鎌田重俊氏【3Q決算発表本格化、ここからの投資戦略は?】 <相場観特集>

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コラム

―AI関連には悲観論も台頭、決算手掛かりに日経平均4万円台定着なるか―

 日経平均株価が4万円を手前に足踏み状態を余儀なくされている。27日の東京市場では中国のスタートアップ企業による最新AIモデル「DeepSeek」が、米テック企業に脅威となるとの見方が台頭。半導体関連株への売り圧力が高まり、投資家心理を下向かせた。28~29日に予定される米連邦公開市場委員会(FOMC)に関しては、政策金利据え置きがコンセンサスとなっており、この先は米テック株の動向とともに、企業の決算発表への関心が一段と高まるとみられている。投資戦略を組み立てるためのポイントや今後の相場展望について、立花証券の鎌田重俊氏に話を聞いた。

●「事業法人に買い余力、データセンター関連の選好姿勢は継続へ」

鎌田重俊氏(立花証券 企業調査部 参与)

 米国市場では先週、S&P総合500種株価指数が過去最高値を更新した。ダウ工業株30種平均やナスダック総合株価指数についても史上最高値を試す動きとなっている。日本株については米国株にツレ高してもおかしくはない状況にあるが、海外投資家の買いが強まってこない。トランプ米大統領はAIインフラに関する巨額の出資計画「スターゲート・プロジェクト」を打ち出した。だが日本のAI関連企業は、マグニフィセント7をはじめとする米テック企業とは異なり、AI市場のメインストリームに位置しているわけではない。その結果として、「ジャパン・パッシング」に至っている。

 3月期企業による第3四半期累計(4-12月)の決算が相次いで発表されることとなるが、先行して発表したニデック <6594> [東証P]や安川電機 <6506> [東証P]の決算内容を見ると、中国での景気減速の影響が色濃く出ている。今期の業績は、上場企業全体では為替要因で利益の上振れが見込まれるものの、来期の伸びについては楽観視できない。中国景気の底入れが確認できるまでは、製造業に対する物色意欲が高まりにくくなる可能性がある。内需系のセクターでは、人件費や原材料費などコスト負担が増すなかで、値上げしても売り上げを落とすことのない企業とそうでない企業との「二極化」が一段と強まることとなるだろう。インバウンド関連も成長余地が見込める銘柄への選別物色の流れが続きそうだ。

 半面、金融セクターは、金利上昇に伴って、利益創出力が一層強まると期待できる。加えて、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]が参画するスターゲート・プロジェクトによって、世界全体でデータセンター向けの部品需要が拡大するとみられている。送配電関連企業を含め、投資家から引き続き注目を集めることとなるだろう。

 上場企業による株主還元意欲が強まっている点も留意すべきだ。2024年の事業法人による日本株取得に向けた設定額は、TOB(株式公開買い付け)などを含めて17兆円を超える規模となった。しかし実際の取得額は8兆円弱にとどまっている。事業法人は10兆円近くの買い余力を持った状況にあり、需給面で日本株を下支えする大きな力となるだろう。業績の伸びよりもEPS(1株利益)の伸びのほうが強くなると想定されるなか、2月半ばまでの決算発表シーズンにおいても、株主還元強化の体力を持つ企業への関心度合いが一段と高まるに違いない。この先1ヵ月間の日経平均は3万8000円をレンジの下限として、海外投資家による日本株への選好姿勢が強まった場合は、4万2000円程度まで上昇する可能性があると考えている。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(かまだ・しげとし)
1988年早大商卒。同年に第百生命(現マニュライフ生命保険)に入社。ファンドマネジャーなどを務め、2000年より立花証券に移籍し、アナリストとして電子部品業界や電機業界を担当。情報企画部長、企業調査部長を歴任し、24年より企業調査部参与。


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