明日の株式相場に向けて=逆再生するトランプトレードの行方
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名実ともに4月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比6円高の3万5624円と4日ぶり小反発。前日に1500円安という衝撃的な下げに見舞われ、にわかに緊張感が走ったが、世界同時株安の流れは前日の欧州時間までで、米国株市場が堰き止める形となった。米株市場では朝方にNYダウなど主要株価指数が大きく下押して始まったが、その後はほぼ一貫して戻り足を明示し、ダウは取引終了時点では400ドルあまりの上昇で4万2000ドル台に乗せた。また、ナスダック総合株価指数の方はわずかにプラス圏には届かなかったものの、23ポイントの小幅な下げにとどまっている。 しかし、それにしても東京市場の体感温度は桜の開花宣言とは無縁の寒さが続く。きょうの日経平均はダウと歩調を合わせ4日ぶりに大きく切り返すかと思いきや、東京市場のセンチメント改善の度合いは微々たるもので、上昇率は0.02%とほぼ横ばいに終わった。元来ならきょうは新年度入りでニューマネーの流入が見込めるうえ、年度末の急落を経た後だけに戻りやすい。「従来のパターンを踏襲するのであれば、朝高後にいったんもみ合っても、後場はアルゴリズム売買による先物絡みのアンワインド効果で棒上げというコース」(中堅証券ストラテジスト)という見立てもあった。しかし、朝方に日経平均は400円以上の上昇で3万6000円台に乗せたものの、その後は失速を余儀なくされる展開に。3月期末に暴落しているのに「期初の益出し売り」という苦しい解釈もなされていたが、クロージングオークションに入った時点では小幅マイナス圏で、既に気の抜けたような状態であった。投資家の眼前には荒涼たる風景が広がっていると表現するしかない。 あす詳細が発表される米国の「相互関税」、そして翌3日に導入予定の輸入自動車への25%関税を前にマーケット心理的に買い方は手が出せないのは分かる。しかし、株価は基本的に需給で動く。日経平均は前日までの3営業日合計で2400円も下げていた。用心されているからこそ関税発動後は吹っ切れる可能性もある。それを見越してイベント直前に空売り筋の手仕舞いが反映されるのが、きょうの後場のタイミングであった。ここで、買い戻しが機能しないということは、先安観の強さの証左ともなる。 特に半導体関連セクターの迷走ぶりはいかんともし難い。この日はアドバンテスト<6857.T>が4日続落の9連続陰線で“新安値街道”まっしぐらという弱気の塊のようなチャートとなっている。これは、同社製品の主要納入先でAI用半導体のシンボルである米エヌビディア<NVDA>と完全にリンクした値運びといってもよい。 エヌビディアは3月下旬にシティやモルガンスタンレーが強気の投資判断で全力プッシュしたのだが、「笛吹けど踊らず」。結局、アナリスト評価の思惑が見透かされて売り直される格好となった。機関投資家か個人か、どちらが先に逃げるかというような“売りたい強気”が蔓延している。エヌビディアを組み入れた投資信託など、間接的に個人マネーを吸収し続けたツケも溜まっていて、ここからもう一段のクラッシュがあっても不思議はない。 歯車が反転し始めたトランプトレードは、きょうのソフトバンクグループ<9984.T>の株価動向にも暗示された。米国のAIインフラ整備構想ではトランプ大統領から信任を得た孫会長兼社長が見事にビジネスチャンスを捉えたかに見えたが、AI技術の発展は必ずしも周辺企業の商機拡大に比例しないということが見えてきた。AIの民主化のプロセスにおいてAIは特別な光輝を放つわけではなく、陽光のように万人に降り注ぐ。インフラ投資に巨額の資金を投下しても、当該企業が回収できなければプロジェクトとして成立しない。ソフトバンクGは新興AI企業であるオープンAIに対し、最大400億ドル(うち100億ドルは外部)の追加出資を行うことを発表した。歴史的なメルクマールになるかもしれないが、これが好材料視されないとすれば、それはリスクに見合わないと市場が判断していることになる。ソフトバンクGの株価は今後を占ううえでも注目度が高い。 あすのスケジュールでは、3月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、午後の取引時間中に3月の財政資金対民間収支が発表される。また、引け後には3月のユニクロ既存店(国内)売上高にマーケットの関心が高い。海外では、ポーランド中銀が政策金利を発表する。また、この日はトランプ米政権が「相互関税」の詳細について開示される見通し。経済指標では3月のADP全米雇用リポート、2月の米製造業受注などに注目度が高い。なお、クグラーFRB理事が講演を行う予定にある。(銀) 出所:MINKABU PRESS