明日の株式相場に向けて=米財務長官人事でAIアルゴが急速始動
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週明け25日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比496円高の3万8780円と大幅続伸。前週末は欧州株市場が全面高商状となったほか、米国株市場でもNYダウが400ドルを超える上昇で史上最高値を更新しており、この流れを東京市場も引き継ぐ格好となった。ただ、朝方取引開始前は、日経平均は上昇してもおそらく3万8000円台半ばで戻り売りに押され、上げ幅は限定的なものにとどまるであろうという見方が支配的であった。これは早朝6時時点の日経平均先物にも反映されていた。 しかし、寄り付きから大方の思惑を良い意味で裏切り、日経平均は400円近い上昇でスタートし、その後も漸次上値指向を強め、取引開始後約1時間弱が経過した午前10時前には3万9000円の大台ラインをクリアした。注目すべきは、この日経平均の上昇パフォーマンスの裏側で、早朝から急速な円高が進んでいたことである。ドル売り・円買いが加速するのと同じ時間軸で、日本株を買い進む動きが強まるケースは比較的稀なことである。 この背景にはトランプ米次期政権下での財務長官人事にかかわる動きが関係していた。トランプ次期大統領は財務長官にヘッジファンド業界の大物として名を馳せたスコット・ベッセント氏を指名したことが伝えられている。ジョージ・ソロス氏のマネージャーを務めたことでも知られる人物だ。市場では「ベッセント氏が財務長官になることで、米株市場の先高期待が高まったほか、トランプ氏同様にドル安肯定論者であることが為替市場での目先的なドル売りに大きなバイアスをかける格好となった」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。円高であっても、米株市場が最高値圏を舞い上がるのであればリスク許容度の高まった海外マネーが出遅れ顕著な日本株に買いを入れる、という“いいとこ取り”の論理がきょうの「円高・株高」というセオリー破りの動きに反映されたようだ。 ただ、きょうの値動きは例によって短期的なAIアルゴリズムトレードの影響による部分が大きそうだ。波高が瞬間的に高まったが、これは潮の流れとは別モノでありトレンドとして米株高や円高をサポートするものではないという声が市場関係者からも聞かれた。皮肉にも後場は円安方向へと巻き戻しが入る一方で、全体株価の方は伸び悩むという「円安・株安」のアンワインドが生じた。アノマリー的に年末株高への期待は大きいが、きょうがその号砲となるかといえばそう単純な話でもなさそうだ。日経平均が500円近く上昇するなか、値下がり銘柄数が値上がり数を上回ったことも投資家の体感温度を反映した。 個別株では半導体関連の上値が依然として重い。データセンター建設ラッシュで先端半導体への爆発的な需要が発生しているのは事実だが、米国でエヌビディア<NVDA>が一極集中的に買われている現状をみても、半導体株全般への波及効果は思った以上に限定的であるという認識が定着し、物色の矛先を鈍らせている。データセンター関連では今は半導体関連よりも電線株及びその周辺が旬といえ、先駆したフジクラ<5803.T>が上昇一服となる一方、これにキャッチアップする形で急速人気化している古河電気工業<5801.T>などが引き続きマーケットの視線を浴びている。古河電工は利益率で差をつけられているが、売上高ベースではフジクラを大きく上回っており、時価総額でみるとフジクラのわずか27%に過ぎず、PER面でも相対的に割安感がある。これと併せて古河電工が大株主に入っている電気設備・空調工事会社の富士古河E&C<1775.T>もマークしておきたい。 このほかデータセンター関連の空調設備工事会社で朝日工業社<1975.T>の上げ足の強さが光っている。25年3月期業績予想は大幅上方修正し営業利益段階で前期比31%増の60億円を見込むが、これは91年3月期以来、実に34年ぶりの過去最高利益更新となる。PER10倍未満で配当利回りが5%を超えていることにも着目。また、住友電工系設備工事会社である住友電設<1949.T>もきょうは一時5220円まで買われ上場来高値を更新する場面があった。青空圏で依然として上値余地が意識されやすい。 あすのスケジュールでは、10月の企業向けサービス価格指数や、「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」が開示される。海外では9月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、9月のFHFA住宅価格指数、10月の米新築住宅販売件数、11月の米消費者信頼感指数のほか、FOMC議事要旨(11月6~7日開催分)にマーケットの関心が高い。このほか米5年国債の入札が予定される。(銀) 出所:MINKABU PRESS