明日の株式相場に向けて=「トリプルレッド」で超円安のパラドックス
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週明け11日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比32円高の3万9533円と続伸。取引開始前は調整局面が予想され、場合によっては3万9000円割れもあるかと思われたが、思った以上に下値抵抗力を発揮しプラス圏で着地した。ザラ場中に為替がほぼ一方通行でドル高・円安方向に振れたことが、日経平均を支える背景となった。 ドル高の根拠としては米国での「トリプルレッド」実現に伴う財政拡張が米金利上昇をもたらすという筋書きがベースにある。日米の中央銀行は真逆の舵取りが既定路線化している。米国では12月17~18日の日程で行われるFOMCでFRBによる3会合連続の利下げが意識されるが、米国に半歩遅れの18~19日に開催する日銀の金融政策決定会合の方は、追加利上げに動く可能性が取り沙汰される。本来は円高方向に振れるのが道理だが、「トランプ大統領の返り咲きで今の株式市場はパラドックスだらけだ。文字通り相場に聞くよりない状況」(中堅証券マーケットアナリスト)という声も聞かれる。 前週1週間でNYダウは1930ドルあまり上昇、これは週間の上げ幅としては2年半ぶりの大きさという。トランプ効果の賜物だが、前週の東京市場の方はどうだったかといえば、日経平均は週間で1450円弱の上昇と米国並みに水準を切り上げた。もっともその前の週末が1000円超の急落をみせていたことで、その分だけ発射台が低かったという事情はあるが、としても東京市場が米株市場と同じ方向にバイアスがかかっていることは事実だ。欧州株市場が、トランプ氏が勝利を確実にした後に全面安に売り込まれていたのとは対照的である。前週は日経平均が大立ち回りをみせたが、騰落レシオ(25日移動平均)をみると、前週末時点で日経225ベースで96%、プライム市場全体でも97%と100%を下回る水準にある。見た目ほど過熱感がない点も株価の底堅さにつながっている。 しかし、日本も関税対象国であり、おまけに半導体の対中規制では米国の言いなりになるよりないポジションにある。かつて安倍首相はトランプ前大統領とは極めてフレンドリーな関係を築き上げていた。共通の趣味であるゴルフで意気投合したという話しが伝わるが、それよりはやはり安倍首相の天性のパーソナリティーに左右される部分が大きかったに違いない。石破首相はトランプ大統領と同じキリスト教・プロテスタント(宗派プレスビテリアン)であるということが共通項として挙げられ、これが日米の良好な関係につながるという指摘もあるが、ディールを強みとする現実主義かつアメリカ・ファーストのトランプ氏に通用するほど甘くはないと思われる。いずれにしても、石破首相はセールストークに活用するはずで、日米首脳会談後にはその結果がおおむね判明する。 防衛費拡大に関しては石破首相のフィールドであり、兵器在庫一掃バーゲンの受け皿にされるのではなく、先端品の購入などで目利きぶりを発揮する可能性は期待できるものの、あくまで経済全般で国益を追求するのが主眼で、現状は心許ない。何より国内政治が近年記憶にないほど脆弱化しているのが気がかりだ。国民民主党はあまりにバッドタイミングで玉木代表のスキャンダルが報じられた。これについては穿った見方が無きにしもあらずだが、玉木氏のボーンヘッドである公算が大きい。 そうしたなかも、水面下では自民党と立憲民主党の連携に向けた地ならしが着々と進んでいるように見える。きょうの特別国会召集で石破首相が選出され野党との協力体制を前面に押し出すことになるが、市場では「石破首相と立民の野田代表のタッグは財務省応援ブラザーズといってもよく、減税などもってのほかという流れになるのでは」(国内投資顧問系ストラテジスト)という指摘もある。自民党が重要ポストを野党に分配しているのも暗示的であり、とりわけ衆院予算委員長を要望通り立憲民主党に譲ったのは異例で、次に向けた布石と見るのが自然であろう。 あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に10月のマネーストックが開示され、午後3時過ぎに10月の工作機械受注額が発表される。国内主要企業の決算発表では1~9月期決算でINPEX<1605.T>、レゾナック・ホールディングス<4004.T>、4~9月期決算で住友金属鉱山<5713.T>、東京エレクトロン<8035.T>、ソフトバンクグループ<9984.T>などが予定されている。海外では10月の英失業率、11月の欧州経済センター(ZEW)の独景気予測調査などにマーケットの関心が集まる。(銀) 出所:MINKABU PRESS