明日の株式相場に向けて=3月最終日の暴落が意味するもの
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週明け31日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1502円安の3万5617円と急落。下げ幅の大きさは昨年9月末以来で半年ぶりの大波乱となった。前週後半を境に日経平均は急速に下げ圧力が強まったが、それでも前週末の679円安は配当権利落ちに伴う下げ分が300円あまり上乗せされており、実質的にはそれほどセンチメント悪化を示す地合いではなかった。問題はその後に鮮明となった世界同時株安の流れだ。 欧州時間で独DAXや仏CAC40などをはじめ各国市場が全面安商状となったほか、米国株市場でリスクオフが更に加速し、NYダウ、ナスダック総合株価指数などの主要指数が揃って急落に見舞われた。外国為替市場ではリスクオフの円高も進み、こうなるとCTAなど投機筋の格好のターゲットとなりやすいのが東京株式市場で、AIアルゴリズムによる先物売りプログラムによって欧米よりも下げが大きくなるという、例のパターンに陥る。日経平均の下落幅もさることながら、日本版・恐怖指数である日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)は朝方に前週末比32%高の29.46まで急騰する場面があった。 トランプ米政権が打ち出す関税政策はハードデータにはまだ目立ったダメージを与えていないが、人間のマインドの方、つまりソフトデータには既に深い爪痕を残している。過剰な不安心理が下げを助長するとよく言われるが、現在進行形で悪化するソフトデータがもはや行き過ぎた不安とは言い切れず、漸次ハードデータに伝播するという見方は強い。世界的にもトランプ関税前の駆け込み需要が剥落して、各国の輸出が倍返しで急減速する可能性が4月以降に出てくることになる。前方にチラつくのは米経済のスタグフレーション懸念だ。1930年代の世界大恐慌は、常識を逸脱した米国の高関税「スムート・ホーリー関税法」が傷を深くしたことは広く知られている。トランプ米大統領としても、このまま欧州やカナダ、中国などといがみ合ったまま、ポーカーのレイズ(相手が提示した掛け金への上乗せ)のように、関税の引き上げ合戦をやっていても埒(らち)が明かないことは分かっているはずで、この振り上げた拳をどうするかに、真価が問われることになる。 外患だけでなく、内憂もトランプ政権の支持率低下に着実につながっている。理想の追求は机上の空論とは言わないまでも現実とは協和しない部分も多い。柔軟に修正を施していかないと“角を矯めて牛を殺す”ことになりかねない。その意味でイーロン・マスク氏の政府効率化省がアキレス腱となっていることは明白で、おそらくこのままだとトランプ政権は泥舟と化す可能性が出てくる。迷走するトランプ政権のバロメーターとなっているのが紛れもなく今の米株市場だ。特にエヌビディア<NVDA>やテスラ<TSLA>などマグニフィセントセブンの崩れ足が気になるところで、既にナスダック総合株価指数は12カ月移動平均線を大陰線で下抜けている。東京市場も昨年8月初旬の“令和のブラックマンデー”の再来が意識される波乱展開が訪れても不思議はないのだ。 一方、目先急落局面では、上記の理由からヘッジ目的だけではなく仕掛け的な空売りも高水準に入っている可能性も念頭に置く必要がある。今週は4月2日に米国の相互関税の詳細が発表され、3日には自動車関税の25%関税が発動される。ここを通過した後に週末には3月の米雇用統計発表を控える。そのなかきょうは3月期末というカレンダー要因も加わり、ディーラーや機関投資家の持ち株整理で下げが増幅されやすい。前週も取り上げたが、過去10年間で3月に外国人投資家は8回売り越しているが、逆に4月はコロナショックの2020年を除いて9回買い越した。4月の9勝1敗の外国人アノマリーを信じるなら、きょうの急落は買い下がってリバウンドを待つという作戦も当然考えられるところだ。 ただし、日経平均は昨年8月の暴落で相場全体にはヒビが入った状態だ。きょうのような下げが繰り返される度に中長期的な下値リスクは高まる。昨年9月下旬から5カ月半にわたるボックス圏でのもみ合いを下方向に放れたことで大勢トレンドは下降転換しているという認識は必要であろう。米国株一人勝ちの終焉も近い。「金市況の高騰は世界的な行き場を失った投資マネーが安住の地を求めていると解釈されるが、もう少し踏み込んだ言い方をすれば、それはドルの信認が揺らいでいることを映す鏡だ」(ネット証券アナリスト)という指摘が、米経済の現在地を指し示しているようにも聞こえる。 あすのスケジュールでは、2月の有効求人倍率、2月の失業率、3月の日銀全国企業短期経済観測調査(日銀短観)、3月の新車販売台数、3月の軽自動車販売台数など。海外では3月の財新中国製造業購買担当者景気指数(PMI)、2月の豪小売売上高、豪中銀の政策金利発表、3月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、2月のユーロ圏失業率のほか、2月の米雇用動態調査(JOLTS)、3月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数などに注目度が高い。(銀) 出所:MINKABU PRESS