日本株を7月に売ったのは誰か、「犯人」が見当たらない理由<伊賀大記のクロマなマクロ展望>

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 日経平均株価は7月に入って大幅な下落に見舞われた。日本の悪材料が出たわけではなく、世界的なハイテク株の調整が原因だが、1万円以上の大幅調整となった。いったい誰が売ったのか。需給データを基に主な投資家の売買動向を分析し、金融市場を横断的に俯瞰する「クロスマーケット(クロマ)」な視点から今後を展望した。

●投信や海外勢の売り越しは小幅、1週平均で1000億円以下

 日経平均が過去最高値をつけたのは、取引時間では6月22日の7万2831円73銭、終値としては6月25日の7万2366円34銭で、週としてはともに6月第4週だ。日経平均が直近の安値をつけたのは取引時間、終値ともに7月29日の6万0448円90銭と6万1434円19銭で、週としては7月第5週に当たる。

 日本取引所のデータから、6月第4週から7月第5週までの6週間の、主な投資主体別の売買動向を、現物と先物(日経225先物ラージ・ミニ・マイクロとTOPIXラージ・ミニ、JPX日経400先物、東証グロース市場250先物)で合計した。結論としては、その間、日本株を大幅に売り越した「犯人」のような主体はいなかった。

 売り越し上位は投信の5550億円と海外勢の4350億円だったが、両主体とも1週平均で1000億円に満たない。他の主体も、銀行が3090億円、信託銀行が1140億円、個人投資家が870億円と、更に小幅な売り越しにとどまっている。

 買い越しは事業法人(自社株買い)の6130億円が目立つ程度で、売り越し主体がほとんどだったが、いずれの主体も、それほど大きな額ではない。1つの主体の売り越し額は小さくても累計すれば大きくなるという可能性もあったが、上記の主要6主体の合計は6週間トータルで8900億円程度の売り越し。1週あたり1480億円程度にすぎない。

 日経平均が1万円以上も下落したにしては非常に小幅だ。データ上、これという売り主体が見当たらないのは、どういうことなのか。

●TOPIXは小幅安にすぎない、ハイテクから資金シフトか

 考えられるのは、日経平均は急落したが、日本株全体としてはそれほど下げなかったため、投資家の売り越し額もそれほど増えなかったという可能性だ。

 日経平均は過去最高値をつけた6月第4週と、直近安値をつけた7月第5週の週末の終値を比較すると約4900円、率でみると7.2%下落した。一方、TOPIXは同期間で約40ポイント、率では1.0%上昇している。

 日経平均とTOPIXの比率であるNT倍率をみると6月25日は18倍程度だったが、7月29日には一時15倍台前半に低下した。メディアでは日経平均が取り上げられることが多いため、急落の印象が強くなったが、日本株全体でみれば様相が異なる。

 個別株でみれば、キオクシアホールディングス<285A.T>やソフトバンクグループ<9984.T>など一部の値がさハイテク株が急落し、それらの寄与度が大きい日経平均も大きく下落した一方で、リクルートホールディングス<6098.T>や川崎汽船<9107.T>など上昇した銘柄も少なくなかった。

 主要投資家は、ハイテク株を売って、バリュー株などに資金をシフトさせた可能性もある。そうであれば売り越し額が膨らまなくても不思議ではない。

●日米協調介入でも円安止まらず

 日本株の大幅な売り越し主体はいなかった。世界的なハイテク株の調整も一巡したようにみえる。AIバブル懸念は払拭されていないが、総じてみれば企業業績は悪くない。過熱感があった日経平均もスピード調整を経た。

 日本株の展望は良いようにみえるが、日本マーケット全体をみると、気になる点もある。円安と金利上昇だ。円安傾向は、異例の日米協調介入を経ても変わらなかった。

 米商品先物取引委員会(CFTC)が7日に発表した8月4日終了週のIMM通貨先物の非商業(投機)部門の円先物のポジションは、ネットで前週比11万7939枚減の4万5473枚の売り越しと急減した。11万枚の減少は過去最大級だ。協調介入で投機筋が円売り越しポジションを巻き戻した様子がうかがえる。

 しかし、それでもドル円は節目の1ドル=155円を割り込まず、再び160円方向に向かって円安が進んでいる。日米両政府の「メンツ」もあり、再び為替介入が実施される可能性はあるが、それでも円安トレンドを変えるのは容易ではないだろう。

 日本のハイテク株にとって円安はプラス材料だ。しかし、円安と円安による輸入インフレを止めるために日銀が利上げペースを速めれば話は別だ。高金利はグロース株にとってネガティブ要因になる。これまでは日銀が利上げしても実質金利は依然マイナスであり、株価には大きな影響を与えてこなかったが、これからもそうだとは限らない。

●海外勢の円債買い越し姿勢に変調か

 海外勢の円債(日本国債)売り越しも気になる点だ。海外投資家は円債を今年前半、買い越してきた。円金利上昇の「犯人」というのは誤解でむしろ金利上昇を抑えていた主体だ。それが6月に入って売り越しが目立つようになってきた。財務省の対内対外証券投資によると、非居住者(海外勢)は、年初から7月第5週までに日本の中長期債を約6兆円買い越しているが、6月第1週からの直近9週間でみると約3兆8000億円売り越している。

 米国金利や高市早苗政権の財政運営次第の面もあるが、円安阻止の日銀利上げと海外勢の円債売りが重なれば、円金利が一段と上昇する可能性は小さくない。

 26年4~6月期の企業決算発表では業績が絶好調であるにもかかわらず、ほんの少し市場予想を下回った項目があるだけで大きく売られる銘柄が目立った。市場の期待値が非常に高くなっていることを示していると言えよう。業績拡大が続けば、その高い市場の期待値ですら上回ってくると期待されるが、来期の業績見通しが見えてくる年末までは、円安や金利上昇に神経質な展開が続きそうだ。ヘッジ的な観点ではあるが金利上昇に強い銀行株や損保株に注目しておきたい。

◇伊賀大記(いが・だいき)
金融経済ジャーナリスト。株式専門誌やロイター通信での記者を経て現在フリー。金融市場やマクロ経済に関するトピックをブログ(東京クロマ通信)で配信中。

出所:MINKABU PRESS

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