再生可能エネの主力電源化で活躍、「系統用蓄電池」関連株 が急浮上 <株探トップ特集>

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コラム

―太陽光や風力の比率上昇で高まるニーズ、国や東京都の後押しで市場は更に拡大へ―

  再生可能エネルギーの主力電源化を支える重要なインフラとして、電力の安定供給を支える「系統用蓄電池(蓄電所)」が注目を集めている。太陽光や風力といった発電は天候や時間帯によって発電量が変動しやすく、再生可能エネの導入を進めるには大規模なエネルギー貯蔵と柔軟な電力供給を可能にする蓄電池が必要となるためだ。このほど資源エネルギー庁が今年度の「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」の公募を開始したのをはじめ、東京都もシステム導入に向けた取り組みを後押ししており、市場の更なる拡大が見込めることから関連銘柄をマークしておきたい。

●電力市場で収益を獲得できるメリットも

 電気を各地に送るための送電網・配電網のことを「電力系統」と呼び、この電力系統(発電所・送電線・変電所・配電設備などの電力ネットワーク)に接続して充電と放電を行う大規模な蓄電池が「系統用蓄電池」だ。 蓄電池には家庭用や業務・産業用として需要家側に設置される定置用蓄電池などさまざまな種類があるが、他の蓄電池が主に特定の施設や機器のために使用されるのに対し、系統用蓄電池は電力系統全体の安定化への活用を目的としている。系統用蓄電池は大規模な容量を持つことから電力市場での取引に参加でき、運用して収益を上げることもできるため、新しい電力ビジネスとして関心を集めている。

 政府が2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画では、2040年度の国内発電電力量に占める再生可能エネの割合を40~50%程度(23年度実績は22.9%)に引き上げ、初めて火力発電を上回る最大の電源とする方針が示された。内訳は「太陽光」が23~29%程度(同9.8%)、「風力」が4~8%程度(同1.1%)、「水力」が8~10%程度(同7.6%)など。政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」という目標を実現するためには、再生可能エネの導入拡大と電力供給の安定化が欠かせず、系統用蓄電池が果たす役割は大きい。

●需要拡大を見据えて新規参入続々

 今後の需要拡大が見込まれるなか、系統用蓄電池事業に新規参入する動きが相次いでいる。直近では多摩川ホールディングス <6838> [東証S]が7日、再生可能エネ事業を担う子会社の多摩川エナジー内に、系統用蓄電所事業調査・検討準備室を立ち上げると発表した。まずは調査・検討を行い、系統用蓄電所開発候補地の選定、蓄電所システムの購入・設置・稼働など、ビジネスモデル構築に向けた検討・準備を進めるとしている。

 また、ADワークスグループ <2982> [東証P]は3日、子会社のエー・ディー・ワークスが新規ビジネスとして系統用蓄電所事業に参入すると発表した。既に用地及び蓄電設備の売買契約、事業で必要となる近隣の地上権設定契約が完了しており、年内に工事を終わらせて26年1月にも第1拠点の稼働を開始する予定。また、並行して第2、第3拠点の用地検討も進めるという。

 このほかグリーンエナジー&カンパニー <1436> [東証G]は1日、系統用蓄電池事業に関する研究・検討を共同で行ってきたクローバー・テクノロジーズ(大阪市西区)が設立したGREEN ACTIONを子会社化した。GREEN ACTIONは事業開始に向けて、クローバーから系統用蓄電池の制御装置、基幹システム、アグリゲーション(小規模な再生可能エネや需要家をひとつに束ねて効率的に管理すること)事業に関する技術及び関連資産が移管されており、同社からも同様の関連資産の移管を進めている。これにより、両社の技術とノウハウを結集し、事業の早期立ち上げと展開を加速する構えだ。

 ポート <7047> [東証G]は3月31日、系統用蓄電所事業への新規参入に向けた検証を開始すると発表した。既に本格参入検証のために3カ所で系統用蓄電所開発を進めており、すべて26年3月期の稼働を予定。同社では既存エネルギー領域の成約支援事業の更なる拡大に寄与するとしているほか、収益面では系統用蓄電所事業による収益はストック性の高い収益を見込めるためグループ全体での事業ポートフォリオの強化につながるとみている。

 アジア航測 <9233> [東証S]は3月1日、北海道南幌町で同社初となる系統用蓄電所の営業運転を開始した。これまで同社は自治体や企業に向けて脱炭素計画策定や再生可能エネ事業化に関するコンサルティング業務を展開してきたが、今後は再生可能エネ導入時の課題解決のカギとなる系統用蓄電池の導入・運用を支えていくとともに、余剰電力の活用を含めた実践的かつ有効な電力需給安定化に貢献していくという。

●ウエストHD、スターシーズなどにも注目

 これ以外の動きではウエストホールディングス <1407> [東証S]が22日、TMEIC(東京都中央区)と系統用蓄電池事業の開発に向けて業務提携したと発表。同社はTMEICの蓄電システム及びエネルギーマネジメントシステムを標準採用し、中規模案件の開発を全国20ヵ所で展開する計画だ。また、同社はテクノロジーズ <5248> [東証G]子会社のエコ革とも系統用蓄電池事業に関して業務提携している。

 シンデン・ハイテックス <3131> [東証S]は17日、千葉県旭市に系統用蓄電所を建設すると発表した。7月にも着工し、稼働は26年10月を予定。これにより、長期的に安定した収益の確保、蓄電池関連企業との関係強化による事業機会の創出、ノウハウの蓄積による他ビジネスとの相乗効果で、グループのサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX、企業及び社会の持続可能性の両立を目指す考え方)を促進する構えだ。

 テスホールディングス <5074> [東証P]は15日、子会社のテス・エンジニアリングがDEIバッテリーファンドアルファ(熊本県錦町)から系統用蓄電所のEPC(設計、調達、施工)の大口受注を獲得したことを明らかにした。受注金額は約40億円で、納期は27年12月を予定。この収益は27年6月期から28年6月期にかけて計上するとしている。

 スターシーズ <3083> [東証S]は15日、KDDI <9433> [東証P]グループのエナリスと秘密保持契約を締結し、系統用蓄電池事業の戦略的パートナーシップ構築に向けた協議を開始したと発表。同社は系統用蓄電池事業への取り組みを進めており、高度なアグリゲーション技術を持つエナリスとの連携を通じて、電力系統の安定化につなげるとともに、新たな収益源を確立させたい考えだ。

 加えて、中期経営計画のなかで系統用蓄電池事業の取り組み加速を掲げているインフロニア・ホールディングス <5076> [東証P]、サンヴィレッジ(栃木県足利市)と系統用蓄電池設置工事請負契約を締結したアイモバイル <6535> [東証P]、札幌市での蓄電所事業に参画するスパークス・グループ <8739> [東証P]、バンプージャパン(東京都千代田区)との共同出資で再生可能エネの普及や系統用蓄電池事業を行う「東京都海の森蓄電所」の建設を決めている上組 <9364> [東証P]なども関連銘柄として挙げられる。


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