明日の株式相場に向けて=高値引けでも燻(くす)ぶる政局の火種
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きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比298円高の3万8903円と続伸。朝方こそ軟調なスタートとなったが、その後は前日ほどではないがすぐに買い板が厚くなり、日経平均は上昇に転じた。結局、終わってみれば3万8900円台で着地。先物主導のインデックス買い特有の高値引けとなった。海外ヘッジファンド系のショートカバーが続いていることをうかがわせる。買い手は海外投資家でも実需の買いとは意味合いが違うようだ。米国株市場ではNYダウが下げ止まり、ナスダック総合株価指数の方はザラ場に7月につけた史上最高値を上回る場面があった。とりあえず、日本株買いはリスク許容度の高まりに従ったもので、日本の政局は後回しという印象である。 石破首相は自説を曲げ総裁選の約束を破棄する形で解散総選挙に踏み切った。野党の足並みが揃わず奇襲作戦が有効という判断であり、それは政治という戦いの場において大義に反するとしても戦略として否定し得ないが、そこには首相としての大きな責任を背負ったはずだ。しかし結果として、とんでもなく負けてしまった。議席数については与党(自公合算)で衆議院定数の過半数維持という勝敗ラインに言及し、自らかなり低いハードルを設定したにもかかわらず、そこにも全く届かなかった。六曜の先負が日柄の悪さを暗示していたが、杞憂とはならず「急いては事を仕損じる」の典型となった。 そして、意図せぬところとはいえ2000万円支給問題がとどめを刺す形で旧安倍派議員は6割が戻ってこれなかった。こうした一連の経緯から、小泉進次郎氏の選対委員長辞任で今回の与党大敗の幕引きとはならないとは思うのだが、永田町の常識はそうではないらしい。今回の総裁選でキングメーカーとなった岸田前首相としても、ここでの石破下ろしは自民党分裂のトリガーを引いてしまうことにもなりかねず、「今辞めてもらっては困る」ということなのかもしれない。すべてが「国民不在」の世界である。ところが、相場は難しい。石破政権の弱体化が、増税路線からのフェードアウトを示唆するものとしてプラスの思惑を生んでいるという。 石破首相と森山幹事長は辞任しない代わりに野党との連携に向け全力を注いでいるもようだが、泥縄的で先行きに光は見えない。視線の先にあるのは今回躍進した国民民主党だが、連立政権への参加は玉木代表が完全否定している。パーシャル連合、つまり「政策ごとに良いと思えるものには協力する」という形での参加には必ずしも難色を示していないとも伝わっているが、果たしてどうか。「これについては非常に微妙な意味合いで、結局自民党に巻かれてしまうパターンになりがち」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もある。 「引き潮の逆目に張れ」とは古代ローマに伝わる格言である。「一日にして成らず」の文言通り、かの大帝国は長い時の流れの中でさまざまな曲折を経て築き上げられた。その過程においては、必ずしも力ずくの戦争ということではなく、むしろ外交戦略による合従連衡などが重要な要素を占めた。そして、その勢力を伸ばす途上では「落ち目、負け癖のついている国とは、そこにいかなる材料があろうとも決して組んではいけない」という鉄のルールが掲げられていたという。目の前の利益にこだわって大局を失うことの怖さを百戦錬磨の帝国は熟知していたわけだが、国民民主党の玉木代表の目に石破政権はどう映っているのか。もし泥舟なら一緒に沈み、今回躍進した貯金を吐き出すことにならないとも限らない。 一方、自民党の側からは、減税に始まる「手取りを増やす」政策を第一義に掲げる国民民主党に秋波を送るということは、いち早く金融所得課税強化に言及した石破首相もそれを封印ではなく、抹消する必要に迫られそうだ。与党過半数割れという試練も、前言を改めることに慣れている首相にとっては難しいことではないのかもしれない。 あすは10月の権利落ち日となる。このほか午後取引時間中に10月の消費者動向調査が開示。海外では9月の豪消費者物価指数(CPI)、7~9月期ユーロ圏域内総生産(GDP)、10月の独CPI速報値のほか、米国では10月のADP全米雇用リポート、7~9月期GDP速報値、9月の仮契約住宅販売件数などが発表される。国内主要企業の決算発表ではエムスリー<2413.T>、住友化学<4005.T>、オリエンタルランド<4661.T>、日立製作所<6501.T>、アドバンテスト<6857.T>などが予定されている。米国ではメタ・プラットフォームズ<META>、マイクロソフト<MSFT>、キャタピラー<CAT>などが決算を発表する。(銀) 出所:MINKABU PRESS