐインターネット部門。サイバーエージェント <4751> [東証P]との共同事業であるネットテレビ「ABEMA(アベマ)」、KDDI <9433> [東証P]との共同事業である動画配信サービス「TELASA(テラサ)」を運営する。利益構造は全体(24年3月期営業利益約123億円)のうち放送部門(約60億円)が約半分を占めるが、続いてインターネット部門(約23億円)、ショッピング部門(約14億円)と並ぶ。株主還元の強化などを打ち出すなか、株価は約18年ぶりの高値圏に浮上している。 テレビ東京ホールディングス <9413> [東証P]はここまで取り上げてきた各局とは一線を画す。在京テレビ局では後発ながら特色ある番組作りで存在感を放っているが、同社の事業面の強みと言えばアニメ部門だ。また、コンテンツ配信にも強みがあり、アニメ・配信部門の利益(24年3月期約60億円)は放送部門(同約37億円)を上回る。同社は20年代後半にROE8%の実現を志向。配当性向は30%をメドとした上で中長期的に35%を目指す。株価はここ数年で1800円前後から足もと4000円近辺まで急伸。後述のテレビ局も含め、軒並み割安な民放株の中で唯一PBR1倍を達成している。 大手以外では在阪の朝日放送グループホールディングス <9405> [東証P]がある。主力は放送部門だが、もう一つのライフスタイル部門で住宅展示場やゴルフ場の運営、通販事業を展開する。同社はグループ傘下に「秘密結社 鷹の爪」を手掛けるアニメ制作会社ディー・エル・イー <3686> [東証S]を持つ。昨年、株式を一部売却して子会社から持ち分法適用会社化したが、それでも49.75%(24年9月時点)の持ち分を保有。過去、DLE株が人気化した際に同社にも物色が波及したことがある。 このほか、TBS系列で在名の中部日本放送 <9402> [名証P]、新潟放送を傘下に持つBSNメディアホールディングス <9408> [東証S]、RKB毎日放送を傘下に持つRKB毎日ホールディングス <9407> [福証]がある。23年に新潟放送が持ち株会社体制に移行してBSNHDとなり、これにより上場テレビ局はすべて「認定放送持株会社」となった。 株探ニュース