明日の株式相場に向けて=「サンリオ復活」と「任天堂界隈」に思惑
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きょう(3日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比735円高の3万9248円と大幅続伸。マーケット関係者も今朝の取引開始前の時点では、日経平均の急騰劇を予測した向きはほとんどいなかったのではないか。前日の米国株市場でナスダック総合株価指数が満を持して史上最高値を更新したことは強力な追い風には違いないが、NYダウの方は上昇一服となり、為替も1ドル=149円台まで円高が進んでいたことを考慮すれば、引き続き神経質な地合いが想定された。しかし実際は見ての通り、一時900円高を演じる大活劇相場で、売買代金も久しぶりに5兆円台に乗せた。 これだけ急激な上げ潮が発生したのは日経平均先物のショートカバーに火が付いたこともあるが、個別では半導体製造装置関連株への買い戻しが一気に顕在化したことが背景にある。この理由としてバイデン米政権はAI用半導体やハイスペックの半導体製造装置の輸出規制(エンティティリスト)を発表、140社の中国系企業を追加した一方で、日本やオランダは外れたことを好感したという解釈もあった。しかし、考えてみれば今回は日本やオランダだけではなく、約30カ国が対象外である。また、関税強化などトランプ次期政権の政策が俎上に載っている時間軸において、今バイデン政権が駆け込みで打ち出す政策がどれほどの意味があるのかという疑問もある。半導体株へのショートが想定以上に積まれていたという株式需給面の現実が浮き彫りになったことは確かだが、少なくとも半導体セクターへ実需の買いを誘導するインパクトには乏しい。 きょうは先物主導の全面高商状で逆に個別株の方向性がつかみにくい部分もあったが、テーマ買いの動きとしては知的財産絡み(キャラクタービジネス周辺)の銘柄に照準が合っている。特に今はソニーグループ<6758.T>のKADOKAWA<9468.T>買収の動きが示唆するように、アニメキャラクターを人工知能(AI)との融合でストーリーのシナリオ作成段階から縦横無尽に動かすことが可能で、権利関係さえしっかりしておけば人的コストがほとんどかからない時代が訪れようとしている。株式市場におけるトレードもしかりだが、既に“AIが人類の知能の総和を超える”というシンギュラリティが、さまざまな分野で現実化しているようにも見える。 以前にも触れたが本命格はサンリオ<8136.T>や任天堂<7974.T>で、両銘柄がツートップとして存在感を現してきた。サンリオは前週27日に大手金融機関及び同社社長の大量売り出し発表を受け700円を超える急落をみせたのだが、わずか4営業日で全値戻しの上を行き、上場来高値を更新した。この動きには驚くよりないが、大口の買い手がいたということ。もとより増資ではないため既存株主が保有する株式価値の劣化も生じない。 そして、任天堂もポケモンやマリオで世界に名を馳せるなど、知的財産の塊のような企業で、改めてスポットライトが当たっている。任天堂の場合はサウジ系ファンドの持続的な売りが観測されていたが、直近関東財務局に提出された変更報告書で同ファンドの保有が5%強まで低下したことが判明、ここで保有株売却はいったん打ち止めという観測が広がるなか、株価の戻り足に弾みがついた。 任天堂については「ニンテンドースイッチの後継機が来年1月にも発表され、3月には販売開始という観測も一部で浮上」(ネット証券アナリスト)していることもあって、足もとで買いの勢いが強まっている。気が付けばきょうで7連騰、7月につけた上場来高値9170円クリアも射程圏に入ってきた。こうなると、スイッチ絡みで自然と周辺銘柄にも視線が向く。電子部品やLSI関連としてホシデン<6804.T>、メガチップス<6875.T>などの動兆が著しい。更に、エレコム<6750.T>あたりに動きが出る可能性がある。 あすのスケジュールでは、12月の日銀当座預金増減要因見込みが朝方取引開始前に開示される。また、この日はIPOが1社予定されており、TMH<280A.T>が東証グロース市場と福証Qボードに新規上場する。海外では11月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)、11月のADP全米雇用リポート、10月の米製造業新規受注、11月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数、米地区連銀経済報告(ベージュブック)などにマーケットの関心が高い。このほか、パウエルFRB議長が米メディア主催の討議に参加予定で、そこでの発言内容が注目される。(銀) 出所:MINKABU PRESS