GW休暇は家族会議ラッシュ、内需成長型の「相続対策」関連株に刮目 <株探トップ特集>

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コラム

―高齢化進展で相談ニーズは拡大基調を継続、米関税政策に揺れる市場で安定感―

 今年のゴールデンウィークの連休で高速道路の下り線の渋滞が激しくなるのは、5月3~4日のようだ。混雑する日を避けて一足早く帰省先に到着し、家族団らんの時を過ごしている人もいることだろう。再会の喜びを分かち合った後で、相続の話題をどう切り出すべきか、頭を悩ませているシニアも一定の規模で存在するはずだ。高齢化が進展する日本において、相続対策の需要そのものは拡大を続けている。米国の関税政策でマーケットが大きく揺れる昨今、相続対策の関連銘柄には安定的に業績を拡大してきたところもあり、投資妙味を感じさせる。

●家計の現預金残高は過去最高の水準

 「そろそろ、土地のことを考えんといかん」。80歳となった筆者の父が切り出した。今年の正月休みのことである。筆者は3人きょうだいの末っ子で、地元を離れたのは私だけ。実家は細々と商売をしているが、父の代で廃業する予定だ。事業所とその敷地をどうするのか。長男と長女が近くにいる。跡地の活用策について「お前にも意見はあるだろう」と父はいう。都会に出て仕事中心の生活を長く続けてきた次男坊の自分に意見はない。そう伝えると「馬鹿たれ」と叱られた。きょうだい同士、悔恨を残さぬようにしっかり話し合ってほしいという、願いがあってこそなのだろう。家族の間での意思疎通が上手く進まず、合意が得られぬまま相続が行われた場合には、「争続」に発展する恐れがある。

 ゴールデンウィークの大型連休は家族が一つの場所に集まることができる貴重な機会となる。大型連休後の相談需要を捕捉しようと、テレビやラジオでは、相続関連サービスを展開する税理士法人などのコマーシャルが盛んに流れている。国税庁のまとめによると、2023年の相続税の課税価格は前の年に比べ4.6%増の21兆6335億円。課税額は同7.4%増の3兆53億円となり、増加の一途をたどっている。相続財産の内訳をみると、「現金・預貯金等」が35.1%、「土地」が31.5%、「有価証券」が17.1%だ。

 また、日銀が今年3月に公表した資金循環統計によると、24年末時点で家計部門が保有する金融資産残高は同4.0%増の2230兆円と、過去最高となった。相続税課税額の増加基調が続くと見込まれるなかにあって、高齢化も進展しており、相続対策に関連する市場自体も一段と拡大する公算が大きい。

 相続対策のニーズに応じる企業としてまず挙げられるのが、銀行をはじめとする金融機関だ。三井住友トラストグループ <8309> [東証P]傘下の三井住友信託銀行、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]の三菱UFJ信託銀行、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]のみずほ信託銀行のほか、地方銀行や証券会社も相続対策の支援などを行っている。金融関連にとどまらず、相続対策の需要拡大を追い風に事業を成長させた企業、あるいは成長余地を持つ上場企業はそれなりに存在する。トランプ米政権の関税政策を巡る不透明感が金融市場に漂うなかで、内需型の成長株として、投資家の資金を集めるシナリオも見込めるだろう。代表的な関連銘柄をいくつかピックアップしていく。

●青山財産は連続最高益更新を計画

 青山財産ネットワークス <8929> [東証S]は、資産家や企業オーナーなど富裕層向けを強みに財産コンサルティングを展開。不動産小口化商品の開発・販売も行う。昨年11月に相続税申告や手続き、不動産売却など関連サービスを展開するチェスターグループの企業との経営統合と、同グループの税理士法人などとの業務提携を発表。財産コンサル事業でのシナジーを創出し更なる成長を図る方針だ。25年12月期は連続最高益更新を計画。今年3月時点で英アセット・バリュー・インベスターズが「純投資及び重要提案行為などを行うこと」を目的として7.19%を保有している。スタンダード上場銘柄ながら時価総額は500億円弱とあって、プライム市場への移行に踏み切れば、パッシブ系ファンドからの資金流入を誘う格好となりそうだ。

 鎌倉新書 <6184> [東証P]はお墓や葬祭に関するポータルサイトとともに、相続に強い専門家を紹介するサイト「いい相続」や、相続不動産に関連する事業を運営する。28年1月期に売上高127億円(25年1月期は70億6100万円)、営業利益26億円(同9億1000万円)に伸ばす目標を掲げる。相続領域が関わるアセットマネジメント事業では提携事業者の拡大などを背景に成約率は大きく改善。お墓や介護、相続を含めた各領域でのクロスユースを拡大させる方針で、官民連携による終活セミナーの実施自治体数について今期は5倍以上に拡大するという。26年1月期の年間配当予想は前期と横ばいの20円としたが、それでも配当利回りは4%を上回る水準にある。

 タスキホールディングス <166A> [東証G]は投資用賃貸マンションの販売を主力事業とする。東京23区で駅近特化の用地に焦点を絞り、富裕層の相続税対策に有効な物件を提供する。24年4月に新日本建物と経営統合し、25年9月期は前期比で売上高6割増、最終利益は2.1倍を計画。第1四半期(24年10~12月)においては子会社が展開する資産コンサルティング事業が好調に推移した。グロース銘柄だが時価総額は足もとで360億円弱。最短で26年9月期にプライム市場へ移行する方針を明らかにしている。配当利回りは5%を超える水準。株価は年初来で20%を超す下げとなっているものの、4月7日の全体相場安に連れて500円台半ばまで急落した局面ではすかさず押し目買い需要を集めた。

●ユカリアは相続コンサル事業会社を買収

 ユカリア <286A> [東証G]は病院経営支援を軸としてM&Aなどにより業容を拡大。介護施設運営を手掛ける子会社とともに、コンタクトレンズの製造・販売を手掛けるシンシア <7782> [東証S]を傘下に抱える。25年12月期の売上高は前期比19.6%増の237億2100万円、最終利益は同28.7%増の26億800万円と大幅な増収増益を計画。医療機関を主力として高いキャッシュフロー創出力を誇り、M&Aを通じた更なる事業規模の拡大が期待される同社だが、今年3月には不動産相続コンサルティング事業を手掛けるGplusを買収。シニア関連事業へのシナジー発揮が期待される。

 エスクロー・エージェント・ジャパン <6093> [東証S]は金融機関に対するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)や、不動産・建築ソリューションを展開。株価100円台の低位株である。28年2月期に売上高を62億円(25年2月期47億4100万円)、営業利益を10億円(同4億8200万円)に伸ばす目標を盛り込んだ中期経営計画を今年2月に発表した。金融機関向けビジネスでは相続・終活サービスの拡大による収益押し上げ効果を見込む。

 このほか、関連銘柄として、相続対策として活用される不動産小口化商品を取り扱うADワークスグループ <2982> [東証P]やアズ企画設計 <3490> [東証S]、保険や金融商品、住宅ローンのコンサル販売とともに終活・相続サポートを提供するブロードマインド <7343> [東証G]、相続対策の選択肢となるトランクルームのストレージ王 <2997> [東証G]やパルマ <3461> [東証S]などをマークしたい。



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