いまや公共施設にも普及、急成長する「セルフレジ」関連で要注目6銘柄 <株探トップ特集>

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コラム

―決済を巡る環境一変で市場は急拡大、「人手不足」やコロナ禍を経て活用加速―

 いま決済の現場が急変貌を遂げている。小売店に行けばレジの前で小銭やお札を握りしめながら現金で決済するのは当たり前のことだった。しかし、そんな日常の光景が変わりつつある。キャッシュレス化の進展で現金決済の比率は低下している。そして、キャッシュレス決済の普及と人手不足という現実を追い風に、顧客自らがレジで決済を行う セルフレジはいまや スーパーマーケットはもちろん飲食店や各種専門店、更には医療機関や役所の窓口にまで広がりを見せている。急拡大するセルフレジ関連市場の動向にスポットライトを当てた。

●すでに消費者の9割超が経験、若者中心に優先利用派が多数に

 店内に「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」といった明るい声が重なりあうことが昔と比べて少なくなったと感じる向きは少なくないかもしれない。長年の効率化の成果で、店舗運営の前提となる必要人数が少しずつ減少していることもあるが、近年の変化で言えばやはり、配膳係がロボットに少しずつ置き換わり、レジ係の代わりにセルフレジが導入されていることも背景にあるだろう。

 実際、SBペイメントサービスがまとめた調査では、セルフレジの導入率はすでに55.5%、消費者の利用経験にフォーカスすれば実に94.1%にものぼっている。特に10~30代の若年層では、セルフレジと有人レジがどちらもある場合、「セルフレジを優先して使う」方がもはや多数派となっている。もちろん全ての業態でセルフレジが導入され、一般化しているわけではないものの、身近な業態では利用自体がすでに習慣化し、セルフレジが「選ぶもの」ではなく「あるのが当然」の存在になりつつあるのは間違いない。

●今後はフルセルフレジの普及加速への期待も

 この背景にあるのが、キャッシュレス決済の普及による会計処理の簡素化と深刻化する人手不足という日本が直面している構造だ。労働人口が減る中、機械に任せられる業務は機械に移管し、限られた人員をより付加価値の高い業務や対応へ振り向ける流れには、なにも成長著しい「AI(人工知能)」だけが貢献するわけではない。キャッシュレスであれば金銭トラブルのリスクも減るため、効率化と安全性の両立が実現される。また、コロナ禍を通じて加速した感もあるが、「人と接しないこと」そのものを利便性や安心感として捉える世代が増えていることも影響しているだろう。温かみを求める世代もいれば、それを負担と感じる世代も存在し、なおかつ後者が今後、社会における主体となっていく流れは、ひとつの事実やロジックとして認識しておくことが必要となりそうだ。

 実際、スーパーマーケットやコンビニといったセルフレジの導入中心業態のほか、昨今では、病院やクリニックなどでもその導入が増えてきている。マイナンバー保険証と併せて、医療の世界でもDX化が着実に進展している。加えて、この動きが民間だけでなく、行政の公共施設にも波及している。例えば、仙台市では2024年から、戸籍・住民票などの証明書交付窓口に「セルフレジ」が導入され、職員は金銭の授受から解放されるなど「待たされない役所」も現実になりつつある。今後は、店員などスタッフが商品のバーコードスキャンや価格入力で関与し精算は顧客が行うセミセルフレジから、全てを顧客が行うフルセルフレジへの進化・普及加速も期待されることから、社会の効率化を一段と進める主軸武器としての役割を増していくだろう。

 パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]では「セルフレジ決済型 冷凍スマートショーケース」で冷凍食品無人販売サービスを手掛けている。また、TOPPANホールディングス <7911> [東証P]においてはグループのTOPPANエッジがキャッシュレス決済端末を手掛けるほか、グローリー <6457> [東証P]や日本金銭機械 <6418> [東証P]といった貨幣処理機及び端末機など金銭関連機器などを手掛けている企業が中心的な位置づけになろう。以下では関連する銘柄のなかで、中小型株を中心に注目した。

●トライアル、サトー、スマレジなど注目

 トライアルホールディングス <141A> [東証G]~「生活必需店」をコンセプトとしたディスカウントストアを運営しているが、リテールAI事業においてIoTデバイスを活用した各種ソリューションやソフトウェアサービスを提供する。同社独自に開発したIoT 機器やAI技術を活用した、リテールAIカメラ、セルフレジ機能付きの買い物カート「Skip Cart」を手掛けている。付属するスキャナーで顧客自らが商品バーコードを読み取ることで通常のレジでの商品登録や会計の手順を省き、専用ゲートを通過するだけでキャッシュレス会計を済ますことができる。

 アルファクス・フード・システム <3814> [東証G]~飲食業界向けITシステムサービスを提供しており、飲食業界専用セルフレジのパイオニア企業として、あらゆる飲食業態にマッチしたセルフレジシリーズを開発している。同社の「セルフショット」は、オーダー管理サーバーとなっており、顧客が各テーブルに設置してある端末バーコードやQRコードから表示されるスマホ画面などを操作して注文し、テーブルに備えつけられた番号札やスマホで精算を行い、前会計にて会計が終了した時点で厨房に注文情報が表示される。この前会計方法は、現金だけではなく、スマホ決済・プリペイドカード・クレジットなどのあらゆる決済方法に対応している。

 ノバシステム <5257> [東証S]~業務系システム開発の「システムインテグレーション」と「クラウドサービス」の2つのサービスを提供しており、クラウドサービスにおいて飲食店向け店舗運営支援システム「Order Revolution」 、受付業務支援システム「アイウェルコ」、AI顔認証入退室管理システム「アイウェルコトール」をSaaS型で提供する。Order Revolutionは、セルフオーダー機能をはじめ、 POS機能、売上データ管理、メニュー更新などをクラウド上で管理しており、店舗規模や業態に応じた最適なプロダクト構築が可能となる。

 アスタリスク <6522> [東証G]~スマホに取りつけるバーコードやRFID読取装置・赤外線通信装置などの「AsReader」ブランド製品を企画・開発・販売する。同社は「リテールテックJAPAN」を特に重要な展示会と位置づけ、10年から毎年出展し、25年3月に開催された「リテールテックJAPAN2025」においては、スマホを活用する各種AsReaderをメインに展示。「人追跡モジュール」は商品を読み取ったのち、顧客が自由な支払ゾーンで支払いができるようにカメラで撮影した動画で位置測定と追跡を実施することで、支払機の指定などをすることなしにセミセルフやセルフレジなどの構成が可能となる。

 サトー <6287> [東証P]~非接触型自動認識技術(RFID)の活用に最適なRFID対応ラベルプリンターやRFIDリーダライタ、RFIDタグ・ラベルなど、自動認識技術に関連した製品を手掛けている。RFIDは電波の届く範囲内であれば一度に複数のタグを読み取ることが可能であるほか、箱の中に商品が入っている場合も箱を開けて確認することなく外からRFIDタグを読み取ることができるため、セルフレジで商品を自動読み取りすることで、会計がスムーズになる。

 スマレジ <4431> [東証G]~クラウドPOS(販売時点情報管理)レジ「スマレジ」を手掛けている。管理画面とスマレジ・アプリのセルフレジモードで動作させるほか、自動釣銭機やレシートプリンターを設置することで、店舗へ来店した顧客自身が商品選択や会計の処理を行うことが可能となる。





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