「新3K」実現へ急変貌、建設業界の救世主「現場DX」で飛躍する6銘柄 <株探トップ特集>

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コラム

―安全確保と熟練技術の承継を実現、最新技術を導入し抜本的な働き方改革を推進―

 日本ではいま、さまざまな領域で大きな転換期を迎えている。建設などでの作業を行う「現場」改革もその一つだ。工事現場では、培われた個々の熟練技術と経験に頼っていた従来のやり方に、デジタルの力が徐々に組み込まれつつあり、劇的な効率化と生産性向上が進んでいく。キーワードとなるのが「現場DX(デジタルトランスフォーメーション)」だ。現場の動きを最適化し、無駄を省き、ミスを減らし安全を確保するだけでなく、失われつつある熟練技術の承継などにも大きく関係しているのが現場DXだ。

●「給料良い、休暇取れる、希望持てる」が新キーワードに

  働き方改革関連法の施行をきっかけとした、物流の「2024年問題」が社会的な課題としてクローズアップされた。同問題は、労働時間の制限で1日に運ぶことができる荷物量の減少(=物流の混乱)、事業者の収益減、ドライバーの収入減とそれによる担い手減などが懸念されたものだ。これについては上場各社の決算関連の開示資料の中でも数多く言及された。同規制が強化されて1年が経過しようとしているが、働き方改革関連法の影響が生じたのは、何も物流業界に限ったことではない。 建設業界もその一つだ。

 減少傾向にあるとはいえ、建設業界にはいわゆる「一人親方」と呼ばれる、職人的個人事業主が昔からおり、業界全体の働き方を改革していくには難しい現実もある。しかし、着実に改善は進んでおり、「旧3K(きつい・汚い・危険)」から「新3K(給料が良い・休暇が取れる・希望が持てる)」を合言葉に、新たな歩みを進めている。例えば一つ具体的な例を挙げれば、北海道では毎年、建設業の魅力を高校生に伝える「コンストラクション甲子園」というイベントが開催されている。参加生徒からは、業界イメージが変わったとの声も寄せられるなど、地道な取り組みが着実な成果を生んでいる。

●建設クラウドや現場最適化ソリューションを開発・提供へ

 それを示すかのように、総務省の「労働力調査」によれば、建設業入職者数(新規学卒者のみ)は09年の2万9000人をボトムに回復傾向で、21年には4万4000人に達している。それだけでなく、就業者中に占める女性比率も12年は13.9%だったところから、じりじりと上昇し23年には18.2%まで浮上した。中長期的な視点で取り組んできた業界全体のイメージアップ施策はもちろんのこと、法規制もきっかけとして、良い方向に車輪が回り始めていることは間違いない。

 その一方、この良い回転を更に加速させるのに重要なのが、これまで以上の「現場」改善だ。「旧3K」の排除、そして「新3K」の実現には、人力の努力では追い付けない。最新技術を活用し、抜本的にこれまでの働き方を変革していくことを通じて、安全性や生産性を高めていく必要がある。そこでキーワードとなるのが「現場DX」だ。

 大手企業ではNEC <6701> [東証P]が建設業複数社と共創して開発した「建設クラウド」を手掛けているほか、現場顔認証など「建設現場DX」を推進している。また、パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]では、画像認識・センシング技術を駆使し現場のプロセスを可視化し、経営課題解決を支援する現場最適化ソリューションを提供する。富士通 <6702> [東証P]と大成建設 <1801> [東証P]は、「生産プロセスのDX」の一環として、建設現場の業務の効率化を推進する作業所業務支援システム「作業所ダッシュボード」を23年7月に開発した。以下では、現場DXにおけるソリューション開発やサービスを展開する中小型株を中心に紹介する。

●スパイダーやセーフィー、Arent、ウイングアクなど注目

 L is B <145A> [東証G]~立って働く人・企業に最適化する現場向けのDXプラットフォーマーとして、建設業などの現場向けビジネスチャットツール「direct」を中核に事業を展開。現場のニーズをいち早く取り入れることで、写真の撮影から後工程までを効率化するソリューションや現場ノウハウを動画で共有できる「ナレッジ動画」、長時間労働を是正する働き方改革ソリューション、360度カメラを用いた情報共有ソリューションなど多様なサービスを開発・提供しており、生成AIとdirectを連携することでさまざまな業務課題を効率化させる。

 スパイダープラス <4192> [東証G]~建設業界を主な対象として自社開発のサービス「SPIDERPLUS」を中軸とした建設DX事業を提供している。クラウドを使って現場の情報管理をスムーズにできるほか、写真・電子黒板・図面などをタブレットで管理しペーパーレス化を実現。24年12月には国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」において従来の「A」評価から「VE(活用効果評価済み技術)」に昇格した。

 セーフィー <4375> [東証G]~クラウド録画型映像プラットフォーム「Safie」の開発、運営を行い、映像データをもとに遠隔での状況確認や映像解析による業務効率化・異常検知・予測などさまざまなソリューションを提供する。2月にはIoT・生成AI活用による現場データ管理・AI解析処理・分析を行う米スタートアップのMODEに、同社のCVCを通じて出資している。

 Arent <5254> [東証G]~自社開発を精力的に進めながら、建設業界を中心にコンサルティングや共創型開発を手掛けている。DXを成功させる基本戦略として社内システムをERP型からアプリ連携型に移行することを推進。自社特有の業界固有の業務に関し、「BIM(Building Information Modeling)」と連携した自動化SaaSを開発することにより、業務全体の効率化を実現させている。

 ウイングアーク1st <4432> [東証P]~独自のテクノロジーと情報活用に関する専門知識を融合させたさまざまなソリューションを提供している。「分析用データマート」と、連携して使用できる「ユーザーインターフェイス」「データ連携ツール」から構成されている「Dr.Sum」や「業務アプリ開発」から「データ活用」まで一気通貫で行える多機能BI(ビジネスインテリジェンス)ツール「MotionBoard」を活用し、建設業の現場から経営までの情報を一元管理、施工管理の見える化で、現場作業をスムーズにする。

 シーティーエス <4345> [東証P]~現場業務支援サービス「サイトアシスト」はクラウドアプリを中心に、現場を遠隔地より支援するための情報を統合して提供する。現場の働き方を変える建設業向け進化系クラウドストレージや現場の状況をリアルタイムに確認できるクラウド映像サービス、ビジネスビデオチャット(L is Bのdirectなど)、通信・ネットワークなどがパッケージ化されている。

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