八潮市陥没事故で急展開!「水道インフラ」で買われる株・緊急リサーチ <株探トップ特集>
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―老朽化一気に加速、ドローン・DXなど先端技術の活用で難局打破へ― 1月28日、埼玉県八潮市の県道で、陥没した道路にトラックが転落。陥没事故は発生から3週間が経過しようとしているが、いまだ収束が見えない状況で、復旧までは莫大な費用と時間を要しそうだ。下水道管の破損が原因とみられており、道路陥没事故の未然防止に向けて各地で緊急点検が相次いでいる。老朽化する インフラへの関心が急速に高まるなか、水道管や道路の空洞調査・点検などで活躍する関連銘柄を追った。 ●強靱化計画に盛り込むと伝わる 国土交通省は八潮市の道路陥没事故を受け、事故現場と同様の大規模な下水道管路を管理する7都府県に対し緊急点検と補完的に路面下空洞調査の実施を要請。前週末14日に調査結果を公表し、管路の腐食などの異状が埼玉県の3カ所で確認され、必要な対策を速やかに実施するよう要請したという。また、空洞調査では下水道管路に起因する空洞の可能性がある箇所は、現時点では確認されなかった。更に、前述の7都府県以外でも、多くの自治体が自主的に緊急点検を実施していると伝わるなど、水道インフラ老朽化への懸念が深まっている。 こうしたなか石破茂首相は、6月をメドに策定する 国土強靱化計画に「下水道の老朽化対策」を盛り込むと伝わっており、目が離せない状況が続きそうだ。 ●更に需要を喚起する可能性 株式市場では、今回の道路陥没による影響の大きさから、水道インフラに対する調査や老朽化した設備の更新が大きく進展するとの思惑が広がり、急速に関連株に物色の矛先が向かった。下水道をはじめ道路橋、トンネル、河川、港湾など日本の社会インフラは、高度経済成長時代に一気に整備されたものが多く、今後急速に老朽化することが懸念されていた。こうしたこともあり、投資家のインフラ老朽化対策への関心は以前から高く、折に触れ注目が集まっていた。 国交省では、今後20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に高くなるとみており、「一斉に老朽化するインフラを戦略的に維持管理・更新することが求められる」としている。ただ、膨大な経費と時間がかかり一朝一夕でできるものではない。緊急性を必要としながらも、息の長いテーマとしての性格を持つことになる。 八潮市の事故では、下水道や 地質調査、陥没調査に絡む多くの銘柄にスポットライトが当たっている。水道インフラなどのコンサルを手掛ける企業に話を聞くと「そもそもが、ここ数年間インフラ老朽化の加速を受けて、コンサルや点検業務など結構忙しい。いまに始まったことではない」。ただ、「(今回の事故により)更に需要を喚起する可能性はある」と言う。この事故をキッカケにして株価が急上昇した銘柄が多いが、ここにきてようやく落ち着きを取り戻しつつあるなか、中長期で投資妙味のある関連株を点検した。 ●日ヒュムは腐食調査・診断・判定業務 日本ヒューム <5262> [東証P]は下水道向けヒューム管最大手だが、下水道関連株を物色する流れが強まるなか株価は上昇基調を強め、今月12日には1816円まで買われ最高値を更新。ここ上昇一服も、業績好調なだけに目が離せない。同社が7日発表した25年3月期第3四半期累計(4~12月)の連結営業利益は前年同期比2.5倍の20億2200万円となり、通期計画(19億円)を既に大きく上回った。同社は、下水道管路施設の腐食調査・診断・判定業務も手掛けており、ヒューム管メーカーのパイオニアとして豊富な製品ノウハウを生かし、下水道管路施設のライフサイクルコストの削減に寄与している。 ●土木管理、日水コンは社会インフラ点検・整備で頭角 土木管理総合試験所 <6171> [東証S]は、土木建設にかかわるさまざまな試験・調査・分析を手掛けるが、社会インフラ構造物の点検にも注力。下水構造物調査では、コンクリート構造物の腐食・劣化度を把握し、補修設計・施工に必要なデータを提供。また、物理探査技術である地中レーダー探査などを用いて、路面を掘削することなく路面下の空洞発生の有無を探査・解析し、道路陥没対策に活用する調査も手掛けている。同社が13日に発表した25年12月期の連結営業利益は、前期比17.9%増の6億8400万円を計画し、2期連続で過去最高益を更新する見通しだ。 上下水道を中心とした水に関する建設コンサルを手掛ける日水コン <261A> [東証S]は、切り返し急で新値街道に復帰し2000円台での活躍が期待される。同社は昨年10月、スタンダード市場に新規上場したニューフェース。上下水道などのライフラインや、河川・砂防などの防災関連の「社会インフラ」の整備で、主に官公庁などの公的機関から発注を受け、調査・設計などに関わる技術的なコンサルを行っている。14日に発表した25年12月期の連結営業利益は、前期比5.7%増の23億円を予想しており、こちらも連続で過去最高益を更新する計画だ。国土強靱化に関連した災害対策業務などにも取り組んでおり、事業環境が良好な点も見逃せない。 ●栗田工、子会社が劣化予測サービス 栗田工業 <6370> [東証P]は総合水処理大手で超純水供給事業が好調だが、AIを活用した水道管などの劣化予測ソフトウエアサービスを展開する「Fracta」を子会社に擁し、この分野でも頭角を現している。Fractaの診断技術はあらゆる管種に対応しており、国内においては約60の診断実績がある(2024年7月現在)。また、今年に入っても国交省などによる社会資本のメンテナンスに関わる優れた取り組みや技術開発を表彰する「第8回インフラメンテナンス大賞」において、内閣総理大臣賞を受賞するなど、技術力で高い評価を受けている。栗田工の25年3月期の連結営業利益は、前期比20.5%増の497億円を計画し連続で過去最高益を更新する見通し。株価は下値を探る展開が続くが、5000円割れ接近では押し目買いニーズも。 ●ブルーイノベ、NJSは活躍の舞台広がる ドローン・ロボットソリューションを展開するブルーイノベーション <5597> [東証G]は12日、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の協力要請を受け、5日に八潮市の道路陥没事故現場において、屋内点検用ドローンを活用した下水管内調査を実施したことを発表。同調査では、GPSが届かない環境でも安定して飛行可能なドローンを活用し、内部映像とともにリアルタイムに表示される高精度3Dマップにより、調査精度の向上に貢献したという。なお、同社は昨年12月、環境・建設コンサルのいであ <9768> [東証S]と戦略的業務提携に関する覚書を締結している。両社は提携を通じて、ドローンやロボティクス技術を活用した新たなソリューションの開発を進め、公共インフラ維持管理の効率化や災害時対応力の向上を目指すとしており、活躍余地が大きく広がることになりそうだ。 また、上下水道のコンサルを展開するNJS <2325> [東証P]にも投資家の視線が向かい株価が急上昇。今月10日には、4535円まで伸長し最高値を更新。八潮市の事故現場では、同社のドローンが下水道管内の様子を撮影し、その鮮明さが話題を集めた。さすがに上値が重い展開が続くが、グループ会社にドローンなどの最新デジタル技術を活用し、点検から診断までワンストップで実施する「FINDi」を擁しており、インフラ点検の重要性が一段と高まるなか、継続して目を配っておきたい。 ●応用地質は路面下空洞探査サービス 地質調査大手の応用地質 <9755> [東証P]は最先端の技術などを駆使し、さまざまな防災・減災ソリューションを提供。国土の強靱化が叫ばれるなか活躍領域を広げており、同社に向けられる投資家の視線も熱い。同社の路面下空洞探査サービスは、AIを活用し道路下の空洞を高精度かつ短時間にキャッチ。地中レーダー搭載の路面下空洞探査車により、道路の下に潜む空洞を非破壊で検知し、陥没を未然に防ぐサービスを提供している。25年12月期の連結営業利益は、前期比2.7%増の45億円を予想。社会インフラの老朽化や自然災害の激甚化・頻発化に対応する国土強靱化対策などにより公共投資は底堅く推移し、良好な市場環境が継続するとみている。株価は上値追い一服も高値圏で推移しており、3000円近辺の攻防に注視。 ●月島HDは水インフラの更新需要好調 月島ホールディングス <6332> [東証P]は、上下水道の汚泥処理など水環境事業と化学プラントが主力。陥没事故の影響が長期化していることもあり、関連銘柄の一角としてみる向きもあるようだ。業績も好調で、7日には25年3月期の連結業績予想について、売上高を1300億円から1400億円(前期比12.7%増)へ、営業利益を70億円から77億円(同13.8%増)へ上方修正した。水インフラの更新需要が好調で、豊富な受注残が順調に進捗していることが業績を押し上げる。 株探ニュース