明日の株式相場に向けて=トランプ「超タカ派閣僚人事」が話題に
投稿:
きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比654円安の3万8721円と大幅続落。前日の欧州株市場で主要国の株価下落が続いたことや、米国でもNYダウが上昇一服となったことで、買い手控えムードが広がった。外国為替市場では1ドル=155円前後まで円安が進行し、これは輸出セクター中心にポジティブ材料となるはずだったが、今回は勝手が違った。最近は円安と日経平均の連動性が希薄化していることもあって、東京市場でもリスク回避ムードを払拭することはできず、前日のアジア市場から始まった世界株安の流れに呑み込まれる格好となってしまった。気が付けば最近はあまり目にすることがなかった「トリプル安」に遭遇している。 トランプトレードに沸く米国株市場を目の当たりに、日本も前週はその宴に参加していたが、今週に入ると何か夢から覚めたような雰囲気が漂っている。トランプ次期政権は日本経済や株式市場にとってポジティブかというと、実際にそうした要素は見当たらない。「キリスト教で宗派が一緒ということが盛んに言われるが、アベノミクス否定の急先鋒だった石破首相とトランプ次期大統領が意気投合できるというのは楽観的過ぎる部分もある」(生保系エコノミスト)という指摘もある。 世界的に警戒感が高まっているのは、トランプ氏の閣僚人事で、前回のトランプ政権とは色が異なっているからだ。同じ赤でも前回は白の混ざったピンク系統であったが、今回は深紅。これは「トリプルレッド」ということ以上に、「閣僚人事が明らかになるにつれ、その顔ぶれが強烈なくらいタカ派的」(ネット証券マーケットアナリスト)という状況が驚きを持って受け止められている。上院・下院とも共和党が過半数の議席を獲得しただけでなく、閣僚人事もアメリカ・ファーストを前面に押し出すことに躊躇のない人選で、暴走トランプならぬ“暴走トラック内閣”と称する声も聞かれる。 前回の政権では、トランプ氏は閣僚人事に遠慮があった。その結果がペンス副大統領をはじめ必ずしも味方とはいえない人物を政権内部に抱え、思うようにならないもどかしさが反省点として今回の人事に反映されているという見方もある。ブレーキを踏む役割が不在で、これが暴走トラックといわれる所以(ゆえん)である。アメリカ・ファーストがどの程度のものなのか、その度が過ぎると世界はカオスに陥る。「貿易面でカギを握るのが少額貨物減税制度で、これが関税引き上げに際して抜け穴に使われたが、当時(前政権時)はそれを容認していた。今回、仮にこれが廃止または見直されるようなら、トランプ氏は本気であることを知らしめる形で緊張感が高まることは間違いない」(同)という 東京市場も当面は売り方の仕掛けが入りやすい時間帯に入りそうだ。ただ、先物を絡めて株価の方向性が合致する主力大型株は全体指数に堂々と逆行するのは難しい面もあるが、中小型株に照準を合わせ「森より木」の戦略であれば十分対応は可能といえる。企業の決算発表については、あす14日が打ち上げ花火で言えばフィナーレの連発乱れ打ち場面に相当する。全体指数は荒れるかもしれないが、個別株の観点では来週は決算プレーに翻弄されない平穏なマーケット環境が戻って来る。 ここでの物色対象はあくまで好業績をベースに絞り込むのがセオリーであり、好決算発表組の中から、強いチャートを形成し、なおかつ株価的に行き過ぎて買われていない銘柄を丹念に絞り込んでいく作業が求められる。候補としてはデータセンター関連の一角で今中間期76%営業増益達成の新日本空調<1952.T>や、プリント基板向けなどに樹脂加工主体の電子材料を提供し、今3月期営業利益を大幅上方修正し前期比2.8倍化を見込む有沢製作所<5208.T>などがある。また、独立系システムインテグレーターでAI関連の一角でもあるTDCソフト<4687.T>は今上期営業3割増益で通期見通しも増額し、前期比25%増益で3期連続のピーク利益更新を見込んでいる。 あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に開示されるほか、午後の取引時間終盤に10月の投信概況が発表される。海外では9月のユーロ圏鉱工業生産、7~9月期ユーロ圏域内総生産(GDP)改定値、10月の米卸売物価指数(PPI)、週間の米新規失業保険申請件数など。また、パウエルFRB議長が金融イベントで発言機会があるほか、NY連銀のウィリアムズ総裁の講演も予定されている。(銀) 出所:MINKABU PRESS