明日の株式相場に向けて=AI関連に絡みつく戻り売りの呪縛
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きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比2134円安の6万5326円と大幅続落。一時下げ幅は2300円超に広がる場面もあり、相変わらずのジェットコースター相場の様相に投資家も翻弄されやすい日々が続く。日経平均は前週の初め、飛び石連休の狭間である10日に1363円高と値を飛ばし、ここを基点に5連騰し計3600円あまり水準を切り上げた。6万9000円台まで上値を伸ばし、この時は7万円大台乗せも時間の問題かという雰囲気が漂った。売り方の側から見れば否応なく踏み上げ相場に誘導された格好だったのだが、驚いたことに直近2営業日で3900円弱の下落に見舞われ、5日間で積み上げた上昇分を、利子付きで全部返上したような形となった。AI・半導体関連株はいわゆる“相場の華”ではあるが、以前の買わざるリスクが囃(はや)された時と今は明らかに異なる。最近は上に行くにも下に行くにもAIトレードの御託宣で向きを変える短期筋専用のモメンタム相場と化している。すなわちタイミングを間違えれば火傷を負う。こういう時は基本的に「休むも相場」が最も期待値の高い選択肢ということになる。 AI・半導体関連株にとっては受難の日であった。前日は下げ幅こそ大きかったが、6日ぶりの反落であり上昇一服という形容が可能であった。だが、きょうの深押しは投資マインドに結構なダメージを与えたはずだ。イラン情勢を相場の方向性を左右するカタリストに位置付けるメディアが多いが、これまでの経緯を見る限り後講釈にあてがうことはできても、実際のところあまり連動性はないのではという印象がある。中東に関するトランプ発言自体にそれほど意味がないのは、もはや株式市場における暗黙のコンセンサスである。敢えて言えば原油先物価格の動向が債券市場とリンクしやすく、トランプ発言はその角度から相場に短期的な変数として作用しているに過ぎない。米国株式市場のフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)、そして韓国KOSPIと台湾加権指数、日米欧の金利動向、これらが一塊となって投資家のセンチメントを揺らしている。 きょうは売買代金で不動のトップを続けるキオクシアホールディングス<285A.T>の下げも厳しかった。日経平均と同様に5日間で積み上げた株価上昇分を2日間で御破算にしてしまったことで、AI関連の主力銘柄は戻り売りを浴びる前に逃げなくてはいけないという観念を投資家に植え付けた可能性がある。テクニカル的にも75日移動平均線に株価が届かない段階で下に叩かれたことで、トレンド転換に向けた期待は急速に萎む形となった。 また、ソフトバンクグループ<9984.T>が個人投資家を対象に1兆円規模の社債発行を準備していると報じられたことも一つのメルクマールとなった。今週初めまでAI・半導体関連は戻りトレンドにあったが、AIインフラへの過剰投資懸念はひとまず棚に上げただけで、依然としてくすぶっている状況にある。そうしたなか、ソフトバンクGの英断は残念ながら今のタイミングでは株価にネガティブに作用しやすかった。手元資金の流動性を一気に高めAI投資に振り向けることに主眼を置くが、1兆円の社債発行は国内企業で過去最大規模というフレーズと合わせ4%台の高利率になるとの観測が示されると、将来的な巨額の利払い負担がのしかかるという思惑が一人歩きを始めた。一方、既に米国ではビッグテックによる社債発行のオンパレードとなっているが、これが国債よりも魅力的な利率となれば、資金はそちらに誘引されるのは自明の理。世界的な長期金利上昇はこうしたAI投資に向けた資金調達の動きも遠因しており、ここでも悪循環の歯車が回っている。 AIバブル論議は早くからなされていたが、生成AIの社会実装に伴い政治経済を中心に世の中の流れが大きく変わったことは確かであり、既にAI革命は「まがい物」ではないという確固たる証左が得られている。しかし、AIの民主化が進むプロセスで企業サイドが過剰なAI投資を行い、投下した資金の回収が叶わなければ、自己資本を傷つけることになり結果として企業価値の毀損につながる。つまりAI革命の状況証拠は揃っていても、そこに商機を見いだせるか否かというのは、また別モノなのである。 バブルという定義をどこに置くかという問題にもよるが、今現在は投資家としては決め打ちできない時間軸にある。「信念は嘘よりも危険な真理の敵である」とは独哲学の権威ニーチェの至言であり、これは相場においても正鵠を射た言葉である。信念をもって巨額投資に突き進むのは、例えばエヌビディア<NVDA>のジェンスン・ファンCEOであり、ソフトバンクGの孫正義会長兼社長であって、それを応援するという気持ちで長期に特化した株式投資を行うというのであれば話は別だが、少なくともこれは投資家の信念ではなく、一蓮托生の精神である。信念をもって投資するというスタンスは株式投資にはそぐわない。相場は広大な海原のようなもの。一対一で対峙できる代物ではなく、投資家は流れに逆らわず、次に来る波の形をいかに早く察知するかが勝負ともいえる。波に乗るために必要なのは剛直さ(信念)ではなく柔軟性にほかならない。 あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約、7月の貿易統計、20年物国債の入札が行われる。後場取引時間中には7月の首都圏新築マンション販売や、7月の主要コンビニエンスストア売上高などが開示。海外では、8月の中国最優遇貸出金利が発表され、スウェーデン中銀も政策金利を決定する。米国では週間の新規失業保険申請件数に関心が高く、8月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数や7月の米景気先行指標総合指数なども発表される。なお、ウォルマート<WMT>の5~7月期決算発表にも関心が高い。(銀) 出所:MINKABU PRESS