【自民党新総裁決まる】「金融所得課税」の石破氏選出、下値不安は一時的か?

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 過去に類を見ない候補者数となった自民党総裁選は、石破茂元幹事長が勝利した。投票結果が伝わると、ドル円相場は1ドル=146円台から142円台まで急落。大阪取引所の夜間取引で、日経平均先物12月限は27日清算値比で一時2000円を超す下げとなった。金融所得課税を強化する方針を掲げる石破新政権の誕生に対し、マーケットが「NO」という意思表明を示したと捉えることができる。かつて同じく金融所得課税の見直し方針を掲げた岸田現首相は、株安を受けてその旗を降ろさざるを得なかった。石破氏においてもマーケットに配慮して、課税強化策の優先順位を引き下げる姿勢を示すかどうかが今後の注目点となる。

<主張撤回なら株価反転へ>

 27日の東京株式市場では、日経平均株価は前日比で903円高となり、4万円に接近した。金融緩和・財政出動の重要性を訴える高市早苗経済安全保障相が決選投票に進むと、党員票が想定以上に積みあがったこともあって、高市氏の新総裁就任後の円安・株高を見込んだ買いが入り全体相場を押し上げた。経済安保相としてのキャリアや科学技術政策を担当した経緯から、サイバーセキュリティー関連株のFFRIセキュリティ<3692.T>や核融合関連株の助川電気工業<7711.T>が大幅高となった一方、日銀の利上げに対する否定的な見解を示していたことから、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>など銀行株は逆行安となった。

 決選投票の結果は取引終了後に判明した。獲得票数の差は21票。石破氏は接戦での勝利となった。石破氏の就任による株安はある程度はマーケットに想定されていたことではある。夜間取引での先物の急落についても、高市首相誕生の思惑で上昇した分を吐き出しただけと受け止めることも可能だ。とはいえこの先、株安に歯止めが掛からなければ、自民党として資産運用立国の実現に向けてまい進していたこともあって、石破新政権に対する批判的な声が強まることが予想される。

 マーケットの視線は、金融所得課税策の「本気度」に集中することとなる。自身の主張を鞘に納めるような姿勢を石破氏がみせた場合、大きく調整した株価が反転に向かうシナリオは十分にあるだろう。更に、石破氏は年内の衆院解散に前向きな姿勢も示している。実際に衆院を解散した場合は、総選挙までの株高アノマリーが意識されることとなる。自公が議席数を大幅に落とさなければ、「政治の安定」に対する海外勢の評価が、引き続き日本株を下支えすることとなるかもしれない。

 石破氏の関連銘柄としては、すでに27日引け後のPTS(私設取引システム)で 地方創生関連株の雨風太陽<5616.T>や、石破氏の選挙区に本店を置く鳥取銀行<8383.T>が急伸するなど、思惑的な資金が向かっている。石破氏は防災省の創設を訴えており、防災関連銘柄も短期的に脚光を集める可能性もある。

<読めない米国とのトップ外交>

 石破氏が次の日本のリーダーとなるタイミングで、同盟国の米国では大統領選が繰り広げられている。トランプ氏になるのか、ハリス氏になるのか、現時点で予断を持って語るのは難しく、日米の外交面での展望に関してマーケットはまだ読み切れていない。その意味で、金融所得課税以外にも「変数」は存在する。

 三菱UFJアセットマネジメントの石金淳チーフファンドマネジャーは「金融所得課税に関する方針を除けば、石破氏は日本株には本来はニュートラル。石破カラーというのが何かと問われた時、そこまで強烈なイメージがあるわけではない」と指摘。「石破氏は岸田政権の路線を継承する姿勢を示している。金融所得課税強化の撤廃の有無とともに、新閣僚の布陣などを踏まえて政策の方向性を見極めていく形となる」と話す。

 日経平均のチャートをみると、8月5日にザラ場ベースで年初来安値3万1156円を付けた後、急ピッチな戻りをみせ、その後9月9日に二番底の3万5247円を形成。再び反騰指向を強めて9月2日の戻り高値を上抜けた。「過去のPERの水準を踏まえると、日経平均3万7000円近辺では押し目買い需要が高まることも想定される」(国内証券ストラテジスト)との声もある。石破氏の発言とテクニカル上の節目をにらみながらの神経質な展開がしばらくは続きそうだ。

出所:MINKABU PRESS

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