窪田朋一郎氏【冴えを欠く東京市場、ボックス圏下放れでどうなる】 <相場観特集>

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コラム

―米経済に警戒ムード、トランプ政権下での株高期待に陰り―

 10日の東京株式市場は日経平均株価が反発に転じた。前週末に800円を超える下げに見舞われた反動で買い戻しが入ったものの、取引時間中はマイナス圏で推移する場面もあり不安定な値動きだった。トランプ米政権が打ち出す関税政策に対する警戒感が世界的に拭えない状態にある。また、米国経済の減速感が意識され始めており、米株市場もハイテク株のみならず、景気敏感株や金融株にも売りが目立つようになってきた。今週は週末にメジャーSQ算出を控えており、投資家としても安易に手を出しにくい面がある。3月期末から新年度に向けた日経平均の動向と個別株について、松井証券のシニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏に見解を聞いた。

●「3月から4月にかけて下値リスクを警戒」

窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)

 東京市場は足もと日経平均が3万7000円近辺を巡る攻防だが、昨年秋口から今年2月下旬まで続いた3万8000~4万円のレンジ相場は、ここにきて3万8000円を上限とするボックス圏往来へと水準が切り下がった可能性が否定できない。リバウンドに転じても上値は限定的であり、3月期末から4月上旬に向けて日経平均は、下値が3万5800円どころ、上値は3万7500円前後のゾーンで推移する展開を予想するが、基本軟調な地合いを覚悟しておく必要がある。

 足もとの市場は“トランプ関税”への警戒感が拭えない。鉄鋼・アルミニウムへの関税強化は想定通り行われる見通しで、4月2日から発動される予定にある自動車関税についても今のところ日本が免除されるという方向にはない。そのため、日程的には4月初旬まで様子見ムードが強まるのは仕方のないところである。

 一方、前週末の2月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びが市場コンセンサスを下回ったほか、失業率も事前予想に反し上昇するなど米経済の減速に対する懸念が浮上している。株式市場では、これまでのトランプ政権下での株高に対する期待感がかなり後退してきている印象を受ける。その背景のひとつに挙げられるのが、トランプ大統領やベッセント財務長官の最近の発言内容で、株式市場ではなく“資産価格の下落”を気にしている、という表現に変わっていることだ。これは、株価動向よりも不動産価格が崩れることの方を警戒しているというニュアンスである。ちょうど今の米国は2015年ごろに低金利で借り入れた不動産ローンの借り換え時期に来ており、10年前と比較して金利は大幅に上昇している。したがって、ある程度米経済が冷え込むような状況に陥ったとしても、利下げを行える環境を切望している。トランプ政権は投資資金を株式からむしろ債券市場の方に誘導したいというのが本音である。

 こうした環境下では、東京市場でもなかなか個別株戦略が難しいが、現状でテーマとして有力視されるのは欧州関連株と防衛関連株の2つだ。欧州はドイツをはじめ財政拡張策に動いており、ECBによる利下げが継続していることも経済環境に追い風となる。関連銘柄としてはDMG森精機 <6141> [東証P]やダイキン工業 <6367> [東証P]、マツダ <7261> [東証P]などがマークされる。また、防衛関連では三菱重工業 <7011> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、川崎重工業 <7012> [東証P]のほか、NEC <6701> [東証P]や三菱電機 <6503> [東証P]なども併せて注目しておきたい。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。

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