S&P500 月例レポート ― 成熟を迎えた強気相場、上昇持続なるか?! (2) ―

●トランプ大統領と政府高官

 ○貿易関連

  →トランプ大統領はブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼・アルミニウムに追加関税を課すとツイートしましたが、両国と協議後に撤回しました。

  →同大統領は、フランスが新たに導入したデジタル・サービス税(売上高の3%)は米企業を不当に標的にするものだとして、フランスからの輸入品24億ドル相当に最大100%の関税を課すと発表しました(米国は2018年にフランスから520億ドル相当を輸入)。フランスは関税が発動された場合、報復措置を課すとしています。

  →英国も同様のデジタル税(英国内の売上高の2%)を検討していると発表しました。

  →中国は2020年1月1日から、全ての貿易相手国を対象に859品目の関税を引き下げ、その他8,000品目以上の輸入税を軽減すると発表しました。これは対米貿易摩擦の緩和を狙った措置と受け止められました。

 ○弾劾手続きは12月も続行

  →ホワイトハウスは下院司法委員会による弾劾公聴会にトランプ大統領は出席しないと発表し(大統領は出席を要請されていました)、同委員会は弾劾条項を起草しました。

  →下院司法委員会はトランプ大統領に対する弾劾条項2項目を可決しました(党の方針通り、民主党議員23人全員が賛成し、共和党議員17人全員が反対)。

  →下院本会議でトランプ大統領の弾劾決議案が可決されました(投票はそれぞれの党の方針通りに行われました)。技術的には、次の舞台は上院(共和53議席、民主47議席)となり、最高裁判所のロバーツ長官の進行で弾劾裁判が執り行われますが、トランプ大統領の罷免には3分の2の賛成が必要です(罷免された場合、ペンス副大統領が大統領に昇格します)。

  →しかし、民主党が支配する下院は、共和党が支配する上院に弾劾条項を送付していません。上院での裁判の進め方をめぐり共和党と交渉を行っているからです。弾劾条項が上院に送付されてもトランプ大統領は罷免されないというのが大勢の見方であり、現時点で市場はこの出来事に反応していません。

 ○米議会とホワイトハウスが米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の修正案でカナダとメキシコと合意し、下院が同案を可決(385対41)しました。同法案は上院に送られ、2020年第1四半期には成立する見込みです。

●各国中央銀行の動き

 ○FOMCが開催され、金利は全会一致で据え置きとなりました。FOMCは貿易問題や経済指標を注視するため、2020年の政策金利の現状維持を示唆しました。市場は予想通りの結果にほとんど反応しませんでした。ウォール街では、金利は安定し続け、不透明感は後退したとの見方も浮上しました。

 ○欧州中央銀行(ECB)は金融政策理事会を開催し、予想通り金利を据え置き、低金利の維持を示唆しました。

 ○主要国で2015年2月に最初にマイナス金利を導入したスウェーデンでは、リクスバンクが政策金利を-0.25%から0.00%に引き上げ、マイナス金利を終了した最初の国となりました。デンマーク、日本、スイスはマイナス金利を継続しています。イングランド銀行は政策金利の据え置きを決定し(9人中2人の委員が利下げを主張)、日銀も金利を据え置きました。

●企業業績

 ○第3四半期の決算発表を見ると、75.1%の銘柄の利益が下方修正されていた予想を上回りました。売上高に関しては、58.8%の企業が予想を上回り、四半期としては過去最高を更新する状況です(前年同期比4.0%増)。

  →第3四半期の決算発表を終えたS&P 500指数構成銘柄498銘柄のうち、374銘柄(75.1%、過去平均は66.6%)で利益が予想を上回りました。売上高に関しては、495銘柄中291銘柄(58.8%)が予想を上回りました(過去最高を更新しそうです)。

 ○第4四半期もやや弱まったとはいえ、楽観的な見方は続いています。決算期が12月以外の15銘柄が業績発表を行い、13銘柄の利益が予想を上回り、2銘柄が予想を下回る内容でした。また14銘柄中10銘柄の売上高が予想を上回りました。

  →第4四半期の利益予想は2019年9月末から4.8%、2018年末から11.3%、それぞれ引き下げられ、現時点では前期比で1.0%の増益、落ち込んだ2018年第4四半期(会計方針の変更や通常の減損処理等による)と比べると、14.7%の増益となる見通しです。また、過去最高だった2018年第3四半期を2.9%下回る水準で、2020年第2四半期に利益は過去最高を更新する予想です。

 ○2019年通年では前年比で4.3%の増益、大統領選が行われる2020年は同11.0%の増益が見込まれています。

  →株式数による影響も続いており、決算発表済みの企業のうち、株式数の減少によってEPSが前年同期比で4%以上押し上げられた銘柄(つまり、利益の総額が横ばいでも、1株当たり利益では4%以上上昇)の割合は22.8%となりました。2019年第3四半期の株式数との比較に基づき、2019年第4四半期に入る前の時点(第4四半期の自社株購入額の公表前)において14.6%の銘柄で2018年第4四半期から4%以上のEPSの押し上げが見込まれます(これは、第4四半期の自社株買いの結果発表前の時点)。

●個別銘柄

 ○インターネット検索・広告大手Googleの親会社Alphabet(GOOG/L)では、共同創業者であるLarry Page最高経営責任者(CEO)とSergey Brin社長が退任して日々の業務から離れ、GoogleのSundar Pichai氏が同社CEOを兼任することになりました。

 ○サウジアラビアの国営石油会社Saudi Aramco(2222.SR)のIPO調達額は最終的に296億ドルと、2014年にIPOを実施した中国電子商取引大手Alibabaの250億ドルを上回り過去最高を更新し、時価総額(サウジアラビア保有分を含む)は1兆7,000億ドルとなりました。

 ○消費者向けセキュリティソフト企業NortonLifeLock(NLOK、前週比2.1%高)の買い手または事業統合相手として同業のMcAfee LLC(Intel [INTC、前週比1.7%高]傘下)の名前が上がっていると報じられました。

 ○航空機大手Boeing(BA)は1月から737MAXの生産を停止すると発表しました(現在、生産ペースは月間42機で、未出荷の在庫は約400機となっています)。同社によると従業員の一時解雇やレイオフの予定はありません。米連邦航空局(FAA)が同機の運航禁止を解除すれば生産は再開する見通しでした。

  →BoeingはCEOのMuilenburg氏を解任し、同社取締役でプライベートエクイティ企業の幹部であるDavid L. Calhoun氏を後任に指名しました。

 ○物流大手FedEx(FDX)は世界的な航空輸送便の減少や国内の宅配便(電子商取引)の増加を受け、利益と売上高が予想を下回り、ガイダンスを引き下げました。

 ○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、S&P中型株400指数の構成銘柄である保険持ち株会社のW.R. Berkley(WRB)と小口トラック輸送サービスを提供するOld Dominion Freight Line(ODFL)をS&P 500指数に追加し、CBS(CBS)に買収されたメディア企業Viacom(VIAB)と地銀大手BB&T(BBT)に買収されたSunTrust Banksを同指数から除外しました(CBSは社名をViacomCBSに、ティッカーシンボルをVIACに変更し、BB&Tは社名をTruist Financialに、ティッカーシンボルをTFCに変更)。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、S&P 500指数の3つの構成銘柄とS&P中型株400指数の3つの構成銘柄も入れ替えました。S&P中型株400指数からS&P 500指数に変更されたのは、映画およびエンターテイメント企業のLive Nation Entertainment(LYV)、医療機器のSTERIS plc(STE)、電子機器のZebra Technologies(ZBRA)、S&P 500指数から除外してS&P中型株400指数に追加したのは、資産運用会社Affiliated Managers Group(AMG)、商業施設REITのMacerich(MAC)、旅行予約サイトを運営するTripAdvisor(TRIP)です。

●新規株式公開(IPO)

 ○オンラインゲーム会社でファンタジー・スポーツ賭博プロバイダーのDraftKingsは、2020年に上場特別目的会社のDiamond Eagle Acquisition(DEAC)とゲーム技術を提供するSBTechとの合併後にIPOを計画していると発表しました。

 ○サウジアラビアは国営石油会社Aramco(ARMCO)を2019年12月11日付でサウジアラビア証券取引所に上場しました。同社の株式を米国で取引することはできません。

  →AramcoのIPOの最終調達額は過去最高となる296億ドル(2014年にAlibaba(BABA)がIPOで調達した250億ドルの記録を更新しました)、時価総額(サウジアラビアが保有する株式を含む)は1兆7,000億ドルとなり、12月末まで2兆ドルの節目前後で推移しました。

 ○ビール大手のAnheuser-Busch InBev(BUD)は香港事業をスピンオフ後にBudweiser Brewing APACとして上場し、57億ドルを調達しました。

 ○フィットネス機器を手掛けるPeloton(PTON、IPO実施日2019年9月26日)

  →IPO価格29ドル(最高値37.02ドル、最安値20.46ドル)、12月末の終値28.40ドル(11月末の終値35.23ドル)

 ○歯列矯正サービスを提供するSmileDirectClub(SDC、2019年9月12日)

  →IPO価格23ドル(最高値23ドル、最安値7.70ドル)、12月末8.74ドル(同9.97ドル)

 ○ペットフードを販売するChewy(CHWY、2019年6月14日)

  →IPO価格22ドル(最高値41.34ドル、最安値21.68ドル)、12月末29.00ドル(同24.76ドル)

 ○配車サービスUber(UBER、2019年5月10日)

  →IPO価格45ドル(最高値47.08ドル、最安値25.58ドル)、12月末29.74ドル(同29.60ドル)

 ○植物由来の代替肉を生産するBeyond Meat(BYND、2019年5月2日)

  →IPO価格25ドル(最高値239.71ドル、最安値45.00)、12月末75.60ドル(同82.86ドル)

 ○ソフトウエア開発会社Zoom Video Communications(ZM、2019年4月18日)

  →IPO価格36ドル(最高値107.34ドル、最安値36ドル)、12月末68.04ドル(同74.50ドル)

 ○ソーシャルネットワークサービス会社Pinterest(PINS、2019年4月18日)

  →IPO価格19ドル(最高値36.83ドル、最安値17.39ドル)、12月末18.64ドル(同19.48ドル)

 ○配車サービスLyft(LYFT、2019年3月29日)

  →IPO価格72ドル(最高値88.60ドル、最安値37.07ドル)、12月末43.02ドル(同48.98ドル)

※「成熟を迎えた強気相場、上昇持続なるか?! (3)」へ続く

株探ニュース

出所:株式会社エムサーフ


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