海洋大国の復権へ狼煙高揚、国策マネー加勢の「造船関連」に再注目 <株探トップ特集>

投稿:

コラム

―9月4日に国交省が再生基金の供給計画初認定、35年の建造量倍増へ動き始める―

 「造船」は高市政権が進める17の戦略分野の一角を担い、株式市場で注目を集めてきた。政権与党の自民党は造船業を経済安全保障の要と位置付け、かつて世界1位だった造船大国・日本の再興を目指しており、政府は2035年に建造量を24年比約2倍となる1800万総トンに引き上げる方針を取っている。そんななか、足もとで民間企業による造船能力向上に向けた設備投資の発表が相次ぎ、復活の狼煙が上がり始めた。改めて関連銘柄を確認し、産業成長による株価見直し機運に乗り遅れないようにしておきたい。

●国交省の供給計画で設備投資に火がついた

 国土交通省による造船業再生基金の供給確保計画の認定が業界の設備投資に火をつけている。同計画は日本成長戦略の官民投資ロードマップに定められた建造量倍増の実現に向け、省力化・自動化設備の投資やドック拡張などの大規模投資を支援するものであり、国交省は9月4日に初めての認定を行ったと発表。国内造船最大手の今治造船(愛媛県今治市)らによる計画など3件を採択。更に11日には5件を追加認定した。

 これら政府による支援体制が明確になったことが各社の大規模な設備投資の呼び水となり、今月2日には三菱重工業 <7011> [東証P]傘下の三菱造船が山口県下関市での建造能力増強に約1000億円を投資すると公表。6日には大島造船所(長崎県西海市)も記者会見で香焼工場(長崎市)に設備投資を行う方針を示したと伝わっている。25年10月の高市政権発足以来、株式市場の注目を集めてきた造船業界の「再生」に向けた各社の動きが顕在化してきた。

 そんな供給確保計画の最初の採択3案件の1つが上場造船会社の名村造船所 <7014> [東証S]と同社グループの函館どつくが申請した計画だ。名村造らは10年かけて最大約1500億円を投じ、工場における新棟増設や長年稼働していなかった新造船用ドックの復元などを進める。この計画が国交省から受け取る助成額は最大で約499億円に上るという。

●最注目は造船専業の上場2社

 名村造は業績も好調に推移している。27年3月期第1四半期(4~6月)の連結決算では主力の新造船事業が業績を牽引したことにより、売上高が435億8500万円(前年同期比19.5%増)、営業利益が98億500万円(同70.3%増)と大幅な増収増益を達成。大型撒積運搬船を主商品とするプロダクトミックス体制への移行が順調に進むなか、ドック期間や進水後の艤装期間短縮などにより増産化を実現した。原価削減では資材価格や人件費高騰の影響を上回る成果を達成しており、収益力を高めている。6月末の受注残高は新造船が4776億6300万円(前年同期比13.7%増)、修繕船が103億200万円(同43.9%増)と需要は旺盛だ。

 同じく造船専業上場会社の内海造船 <7018> [東証S]にも注目したい。27年3月期第1四半期(4~6月)連結営業利益は前年同期比3.0倍の12億9500万円となり、通期計画(16億円)に対する進捗率が約81%と高水準で推移している。為替相場や資機材価格の先行き不透明を理由に通期業績予想を据え置いているが、同社は期初の見通しを保守的に見積もる傾向があり、業績上振れへの期待感は大きい。同社も9月11日に国交省から供給確保計画の認定を受けたと開示。約111億円を投じ、工作機械の導入や設計AI支援システムなどの設備投資に取り組んでいく。

●次世代燃料対応が進む舶用エンジン

 国策の重点分野として、次代の花形産業の一角へと成長することが期待される造船産業。そのためには、部品メーカーなどの周辺産業の活躍も必要不可欠であることは言うまでもない。

 三井E&S <7003> [東証P]はエンジンを製造・販売する舶用推進システム事業を主力としており、造船銘柄の一角を担う。舶用エンジンのシェアは生産馬力ベースで国内首位。27年3月期第1四半期(4~6月)の同事業は資材価格の高騰を背景に増収減益だったものの、受注高は前年同期比62.4%増の671億4100万円と引き合いが強く、今後の展望は明るそうだ。全社業績では船舶ブロック製造工事が順調に進んだ周辺サービス事業などが寄与し、2ケタの増収増益と好スタートを切った。

 8月20日にはアンモニア焚き大型舶用エンジン及びアンモニア燃料供給装置の商品化を完了し、国内で唯一両装置を製造する企業になったと発表。燃焼時に二酸化炭素を排出しない次世代燃料として期待されているアンモニアの燃料としての実用化に向けた供給体制を整えた。株価はRCI(9日線)がマイナス80%を割る売られ過ぎの水準にあり、自律反発への期待が高まる。

 船舶用エンジン専業のジャパンエンジンコーポレーション <6016> [東証S]は27年3月期第1四半期(4~6月)の単独決算が売り上げ計上時期の変動などにより減収となったものの、アフターサービス事業及びライセンス事業の成長によって前年同期比9.9%増と、2ケタに迫る営業増益を確保した。同期間における受注高は舶用内燃機関、修理・部品などともに大幅に増加。受注残高は舶用内燃機関で287億4700万円(前年同期比40.2%増)、修理・部品などで88億2000万円(同24.9%増)まで膨らんでいる。

 9月8日には世界初となる大型商船向け水素燃料エンジン「6UEC35LSGH」が完成したと発表。新エンジンは従来の重油燃料エンジンと比べ、温室効果ガスの排出量を95%以上削減できるという。高い技術力を背景に、造船業界における将来の成長ドライバー育成と新たな市場創造の取り組みを着実に進めている。

 また、船舶用エンジン関連が売り上げ・利益の大半を占めるダイハツインフィニアース <6023> [東証S]も成長期待が高い。27年3月期第1四半期(4~6月)は機関本体・メンテナンスともに好調が続き、連結業績は売上高が232億9800万円(前年同期比11.0%増)、営業利益が22億8900万円(同53.9%増)まで拡大。主力の舶用機関関連の受注残高は1057億8300万円(同30.9%増)と好況が続いている。

 7月31日の決算発表と同時に通期業績予想を上方修正し、売上高を1040億円から1070億円(前期比21.5%増)、営業利益を80億円から100億円(同31.2%増)、最終利益を57億円から71億円(同19.9%増)に引き上げた。同社は業績予想で保守的な見通しを立てる傾向が強く、期中に複数回の上方修正を行うことが恒例となっている。今期も一層の利益拡大への期待感が膨らむ。

●東京市場には世界トップ級の部品・材料メーカーも

 古野電気 <6814> [東証P]は船舶用電子機器の製造・販売を中心に事業を展開する。商船用レーダーが世界トップ級であることで知られている。10月9日には舶用事業の販売堅調を理由に27年2月期の連結業績予想を上方修正。売上高を1485億円から1580億円(前期比12.4%増)、営業利益を170億円から210億円(同29.3%増)に引き上げた。5月13日にはアイコム <6820> [東証P]と無線機・レーダー分野における協業開始の覚書を締結。それぞれの強みを生かした製品開発を視野に入れており、競争力の強化に余念がない。株価は9月14日安値6920円で底を打ち、上昇基調に。好業績を背景に一段高となる展開を望めそうだ。

 寺崎電気産業 <6637> [東証S]は配電制御システムや機関監視制御システムなどを製造・販売しており、船舶用が売り上げの約半分を占める。27年3月期第1四半期(4~6月)は船舶用システム製品の売上高が前年同期比33.0%増の84億5000万円に伸長したことなどから大幅な増収増益を達成。システム製品(産業用も含む)の受注高は同40.9%増の197億3300万円と好調ながら、PBRは1倍未満で割安感がある。

 そのほかにも、フィジカルAI関連銘柄として市場の注目を集めるナブテスコ <6268> [東証P]は、舶用エンジン遠隔制御システムでも世界トップクラスのシェアを有している。塗料大手の中国塗料 <4617> [東証P]は船舶用塗料で国内トップ。世界首位の座を目指し、生産能力の増強や高付加価値塗料に適した最新設備の導入などを進める。更に大型船舶用エンジンの軸受で世界トップの大同メタル工業 <7245> [東証P]や自動操舵などを担うオートパイロットで世界屈指のシェアを誇る東京計器 <7721> [東証P]などもチェックしておきたい。

株探ニュース

オンラインで簡単。
まずは無料で口座開設

松井証券ならオンラインで申し込みが完結します。
署名・捺印・書類の郵送は不要です。