【杉村富生の短期相場観測】 ─彼らはバブルを演出し、それに乗る!
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「彼らはバブルを演出し、それに乗る!」 ●吹き荒れるトランプ旋風に負けるな! 相変わらず、トランプ米政権の外交・通商政策に振り回されている。トランプ大統領の武器は関税だ。日本政府は「日本を例外に」と主張しているが、これは間違っている、と思う。諸外国が団結し関税引き上げの無益さ、およびダメージをアメリカ国民を含めて、訴えるべきではないか。 関税では1930年の悪名高いスムート・ホーリー法が知られている。大恐慌の最中に、フーバー政権が打ち出した政策だが、関税引き上げの報復合戦を招き、世界的な貿易の停滞、不況を誘発し、結果的に第二次世界大戦の引き金になった、といわれている。国民の不満の高まりは政治不信につながる。ポピュリズムとともに、過激政党が台頭する。 日本の株式市場はさえない。情けない話だが、日経平均株価は3万8000円が上値のカベになっている。やはり、政治の迷走、日銀の金融政策、積極的な買い手不在の状況が影響している。日本以外は金融緩和、財政出動だ。国際マネーは政策支援の見込めるマーケットに流れる。ストックス欧州600指数の上昇が好例だろう。 ただ、日経平均株価などインデックスはもみ合いとはいえ、個別物色機運は極めて旺盛だ。それに、企業業績は好調(日経平均株価の予想ベースの1株利益は7.3%増益)だし、東証改革としての資本効率改善の流れは継続している。さらに、サプライチェーンの再構築(半導体工場の建設ラッシュ)の潮流は不変である。 なお、現在の日経平均株価の1株利益(予想ベース)は2439円だ。実績ベースは2273円となっている。予想PERは15.5倍である。ちなみに、アメリカのS&P500指数は20.7倍、MSCIオール・カントリー・ワールド (ACWI)は17.7倍に評価されている。単純に、アメリカ市場並みに評価すると、日経平均株価の上値メドは「5万円」となる。 ●この世界では辛抱する木にカネが成る! いずれにせよ、ここはトランプ大統領次第である。この局面は総論を捨て、各論(銘柄)勝負の投資戦術を貫きたい。アメリカの経済・金融政策ではIQ(知能指数)に加え、EQ(感情・心理の把握、制御能力を示す知能指数)に優れているスコット・ベッセント財務長官の舵取りに期待するしかないだろう。 彼はウォール街では「静かな殺し屋(Silent Killer)」と呼ばれていた。実は、恐ろしい人物である。父は不動産業を営んでいた。ヘッジファンドのジム・ロジャーズ氏、ジョージ・ソロス氏の会社で働いていたことがある。相場巧者のスタンレー・ドラッケンミラー氏はその頃からの仲間である。 ジョージ・ソロス氏の再帰性理論がそうだが、基本はヘッジファンドだ。売りと買いを組み合わせる。企業価値はあまり重視しない。そこで育った。概念は異なる。その点を改めて理解する必要があろう。 株式投資に関し、ドラッケンミラー氏は赤字→黒字の転換期を狙う。数年前のテスラ、利益急拡大期に入る直前のエヌビディア がそうだった。いまはバイオ、航空業界に注目している。 業績面は変化を好む。もちろん、売りもやる。いや、こちらが本職だろう。ただし、彼らは熱狂的な株高を演出するのがうまい。バブルには参加する。ウォーレン・バフェット氏も手法は同じだ。23年9月末にはアップル はポートフォリオの約5割を占めていた。いまは大半を売り抜けている。熱狂を作り出し、静かに逃げる。 ベッセント財務長官は日本の政治家(故安倍晋三氏とは親友)に知人が多い。2013~2014年のアベノミクスの初期には政策テーマに乗って円売りを仕掛け、大儲けしたといわれている。アメリカ市場、日本市場ともに、彼らはトランプ大統領を動かし、数カ月以内に世紀の株高作戦を展開する可能性があろう。 それまでは辛抱だ。まあ、この業界では辛抱する木にカネが成る、という。ここは材料株で幕あいをつないでおこう。「嵐のときは動くな」というが、逆行高の銘柄は存在する。具体的には以下の銘柄群である。 赤字→黒字に転換するフライトソリューションズ <3753> [東証S]、同じく黒字浮上が期待されるわかもと製薬 <4512> [東証S]には新材料のほか、思惑材料がある。JALCOホールディングス <6625> [東証S]も同様の感覚(2025年3月期は大幅減益に)だ。サイエンスアーツ <4412> [東証G]、インフォメティス <281A> [東証G] にも注目できる。 2025年3月28日 記 株探ニュース