激動する防衛関連株、世紀のゲームチェンジ「刮目の7銘柄」大選抜 <株探トップ特集>
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―防衛力整備計画43兆円の潮流、地政学リスクの高まりで大転換する物色の矛先― 米国株市場をはじめ世界的に株式市場が不安定な値動きとなっている。トランプ米政権が打ち出す容赦のない関税引き上げ策に世界が翻弄されるなか、皮肉にもアメリカ・ファーストを目指す政策発動の傍らで米経済が変調をきたしている。米国ではここにきてリセッション(景気後退)懸念が取り沙汰されるようになり、株式市場にネガティブ材料としてのしかかっている。 ウクライナとロシアの戦争についても終結に向けた動きがなかなか一筋縄ではいかないようだ。トランプ米大統領が仲立ちする形でウクライナ側を停戦合意に誘導したとみられた矢先、今度はロシア側が即時停戦に合意しないという駆け引きに出ており、地政学リスクは未だくすぶったままだ。欧州では防衛コストの上昇は余儀ない流れにあるとみられており、厳格な財政規律で知られるドイツですら国防費などの増強を目的に債務抑制策を緩和する方向へと動いている。これを背景に独防衛大手のラインメタルが株価を急伸させたのをはじめ、欧州各国の市場で 防衛関連株への投資資金流入が鮮明化した。 ●防衛関連への投資資金流入は近未来を映す 日本にとっても対岸の火事ではない。ロシアによるウクライナ侵略戦争が今回の一連の動きでロシアに有利な形で収束した場合、国際秩序が乱れ新たな火種をもたらす懸念がある。アジアでは近い将来に中国によって台湾有事の引き金が引かれる可能性があり、日本にとっても防衛力強化に向けた動きは大きな政治テーマとなりつつある。 そのなか、政府による27年度を最終年度とする5カ年防衛力整備計画では総額で約43兆円の予算が掲げられている。ちなみに19~23年度の5カ年計画ではおよそ17兆円であったから、政府の注力度合いがうかがわれる。今回部門別で計画の目玉の一つとなっているのは、攻撃の届かない安全な距離で敵部隊に対処する「スタンド・オフ防衛能力」の強化であり、前回計画の2000億円から一気に約5兆円まで大幅に増額された。このほかミサイルの多様化など空からの脅威に対処する「統合防空ミサイル防衛能力」や、宇宙やサイバー領域などを含めたすべての能力を融合させて対応を図る「領域横断作戦能力」などに予算枠を大きく広げて強化する方針にある。 ●旗艦銘柄を担う三菱重の躍進続く 東京市場でもこうした国内事情や世界情勢を反映する形で、防衛関連株への物色人気が盛り上がっている。防衛関連の旗艦銘柄のポジションを担っているのは、防衛省との取引額で群を抜く三菱重工業 <7011> [東証P]だ。陸・海・空を網羅する中核企業としての位置付けは不変といってよく、株式市場でも最近は常にプライム市場の売買代金上位に食い込み、株価も最高値圏で頑強な値動きを続けている。同社の株価は既に22年の年初を起点に長期上昇トレンドに移行している。当時は270円前後だったが、その後の上昇パフォーマンスは周知の通りで、特に日本の防衛力強化の流れが明確となった24年以降は、長期ボックス圏を離脱する形で大相場に突入している。22年の年初の株価と比較して時価は10倍近くに変貌している。 この三菱重の脇を固めるのが川崎重工業 <7012> [東証P]とIHI <7013> [東証P]である。川重もIHIも三菱重と歩調を合わせ24年に入ってから次第高の様相を強めている。川重は防衛省との取引額で第2位にあり、哨戒機や輸送機のほか、潜水艦については三菱重と双璧の存在で交互受注の形をとっている。株価も今月に入り三菱重とほぼ同じタイミングで高値を更新している。また、IHIは航空・宇宙分野に強みを持ち、防衛案件では戦闘機エンジンの設計・製造などで実績が高い。株価はバブル絶頂期の1989年の年末にウォーターフロント関連として1万6000円(修正後株価)の最高値をつけた経緯がある。時価はその水準にはまだ及ばないものの、35年ぶりの高値水準で実質的な青空圏を快走している。 これらは「防衛関連三羽烏」とも言われ投資対象としてクローズアップされているが、この3銘柄がテーマ買いの象徴として前面に押し出されている状況は、かつてのマーケットでは考えられなかったことだ。防衛関連への投資資金流入はまさに太い流れを形成しており、半導体からの資金シフトを促しゲームチェンジの様相を強めている。 ●開花モードの銘柄多数、繚乱の兆し このほか東京市場では、防衛予算の拡大が業績面に強い追い風をもたらす“リアル防衛関連株”への物色人気が燎原の火のごとく広がっている。兵器の開発・製造を祖業とし、国内唯一の火砲システムメーカーである日本製鋼所 <5631> [東証P]もその一角で、ここ再び急浮上の気配をみせている。また、防衛用航空機向け電装品で高い競争力を持つシンフォニア テクノロジー <6507> [東証P]もスタンド・オフ防衛分野での展開力が着目され人気素地を開花させた。更に水陸両用の救難飛行艇「US1」や「US2」で名を馳せる新明和工業 <7224> [東証P]や、レーダー機器など航空機搭載用電子機器及び艦艇向け航法装置の開発・生産を行う東京計器 <7721> [東証P]など動意含みの銘柄が相次いでいる。 一方、自動警戒管制など指揮統制・通信機器システム分野ではNEC <6701> [東証P]が関連最右翼だ。三菱重に匹敵する防衛のシンボルストックともいえる存在で、市場ではあまり同関連としてはハヤされないが株価はここ上値指向を強めており、長期波動でみても2001年以来24年ぶりの高値圏に浮上してきた。富士通 <6702> [東証P]もNECと同様に情報システム分野で力を発揮し、防衛施設向けなどで受注実績を重ねている。このほか、防衛用航空機や船舶のレーダーシステムやミサイルでは三菱電機 <6503> [東証P]が実力上位にあり、株価もここにきて動兆著しく、昨年5月につけた上場来高値更新を指呼の間に捉えている。 株式市場では外部環境に不透明感が増すなかも、マーケットを取り巻く待機マネーは潤沢である。国内長期金利の上昇傾向に歯止めがかからず、株式に対する相対的な割高感は払拭できないものの、それはあくまで全体論として理解しておく必要がある。個別株ベースでは世界的なテーマ買いの動きを考慮して、防衛関連株の物色人気は当面色褪せることはないだろう。三菱重など大型主力株だけでなく、中小型株にも物色の矛先が向き始めるなか、新たな視点を持ちたい。投資マネーが虎視眈々と狙う“次の銘柄”が必ず存在するのが株式市場である。今はアンテナを高くしてその選別をしたたかに進める場面だ。今回のトップ特集では、防衛関連株に位置付けられる銘柄群の中から、株価上昇に向けたダイナミズムをみなぎらせる選りすぐりの7銘柄をエントリーした。 ●投資資金が攻勢前夜の有力候補7選 ◎日本アビオニクス <6946> [東証S] 日本アビオは防衛・産業用機器メーカーで、防衛装備品ではレーダー装置などをはじめとする電子機器など陸・海・空の自衛隊向けで高い評価を得ている。信号・画像処理技術を強みとした情報システムに強みを持ち、防衛予算の増加で同社の優位性が発揮される可能性が高まっている。防衛業界の双璧であるNECと三菱重を主要販売先としていることもポイントだ。中期経営計画では27年3月期に売上高300億円、営業利益40億円を数値目標に掲げている。なお、25年3月期は売上高が前期比22%増の220億円を予想し、営業利益は同19%増の26億円と35年ぶりとなる過去最高益更新が見込まれている。 株価は昨年10月2日に2987円の昨年来高値をつけた後、調整局面に移行したが、成長期待は大きく2000円台半ばは強気に対処して報われそうだ。昨年の高値をクリアすれば、実質的な青空圏を舞う形となり値運びが軽くなることも予想される。 ◎沖電気工業 <6703> [東証P] OKIは情報通信システム構築を手掛けるほか、ATM及びプリンターなどを主力展開するが、ここ最近は防衛関連の案件が増加基調で業績に貢献している。同社が長年にわたり独自に研究開発を進めてきたソナーなどの水中音響センシング技術は、水中の対象物を検出・分析する技術であり、防衛分野で高い需要がある。このほか防衛分野を含む特機システム部門では、海洋市場をターゲットに事業エリアを拡大中だ。更に光関連分野にも注力し、超小型光集積回路チップの開発で業界の耳目を集めている。24年3月期に営業利益が前の期比7.8倍化した反動もあり、25年3月期は営業14%減益を見込むが、26年3月期以降は再び2ケタ増益路線に復帰しそうだ。 時価予想PERは8倍台、PBR0.6倍前後と割安感が際立つ。配当利回りも3%を超えバリュー株素地も内包。1000円未満は強気に対処するところで、早晩4ケタ台を地相場とする強調展開が期待される。 ◎理経 <8226> [東証S] 理経はIT機器の輸入販売商社で、官公庁向けで強みを発揮し、防衛省との取引も活発だ。連結子会社エアロパートナーズを通じて防衛省向け航空機部材や保守点検ビジネスが好調で、売り上げ拡大に寄与している。また、VR技術でも先駆しており、ヘリコプター用VRフライトシミュレーターなどで実績が高い。業績は前期から飛躍期に突入している。営業利益は24年3月期に前の期比2.6倍化したのに続き、25年3月期も前期比36%増の7億7000万円と大幅な伸びを見込む。しかも、なお保守的で一段の増額修正が視野に入る。26年3月期も防衛予算拡大による恩恵は大きく、豊富な受注残を武器に利益成長トレンドを確保する公算が大きい。 300円台前半の株価は値ごろ感が魅力なほか、出来高流動性にも富んでおり人気化素地を内包する。昨年の大納会と今年2月10日に367円でダブルトップをつけているが、ここをブレークして中勢400円台活躍を目指す。 ◎細谷火工 <4274> [東証S] 細火工は火工品メーカーで防衛省への納入実績も豊富であり、自衛隊向け発煙筒や照明弾、救命胴衣・エアバッグに使われるインフレーター(ガス発生装置)などをはじめ幅広い商品を手掛ける。会社側は保守的な見通しを示すものの、今後の防衛予算増額は同社の受注拡大や採算向上に反映されていくことが必至だ。25年3月期は営業利益段階で前期比3%増の2億円を予想するが、第3四半期(24年4~12月)時点で前年同期比2.8倍の3億6100万円と大幅に超過している状況にある。通期も会社側予想から大きく上振れして4億円を上回る公算が大きい。また、防衛関連株の位置付けでは以前から人気素地に富んでおり、株価に急騰習性があることも見逃せない。 23年6月には2000円台まで一気に駆け上がった経緯がある。時価は1000円トビ台で売り買いを交錯させているが、出来高流動性が高まれば意外高に発展する可能性を内包している。 ◎放電精密加工研究所 <6469> [東証S] 放電精密は金属放電加工の専業として抜群の技術力を誇り、特殊工程認証で業界随一の実力を有する。航空・宇宙関連のエンジン部品に傾注するほか、環境・エネルギー関連のガスタービン部品などで需要を取り込んでいる。主要販売先である三菱重と昨年1月30日付で資本・業務提携を行っており、現在、三菱重が放電精密の発行済株式数の約34%を保有する筆頭株主となっている。防衛装備品を含む航空宇宙関連部品の受注は増勢一途で、今後も防衛予算拡大を追い風に収益成長が続きそうだ。25年2月期は売上高が前の期比7%増の129億5600万円と過去最高だった22年2月期の水準に肉薄する見通し。営業利益も同7割増の3億9100万円を見込んでいる。 株価は2月下旬から3月上旬にかけて調整を強いられたが、75日移動平均線を足場にトレンド転換を果たした。1月中旬の戻り高値水準である1450円どころを第1目標に中勢2000円台指向が期待できる。 ◎ナブテスコ <6268> [東証P] ナブテスコは制御装置(モーションコントロール装置)の大手メーカーで、産業用ロボットの関節部分に使われる精密減速機はグローバルベースで約6割と群を抜く商品シェアを誇る。自動ドアでも世界トップクラスだ。加えて、航空機の3次元の動きを正確にコントロールするFCA(フライト・コントロール・アクチュエーション・システム)では国内シェアを独占している状況。防衛省案件も増勢が顕著であり、追い風は今後更に強まりそうだ。25年12月期売上高は前期比4%増の3360億円を予想しており、これは2期ぶりに過去最高更新となる。営業利益は同27%増の187億円を見込み、こちらも回復色を鮮明とする見通しだ。 2月中旬に発表した24年12月期決算が減収減益だったことで株価はマドを開けて急落したが、その売りも一巡した。2300円台は下値限界ゾーンと判断してよさそうだ。今期業績回復を織り込む形で早晩マド埋めから2000円台後半を目指す展開へ。 ◎菱友システムズ <4685> [東証S] 菱友システムズは情報処理やシステム開発、情報機器販売など製造業向けを中心に総合情報サービスを手掛けるが、同社の3割強の株式を保有する三菱重向けが売上高の約半分を占めている。また、防衛・航空宇宙関連向けに高度な解析シミュレーションサービス(解析・設計エンジニアリング)が会社側の想定以上に好調で業績押し上げ効果をもたらしている。23年3月期以降トップラインの伸びが鮮明で、つれて増収効果に伴い利益の伸びも目立っている。25年3月期営業利益は従来見通しの40億円から46億5000万円(前期比30%増)に上方修正しており、連続過去最高更新となる見込み。高成長を続けているにもかかわらず、PER11倍台と割安感がある。 株価は3月上旬に軟化したが、75日移動平均線を足場にリバウンドに転じている。6000円近辺は仕込み場と判断され、2月14日につけた昨年来高値7590円の奪回が中期目標として意識される。 株探ニュース