「Web3」は国策で普及へ、成長戦略の実現支える関連株にロックオン <株探トップ特集>

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コラム

―大手企業が続々と新ビジネスを発表、米トランプ政権の暗号資産規制緩和も追い風に―

 日本の経済成長策の一環として、AIとともに次世代インターネット「Web3」に関連する産業の育成に向けた機運が一段と高まっている。日本政府が2022年にWeb3の推進に向けた環境整備への検討を進める方針を打ち出して以降、関係省庁間での連携が進み、スタートアップ企業のみならず大手企業からも、Web3を活用して新たな収益源の獲得を目指す取り組みが広がっている。米国でのトランプ政権の誕生も、Web3関連の市場が成長するうえで追い風となるとみられており、関連銘柄の上昇エネルギーが蓄積されつつある。

●経済政策の起爆剤として期待

 Web3と従来のインターネットの最大の違いは、データの管理を米巨大テック企業などが中央集権的に行うのではなく、ユーザー側にその権限を移行させるという点にある。ブロックチェーン(分散型台帳)技術を通じてユーザー側がデータを共有し、システムを運用する形態をとっており、プラットフォーム提供事業者の都合に左右されることなく、ネットワーク参加者同士が直接データをやり取りすることが可能となる。Web3の普及により、仮想空間(メタバース)でのデジタル資産をもとにした経済圏の形成や、分散型金融(DeFi)サービスなど新たな金融ビジネスの拡大などが期待されている。

 日本政府は22年6月に策定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2022)」で、Web3やNFT(非代替性トークン)、メタバースなどのデジタル社会の実現に向けた環境を整備することを明記し、その後関係省庁が連携して環境整備に向けた課題解決に取り組んできた。政権与党の自民党は、Web3の発展に向けた論点を列記したホワイトペーパーを24年5月に公表し、政策提言を行ったほか、同年の衆院選では野党の国民民主党や日本維新の会も、経済成長に向けてWeb3の領域での政策の重要性を訴えている。

 産業界でもWeb3の関連で新たなビジネスを展開しようとする企業が増えている。通信業界ではNTT <9432> [東証P]傘下のNTT DigitalがWeb3の社会実装やユースケースの創出に注力している。24年5月にはブロックチェーンを活用した企業連携の実現を目指すプロジェクト「web3 Jam」を立ち上げ、サンリオ <8136> [東証P]やコナミグループ <9766> [東証P]のコナミデジタルエンタテインメント、J.フロント リテイリング <3086> [東証P]などの賛同企業を得た。KDDI <9433> [東証P]もメタバース・Web3プラットフォーム「αU(アルファユー)」を展開。ソフトバンク <9434> [東証P]は吉本興業(大阪市中央区)と兵庫県養父市とともに、Web3の活用に向けた連携協定を締結し、地方創生分野におけるメタバースの活用などに取り組んでいる。

 電機大手ではソニーグループ <6758> [東証P]が今年1月、ブロックチェーンサービス「Soneium(ソニューム)」を一般公開するとともに、包括的なWeb3ソリューションの提供開始を発表。日立製作所 <6501> [東証P]グループの日立ソリューションズも昨年10月、Web3向け開発支援ソリューションの提供開始を発表している。電通グループ <4324> [東証P]や博報堂DYホールディングス <2433> [東証P]といった広告大手もWeb3領域での事業成長に向けた基盤づくりに励んでいる。

 加えて、 暗号資産業界の規制緩和に積極的なトランプ米大統領の誕生は、暗号資産ビジネスのみならずブロックチェーンやDeFiなどで技術力を持つ企業に前向きな動きとみなされている。Web3の成長性に着目して早期に成長基盤の構築に動いてきた企業に対し、株式市場の注目度が一段と高まることが想定されるなか、投資妙味のある銘柄をいくつかピックアップしていく。

●関連企業に決済関連・マーケティング支援も

 ネットスターズ <5590> [東証G]は、QRコード決済を中心としたキャッシュレス決済のゲートウェイサービスを提供。多くの決済ブランドや地方金融機関とのパートナー基盤を構築して決済関連売上高を順調に拡大させており、25年12月期の売上高は前期比24.3%増の48億5000万円、最終損益は1億9800万円の黒字(前期は3700万円の赤字)と黒字転換を見込む。昨年5月に金融業界向けの次世代取引処理インフラとして期待されるWeb3基盤「Tusima」のブロックチェーンネットワークで、概念実証(PoC)において2億1900万件に及ぶ大規模データの処理に成功したと開示。Web3環境でのサービス提供で先行者利益を享受できるか注視される。

 フリービット <3843> [東証P]は集合住宅向けのインターネット接続サービス事業や格安スマートフォン事業などを展開しつつ、27年4月期までの中期経営計画においてWeb3実装企業に転換する姿勢を打ち出している。昨年開始したWeb3の活用による新たな株主還元策「フリービット株主DAO」では、スマホ上のアプリを通じ、フリービットの独自ブロックチェーン「TONE Chain」の採掘への参画を可能とするほか、グループの実証実験の参加権なども提供する予定。更に、藤田医科大学病院を運営する藤田学園(愛知県豊明市)とともに、医療ビッグデータとWeb3技術を連携させた共同研究開発を進めるなど、ユースケースの拡大に努めている。

 Macbee Planet <7095> [東証P]は成果報酬型マーケティングサービスを提供。25年4月期の売上高は2割増の見通しとトップラインの伸びが顕著で、レンジで開示する利益予想は下限であっても前期に続き過去最高益を更新する計画を示している。医療や保険、投資業界向けが成長のけん引役となっている同社だが、22年6月にデジタル空間における経済活動の活性化を目的とする日本デジタル空間経済連盟への加盟を発表。メタバース領域での市場の開拓を進めている。資本・業務提携先でデジタルギフトを手掛けるデジタルプラス <3691> [東証G]をはじめ、パートナー企業との連携による中期的な成長も図っている。

●エディアなどゲーム関連も要マーク

 オンラインゲームのgumi <3903> [東証P]が25年春にリリースを予定する「TOKYO BEAST」に関して、そのパブリッシャー企業は、米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が共同創業者兼会長として参画するプロジェクトの主要企業とパートナーシップを締結している。今年2月には子会社がTIS <3626> [東証P]と、Web3事業の立ち上げから運用までをワンストップで支援するコンサルティングサービスの開始を発表するなど、事業拡大へ攻めの姿勢を鮮明にしている。

 エディア <3935> [東証S]は、ゲームサービスなどIP(知的財産)事業と、電子書籍・コミックなど出版事業を展開。オンラインくじサービスが足もとでは好調に推移し、25年2月期は経常利益4割増で最高益を見込む同社だが、昨年7月にゲーム利用に特化したブロックチェーンプロジェクト「Oasys」との独占的パートナーシップの締結を発表している。エディアが保有するレトロゲームIPの需要拡大を目指すほか、Web3市場でのビジネス展開も図る方針で、IP関連事業での更なる成長につなげられるか注視されている。

 ドリコム <3793> [東証G]はスマホゲームの開発を手掛けるバンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]の持ち分法適用関連会社。第1四半期(4~6月)にリリースした新規タイトルが低調な結果となったことで、25年3月期は最終赤字に転落する見通しとなったが、昨年10月にリリースした「Wizardry Variants Daphne」が好調に推移し業績を下支えしている。ネクスグループ <6634> [東証S]の子会社でWeb3関連の事業支援を展開するチューリンガムと、ドリコムのIPを活用したブロックチェーンゲームの制作・運営を目的とした共同事業契約を締結。既存のゲーム関連事業とともに、新規事業としてWeb3ビジネスの成長に注力している。

 ゲーム関連ではスクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> [東証P]やディー・エヌ・エー <2432> [東証P]もWeb3に関するプロジェクトを展開。AI・Web3ベンチャーへのソリューションを手掛けるグループ会社を持つGMOインターネットグループ <9449> [東証P]、メタバース「REALITY」の開発・運営を行うグリーホールディングス <3632> [東証P]、Web3関連の子会社BLOCKSMITH&Co.を持つKLab <3656> [東証P]などが関連銘柄として位置づけられる。

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