経済成長と資源循環を両立、「サーキュラーエコノミー関連」本領発揮へ <株探トップ特集>
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―大阪・関西万博でもテーマのひとつ、環境問題を解決する手段として関心高い― トランプ米政権の関税政策が世界経済に深刻な影響を与えるとして金融・資本市場が混乱している。この日は米相互関税の第2弾が午後1時ごろに発動され、日経平均株価の下げ幅が1700円を超える場面があった。先行きが見通せないことから不安定な地合いが続くことが予想されるが、こうしたなかでも注目したいのが世界の潮流となっている「サーキュラーエコノミー(循環経済)」だ。資源・エネルギーや食糧需要の増大や廃棄物発生量の増加が世界全体で深刻化しており、資源の効率的・循環的な利用と付加価値の最大化を図る循環経済への移行は極めて重要な取り組み。13日に開幕する 大阪・関西万博では「サーキュラーエコノミーの実現(需要サイドの技術導入などによるごみゼロ、食品廃棄ゼロ、ファッションロスゼロの実現)」が掲げられており、関連銘柄に改めて注目したい。 ●国や東京都が本腰を入れ推進 政府は昨年12月、金属やプラスチックなどの廃棄物を循環資源として最大限活用しながら付加価値を生み出し、新たな成長につなげるサーキュラーエコノミーに関する関係閣僚会議を開き、移行加速化パッケージ(案)を取りまとめた。具体的には、資源循環ネットワーク・拠点の構築、使用済みのオムツや太陽光パネルリサイクルの推進、レアメタルを含む小型家電など地域の循環資源の回収・再資源化の促進、ASEAN(東南アジア諸国連合)の電子廃棄物の日本での再資源化体制の構築など。また、全市町村が参加する自治体フォーラムを創設し、全国的な資源循環の底上げを図るとしている。 これ以外にも東京都が今年3月、サーキュラーエコノミーへの移行とネイチャーポジティブ(2020年をベースラインとして30年までに自然の損失を止め回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること)の促進につながるファイナンスモデルの確立を目指し、これら領域の国内スタートアップなどへの投資に特化したファンドとして「循環経済・自然資本等推進ファンド」を創設したことを明らかにした。規模は60億円で、都が30億円、残りを民間が出資。30年2月ごろまで投資を順次実行する計画で、投資先の候補となる事業の例としてリチウムイオンバッテリーや太陽光パネルのリサイクル、食品廃棄物のバイオマス活用などを挙げている。 サーキュラーエコノミーは、資源・製品の価値最大化、資源消費の最小化、廃棄物の発生抑止などを目指すことから、環境問題を解決する手段のひとつとしても関心が高く、関連銘柄は国策を追い風にビジネス機会が広がりそうだ。 ●循環経済移行を見据えた動き続々 DOWAホールディングス <5714> [東証P]は3日、25年中に熊本県で環境・リサイクル事業拠点の新設を予定している子会社のDOWAエコシステムが、事業拡大を図るため栃木県小山市に新設される小山第四工業団地第二工区の工業用地を取得したと発表。既存顧客及び新規顧客の資源循環や脱炭素につながる製品・サービスのニーズの高まりを受けたもので、将来的に大量発生が見込まれる使用済み太陽光パネルのリサイクルやバイオコークスなどのバイオマス固形燃料の製造などの新規事業展開を計画しているという。 アミタホールディングス <2195> [東証G]は3月、京都府亀岡市と「かめおか未来・エコロジックミュージアムプロジェクト事業連携協定」を締結した。同市における地域持続可能社会への移行戦略を策定するほか、互助共助に基づく資源回収ステーション「MEGURU STATION」の設置による同市全域の資源循環などで協力する。同社は循環資源(廃棄物を原材料にしたリサイクル資源)を製造・提供するアミタサーキュラーの姫路循環資源製造所の敷地内に、自動制御システムを導入した次世代型工場の新設も決めており、生成AIなどを利用してサーキュラーエコノミーを促進するデジタルシステム「サーキュラー4.0」の実装を目指す構えだ。 TREホールディングス <9247> [東証P]は3月、子会社のリバーが東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区)及び東芝環境ソリューション(横浜市鶴見区)と太陽光リユースパネルの有効性について共同で実証を行うことで合意したと発表。3社が連携して実証を行うことで、リユースパネルの活用に向けた取り組みを加速させたい考えだ。また、2月にはグループのタケエイが、瑞光 <6279> [東証P]や山形大学工学部などと「一般廃棄物リサイクル技術推進に関するサーキュラーエコノミーパートナーシップ」を締結しており、地域の特性を生かした循環経済圏の構築を目指すとしている。 新日本電工 <5563> [東証P]は2月、微細藻類で持続可能な資源循環を目指すガルデリア(東京都中央区)に出資し、業務提携を推進することで合意したと発表した。ガルデリアは、微細藻類(Galdieria-ガルディエリア)の持つ貴金属吸着能力を最大限に生かし、都市鉱山や工場廃液からの 貴金属回収に取り組むスタートアップ企業。ガルディエリアは貴金属吸着能力に優れ、また高い栄養価を持つことから、貴金属回収、環境浄化、食品や医薬品など、さまざまな分野への応用が期待されている。 アルコニックス <3036> [東証P]は1月、北九州市の北九州エコタウン近くに大規模な「再生資源ヤード」を開設した。このヤードは、国内非鉄金属資源の有効活用を目的としており、非鉄金属スクラップの集荷量を23年度比で約2倍に引き上げることが目標。ヤードの更なる拡張や追加の設備投資などを通じて、廃太陽光パネルに含まれるアルミなど収集品目の多様化も検討しているという。 ●住友ベ、松田産業などにも注目 このほかの関連銘柄としては、大手が手掛けていないような扱いにくい廃棄物や極微量の含有物から貴金属を回収する三和油化工業 <4125> [東証S]、廃プラスチックを選別・粉砕し原料化を行うマテリアルリサイクルを手掛けるサニックスホールディングス <4651> [東証S]、地上資源由来の素材(再生原料・材料など)メーカーになることを目標にしているエンビプロ・ホールディングス <5698> [東証P]、産業廃棄物中間処理や再生資源販売などを展開するイボキン <5699> [東証S]、産業廃棄物の収集運搬から最終処分までを請け負う一貫処理体制を構築しているミダックホールディングス <6564> [東証P]、廃プラスチックゴミから再生プラスチック素材を生み出すリファインバースグループ <7375> [東証G]、貴金属リサイクルが主体の松田産業 <7456> [東証P]、鉱山で産出されたイリジウムパウダーを溶解・加工し製品化する技術とリサイクルを中心とした高純度化技術を持つフルヤ金属 <7826> [東証P]など。 また、非可食バイオマス由来原料であるリグニンを活用した「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂の商業販売を開始した住友ベークライト <4203> [東証P]にも注目したい。フェノール樹脂は「液状レゾール型」と「固形ノボラック型」に大別され、「固形ノボラック型」は自動車分野を中心に利用されている。「固形ノボラック型」リグニン変性フェノール樹脂の商業化は世界初で、今後はバイオマス率の向上や更なる用途展開を進めるとしている。 株探ニュース