社会実装本番へ、「次世代バッテリー」で成長期待MAXの6銘柄選抜<株探トップ特集> <株探トップ特集>

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コラム

―パナソニック子会社が高温対応の電池開発、特殊環境向けで需要獲得へ―

 元来、株式市場では企業の将来的な変化に対する期待を先取りする形で投資マネーが動く。次世代の成長テーマと銘打たれた領域はそうした資金の“大好物”に相違なく、その中でも電気自動車(EV)分野は自動運転の成長ストーリーとも合流して、変身株の宝庫として注目度が高い。とりわけ、EVの原動力ともなる「次世代バッテリー」に業界の視線が集中している。

 次世代バッテリーとして候補に挙がるのは、「全固体リチウムイオン電池」「ナトリウムイオン電池」「シリコン負極電池」「リチウム空気電池」「リチウム硫黄電池」などいくつかあるが、このうち大本命と目されているのが全固体リチウムイオン電池(以下は通称で全固体電池)であることは論をまたない。

 「夢の電池」と呼ばれてきた 全固体電池を巡る競争が、新たな段階に入りつつある。これまでは航続距離の延長や急速充電、安全性向上といった将来のEVを変える性能に関心が集まりやすかった。つまりEVとセットで語られるのが当たり前だったといえる。しかし、近年はEVに限らず「どこで使うか」「どう量産するか」という商用化を意識した動きが相次いでいる。市場の裾野が大きく広がっており、関連銘柄は要チェックだ。

●夢と希望が詰まった全固体電池

 全固体電池は、業界関係者にとって夢と希望が大いに詰まった技術であることは間違いない。大本命であるEVへの本格搭載には今しばらく時間を要するとの見方も多いのが現実だが、視野を広げてみれば、産業機器などでは全固体電池ならではの特性を生かした市場開拓が始まっている。

 その流れを象徴する足もとでの事例が、パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]の完全子会社であるパナソニック エナジーの取り組みだ。同社は「BATTERY JAPAN」(9月9~11日開催)において、最大150度の高温環境で使用できる全固体電池を開発したことを明らかにし、複数のメディアでも取り上げられ話題となった。従来のコイン形に加えて角形も開発し、10~12月からサンプル出荷する予定で、出荷後1~2年程度での量産化を目指しているもようである。

 注目したいのは、当面の狙いがEVではないことだ。工場設備や産業用ロボット、自動車に搭載されるセンサーなど、高温環境で使われる小型電池から市場を開拓する狙いという。また、150度まで対応できれば、医療器具の滅菌工程や医療ロボットなどメディカル分野における新たな用途も視野に入ることが想定され、その需要の裾野は多岐にわたる。

 投資家にすれば、これまで全固体電池と聞くとEV領域の材料で「その安全性を担保しつつ、航続距離を伸ばす技術」というイメージが定着している面があったと思われる。しかし、実際にビジネスとしての社会実装を考える際には「従来の電池では使いにくかった場所で使用可能となる」という方向も重要で、今後はその切り口で多く取り上げられることが増えそうだ。電池交換のために設備を停止する必要がある産業機械などでは、電池価格そのものよりメンテナンスを含めた総コストが重視される。EV向けの巨大市場を一気に狙うのではなく、こうした現実的な社会実装が進み始めたことは、全固体電池市場を見るうえで重要な変化と読み解くことができる。

●「用途・量産」フェーズで成長加速局面へ

 グローバル化した現代において目を配っておくべきは国内動向だけではない。台湾の電池メーカーであるプロロジウム テクノロジーは9月2日、高エネルギー密度の全固体電池について量産段階に入ったことを発表した。EV向けでは中国勢の動きも当然見逃せないが、中国のBYDは、2027年にも全固体電池技術を搭載した車両を公開する方針を明らかにしている。現段階で想定されているのは技術検証の意味合いが強く、直ちに一般向け車両を大量販売するわけではない点に留意が必要だが、ロードマップでは27年前後から実証的な搭載を始め、30年以降に本格的な大規模量産へと移行する見通しだ。

 生成AIの成長は多くの人々の想像を超え、その周辺銘柄にはわずか数年で驚くべき株価変貌を見せるものが相次いだ。一方、全固体電池をはじめとする次世代バッテリーはハード分野の技術で中長期にわたるお馴染みのテーマだが、理想買いの域からなかなか抜けられなかった。しかし、当初の「実現に向けたロードマップ」から既に「用途・量産」へと変わりつつあることで、ここからの成長スピードは加速する可能性がある。この時間的な肌感覚を投資家としては重視しておく必要がある。研究開発、製造装置、材料、モジュール化、品質評価など、量産に向けて必要となる産業基盤は広いがゆえに、実装段階への移行が進むほど、関連する企業群の株価感応度も漸次強まっていくことが予想される。

●大手自動車メーカーに動き相次ぐ

 トヨタ自動車 <7203> [東証P]とパナHDの合弁会社で車載用バッテリーを手掛けるプライムプラネットエナジー&ソリューションズは、全固体電池に関する独自の技術開発を行っている。トヨタが目指す27~28年の全固体電池の実用化・EVへの搭載において、量産化や製造を担う重要なパートナーとなる。

 日産自動車 <7201> [東証P]は、28年度までに自社開発の全固体電池を搭載したEVの市場投入を目指しており、既に車載を想定した試作セルの充放電性能を確認する段階に達し、現在はモジュール設計・試作に向けた検証を行っている。ホンダ <7267> [東証P]は独フォルクスワーゲンが出資する米クアンタムスケープと全固体電池の共同研究契約を結んだ。また、スズキ <7269> [東証P]は産業用全固体電池で実績を有するカナデビア <7004> [東証P]から全固体電池事業を買収したことでマーケットの注目を呼んだ。

●電池メーカーや素材メーカーも開発に本腰

 電池セル製造においては、自動車向けに先行して超小型・産業機器向けでの量産化・出荷が進んでいる。そのなか、マクセル <6810> [東証P]は小型セルのモジュール化と中型セルの開発に注力しつつ、FA、各種センサー用途の拡販を進める。24年5月には全固体電池の作動上限温度を150度に引き上げる技術開発に成功したことを公表。全固体電池の特長を生かした用途開拓を推進し、産業機器・小型デバイス向けで採用が進んでいる。

 TDK <6762> [東証P]は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の技術を応用したSMD(表面実装部品)タイプ全固体電池「CeraCharge」を開発しており、スマートウォッチ、ワイヤレスイヤホン、IoTスマートセンサーなどの超小型デバイス向けでの利用が想定されている。村田製作所 <6981> [東証P]は、25年10月にクアンタムスケープと全固体電池向けセラミックセパレーターの量産化を目的とした共同開発契約を締結している。

 固体電解質・中核材料分野では、出光興産 <5019> [東証P]が全固体電池の材料となる固体電解質を製造する大型パイロット装置の建設を進めており、完工予定は27年中の見通し。トヨタとの協業により27~28年に全固体電池を搭載したEVの実用化を目指す。三井金属 <5706> [東証P]は、独自に開発したアルジロダイト型硫化物固体電解質「A-SOLiD」が27~28年の実用化を目指す主要顧客の全固体電池に提供することが決まったことを5月に開示している。

 今回の特集では、このほか固体電解質・中核材料、製造装置・プロセス技術、周辺材料などで有望視される中小型株を6銘柄紹介する。

●次世代電池分野で活躍必至の要注目株は

◆オハラ <5218> [東証S]~他社に先駆け1995年に酸化物系の無機固体電解質であるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス「LICGC」を開発。酸化物系固体電解質のなかでも高いイオン伝導度をもち、全固体電池及びリチウム空気電池の固体電解質やリチウム資源回収・精製用選択透過膜として利用されている。

◆ニッカトー <5367> [東証S]~同社が製造する強度・高靱性・耐摩耗性に優れたジルコニア(二酸化ジルコニウム)製のセラミック球であるジルコニアボールは、粉砕・分散効率に優れる。電池材料の超微粉砕に使われるため、材料を製造するプロセスで需要が大きい。

◆平田機工 <6258> [東証P]~自動車分野や半導体分野など、生産設備・工場の製造ライン専門メーカーで、EV関連、エンジン、トランスミッション、部品関連など、さまざまな生産設備を自社で一括して対応。バッテリーのセル工程の一部である充放電工程における搬送設備なども手掛ける。

◆エスペック <6859> [東証P]~製品の耐久性や安全性を検証する「環境試験器」で高いシェアを有する。試験装置をメーカーに売るだけでなく、自社の巨大な施設で試験を代行する「受託試験ビジネス」の成長に期待。なお、同社の「あいちバッテリー安全認証センター」は25年11月、国連規則の安全性試験7項目についてISO/IEC17025に基づく試験所認定を取得している。

◆artience <4634> [東証P]~印刷インキで国内トップシェアであるが、既存事業を成長事業、収益基盤事業、構造改革・戦略再構築事業に分類し、製品・市場ポートフォリオ転換も含めた変革を推進している。そのなかで、戦略的重点事業群の創出としてモビリティ・バッテリー関連事業に集中。「全固体電池向け関連材料」の開発及び顧客における評価促進を積極的に図っていく。

◆NGK <5333> [東証P]~総合セラミックスメーカーで超薄型・小型リチウムイオン電池「EnerCera」を手掛ける。独自の結晶配向セラミックス正極板を使用した半固体電池で、従来のリチウムイオン電池では併存が難しかった高容量、高出力、高耐熱、長寿命などの優位性を確保。全固体ではないものの、大電流タイプや高温プロセスタイプ、高速充電タイプがあり、冷凍輸送や屋外のIoTデバイス用電源として注目される。

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